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忘れられない、強烈なバス旅行

以前、当時働いていた会社の先輩と、ツアーのバス旅行に参加したことがある。

私は学校などでバス旅行には行ったことはあるが、個人で旅行会社に申し込むバス旅行はこの時が初めてで、先輩が申し込み等、手続きをしてくださった。

それはとある年のGWの日帰りで、朝早くからの出発だった。先輩は私より早い地点で乗り込み、その後私が乗り込むというルートで出発した。

朝、バスに乗り込み、先輩に「おはようございます!」と挨拶をしたら、何とも言えない顔で、全体的に暗かった。

ちなみに先輩は、自分の機嫌が悪いからといって、人に当たったり、態度や顔に出す人ではない。そのことを知ってるだけに、何があったのか気になり「どうされたんですか?」と聞いてみた。

「私達の席は〇〇番だから、そこに座ろうとしたら、先に乗り込んでいたあそこの人たちがさ、座ってんのよ。それで『そこは私ともう一人の席なんですが。』って言ったんだけど、断固違うって引き下がらなくて…。仕方がないから、『では添乗員さんに言って確認してもらいますよ!』と言って確認したらさ、やっぱり私達の席で間違いなかったんよ。ホラやっぱり!って感じでさ、出だしから最悪な気分になったんよね。」

「えぇ?!そんな思いされたんですね。それは大変でしたね。そりゃ気分も悪くなりますよ。もう、何て声をかけたらいいのかもわからないですよ…。それは朝からお疲れ様でした…。」

私には慰めの言葉も見つからなかった。自分が腹が立っても、顔や態度に出さない人が、これほど怒っているのだから、よっぽどイヤな思いをされただろうし、この先輩による説明はできごと全体のうちの氷山の一角だったかもしれない。

今なら、ドライブレコーダーか、VR判定を要求したいところだ。

ちなみに、今から思えば、これはあくまでも“序章”に過ぎなかった。

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そして人も集まり、定刻になったので出発した。

いざバスが走り出すと、色々な話をたくさんしていて、笑い転げてしまい、景色もほとんど見ていなかった。

ただ、さすがにGWなだけあって、やたらバスが渋滞に巻き込まれる。

添乗員さんから、「申し訳ありませんが、次の行程に時間が間に合わないので、〇〇の行程は飛ばさせて頂きます。」

と、2、3回アナウンスがあった。

何の行程だったかはもう覚えていないが、「え~↓↓」とテンションを2人で下げたことは覚えている。

さすが、GWだ。そう簡単に目的地には行かせてもらえない。

私はGWは基本出かけず、インドア派を発揮し、家で過ごすことが多い。行っても、逆方向だったり、あまり人が押し寄せる場所に行かないタイプなので、テレビで「〇〇から▢▢km渋滞」とかを見て「出かけなくて良かった!」と思う方なので、今回、旅行で初めて「GWの渋滞に巻き込まれる」という体験をしたと言っても過言ではない。

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相変わらずバスの中では話が尽きず、外の景色もそこそこに、目的地の一つである藤の花を見に行った。

しかし、私は遠くにある屋台が並んでいる方にばかり注目してしまい、花はそっちのけであった。

一緒に行った先輩は「らびっとさん、お花興味ないの?」と仰った。

「あ、すいません。どうしても私にはあっちの屋台が気になってしまって…。もちろん、藤の花も見ますよ。」

「そっか…折角お花見に来たのに残念…。」と言われて、申し訳なさでいっぱいになった。

しかし、やっぱり私は屋台が気になって仕方がない。

「後でちょっと屋台寄ってもらっていいですか?」と言って、藤の花のゾーンが終わった後、少し付き合ってもらった。

何も買わなかったように記憶しているが、どんなものが売られているのか見るだけでも楽しかった。

ただ、先輩には大変申し訳ないことをした。

今では、私が“そういう人間”と分かってくれているので、笑い話として話せていることは、非常に有り難いと思っている。

私にとっては所詮、藤の花が「ぶどうみたい。」という感想しか、今でも言えないのが、我ながら残念すぎる。

▽ちなみに、私が「花より団子な性格丸出し」の記事はこちら

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そうして、藤の花を見に行ったのか、屋台を見に行ったのか分からない感を持ちつつ、次の行程に向かうべく、バスにまた乗った。

しばらくすると、あの“迷惑一家”の男性が突然、

「おーい、ちょっと、トイレ行きたくなったから止めてくれ!」

と言い出した。

一瞬バスの中はシーンとなった。

しかし、一般道で窓から見る限り、トイレに行けるようなところは無さそうな、田舎道だった。

それでもあの男(もはや“男性”と言うのもやめたい位な気持ちをお分かり頂きたい)はまだ叫んでいる。

そして、道の駅でもコンビニでもない、田んぼだらけの所でバスは停まった。

確か、この時バスガイドさんは何かアナウンスをされていたとは思うが、その内容が全く記憶に残らないほど、我々は呆れ果てていた。

先輩が窓際だったので、「どこかトイレあったんですか?まさか立ち…」
と言いかけると、

「そんなん、知らんわよ!!見たくもないし。」

「……。」確かにごもっともである。私もそれ以降黙っていた。

他の乗客はどう思ったか知らないが、我々はついていけないと言葉にこそ出さなかったが、思いは一致していたと思う。

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そしてその後、モヤッとしながらも、また気を取り直して、次の夕食の所へ行く間、話が盛り上がって、無事到着した。

もう、今回の旅行で一番楽しみとなった場所だったので、先輩と私はニコニコ顔かつテンションは上がり、座敷へ座った。

幸いあの“迷惑一家”とは敢えて離れて座ったかどうか覚えてないが、ともかく離れて座った。2人でその点はホッとした。

料理はすき焼き的な鍋料理がメインだった。周りの他の乗客も感じの良い方ばかりで、おいしいし、楽しいしでホッとしていた。(本来私はすき焼きがあまり好きではないが、色々あったので、おいしく食べられた。)

ところが料理も終盤で、そろそろ食べ終わる頃に突然先輩が

「らびっとさん、アレ見てん。」とこそっと耳打ちされた。

「アレって何ですか?」

あの・・人達よ!!」

「えっっ?」と言って見てみると…。

何と、スーパーやコンビニでもらうようなレジ袋の中に、鍋の食べ残りをジャンジャン、箸で直に入れている…!

私も先輩も口をあんぐり開けて、硬直しながら凝視していた。その様子を見て、周りの他の乗客達も同じようになっていた。

その姿は、まるで目を合わせたら石になるかの如く…である。

しばらくして、先輩に「もう、行こう!」と言われて、慌てて用意をして外へ出た。

確か、ここではお土産を買いにも行ったはずだが、何を見て、何を買ったのかも全く覚えていない。

あまりにも、あの“レジ袋の一件”が頭にこびりついて、それ以外の記憶を吹き飛ばしてしまったのである。

折角、おいしいものを食べたのに、バスに乗った直後なのもあり、思い出すと吐きそうになっていた。

私と先輩はこの件で、完全一発KO状態であった。

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世の中には色々な人がいて、色々な考えがあるのも、それなりに生きてきた“らびっと”も分かっているつもりでいたが、それを更に上回る人たちがいることに、先輩と共に驚愕した。

あの人達が何を考え、どうしてそうしたのかは、当時も、今でも全くわからないし、理解できないし、理解したくもない。

何かの文化かもしれないというのなら、それを批判はできないが、私の気持ちの中では“有り得ない”の一択だし、先輩もたまにこの話題が出るが、そのように思っている。

「あれ、持って帰って、どうすんねやろ?犬にでもあげるんかな?」
「犬だとあのままあげたら味が濃すぎて、体に悪いからそれだとヤバいですよね…。ひょっとして温めてまた食べる気でしょうかね?」
「そうだとしても、私はレジ袋直入れ状態の鍋の残り、よう食べんわ!」

と、10年以上前の出来事だが、強烈過ぎて、今でもその話題が出るし、謎は多いし、2人には理解できないことが多過ぎて、終わりのない話をしてしまう。

「次回、バス旅行に行くことがあったら、“あの一家”が乗ってきたらどうしよう?イヤですねぇ…。」といつ行くかも決めてない旅行話に、“話の花”を咲かせる2人なのであった。


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