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もう一度会いたい

母は、家を守っている。
不器用な秩序や
意味不明で世俗的なこだわりに
いつの間にか
異常なほど執着している。

家を守ることで
彼女は何をしようとしているのか。

家とは
娘の別の名前である。

再び彼女に会うためには
家がなければならないのだ。

七つで死んだ娘が
大人になった顔を
母親ははたして
見抜けるだろうか。

愚問だ。

娘か娘でないか、わからないわけがないのだ。

まつ毛の長さも
髪の毛の質も
肌の感じも
匂いさえ
永遠に覚えている。

娘が帰って来るから
家を守っているのだ。

異物たちがやって来て
だから排除しようとして
でもそれが
再び娘に会うことが出来る
違う回線を繋いでくれるものだったとしたなら。

どんな狂気も、暴力さえも
解放である。

夫婦ふたりの
朝のお茶会にははじめて
死んだ娘が座ることになる。

残酷と救いはイコールなのだ。
そこにいたい。
わたしはその場にいて
彼らがどう生き抜くのかを
学びたいのだ。

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