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#2 スポーツが言葉を超える時

皆さんこんにちは!佐野月咲です。今日は、ふと、強く感じた「スポーツをやっていて、海外に来て、与えてもらったもの」のことについて、そのありがたさについて書きたいと思ったので感じるがままに書かせてもらうことにします。

先週末、アウェイの試合の帰りのバスの中で去年までの大学のチームメイトとテキストのやり取りをしていました。クリスマスと年末年始の休みにアメリカに行く際にそこで会えるように予定を合わせてくれて、会うのを楽しみにしてくれて、それがとても嬉しくて。その後アパートに戻ると、もう一人の大学時代のチームメイトからも連絡が来て、1時間半ほどフェイスタイムしました。近況報告と相談や共通の友人の話など、話が尽きませんでした。自分のことを想ってくれる、理解してくれるチームメイトとの話を終えて電話を切った後、それが自分にとってどれだけ特別なことか、「なんて素晴らしいものを自分は4年間の大学生活と学生アスリートから与えてもらったのか」すごくありがたい気持ちになりました。今日はそんなお話しです。

チームメイトとの特別な繋がりは、私がアイスホッケーを海外でやっていることで得られた大切なものの一つです。結果や業績というのはもちろん大切だし、いつも私にとって指標の一つです。学生生活や学生アスリート生活を振り返ると、そういった部分で戦った記憶や必死になっていた記憶、勝ったこと悔しかったことなど、鮮明にどの場面でも思い出せます。だけど、過程から得られてその先の人生ずっと持っていられる大切なものというのも存在します。

私の以前のNoteでも少し書いたかもしれませんが、私にとって大学入学は初めての海外でした。大学入学と同時に、突然全ての生活が英語になり、四六時中、日本人以外の人に囲まれて過ごす日々が始まりました。時間がかかりすぎだと思われるかもしれませんが、実際、私がその環境に慣れて「心地よい」「心配することはあまりない」と感じられるようになるまで確実に3年はかかりました。今も日本にいるのと海外にいるのでは安心感や居心地の良さは異なりますが、今は海外にいる間の居心地の良さや自分の在り方というのを自分なりに見つけ出せていると思います。そしてその要因の一つが、4年間の中で、少しずつ、でも確実に築くことのできた繋がりです。

初めてハーバードのアイスホッケーチームに入ってすぐ、ここで深いコネクションを築くのは思った以上に大変かもしれない、ということに気づきました。それまでアメリカに行ったことのない自分がアメリカのチームや大学生活、文化に持っていた印象は、バックグラウンドや人種など関係なく、同じ場所にいる人は何か共通点を見つけてすぐ仲良くなれる、というもの。大学のパンフレットや宣伝動画などでも多様な生徒が一同に集まって食堂でご飯を食べている様子や課外活動をしている様子などがいつもハイライトされていました。だけどアメリカでの大学生活の現実は、想像とは違い人種やバックグラウンドや文化が人間関係やグループに大きく影響している、ということにはすぐに気付かざるを得ませんでした(このことも私にとってはとても大切なことなので、いつか記事にしたいと思っています)。日本以外には住んだことがなかったので予想の世界と現実が異なるもの考えてみれば当たり前です。そして遅らせながら自分がチームで一人、北米以外から来たプレーヤーだということもその時はっきり認識したのです。

ロッカールームでの会話はほとんどスラングで構成されていて、教科書の英語ばかりに触れていた私にはまた新しい言語のようでした。みんなが矢継ぎ早に同時に話し、話題も、知らないアーティストやみんなの共通の友人(同世代のトッププレーヤーの話など)の話でした。アイスホッケーという大枠以外、そもそもの共通点がない!チームメイトたちにとっても、北米以外のチームメイトを迎えるのはほぼ初だから困惑しているようにも見えました。せめてもう一人日本人がいたら、せめてここではなくても同じような経験をしたことのある日本人がどこかにいたら、と思ったことも正直何度もありました。同じ境遇や感情を共有できる人がなかなか見つからない中、「4年間このチームで大半の時間を過ごす」という一見長すぎる日々が始まったのでした。

自分の中の文化の理解やアメリカの多様性についてはまた今度ゆっくり語ることがあるかもしれませんが、私はそれを4年間かけて少しずつ少しずつ理解していったと思います。言語も違う、文化も違う中で自信がマイナスになる1年生から始まり、練習やトレーニングで毎日4時間ほどリンクにいても、誰とも何にも話せない、一言も発さない日が数えきれないほどありました。そんな中自分を表現するのを助けてくれたのは、アイスホッケーとチームに対する姿勢や態度など言葉以外の部分でも伝えられる部分でした。どれだけギリギリの状態でも、「アイスホッケーをするためにここに来た」「このチームでどうしてもプレーしたくてここにきた」という思いは常に消えずにありました。だからこそ、まずはどれだけ言葉や表情で自分を出せなくても、氷に乗っている時は、チームにいる時は自分を全て出し切って、自分にそれ以上を貪欲に求めていく毎日を過ごそうという覚悟が生まれました。

そこから少しずつ、周りにとっての私、というものが変わってきたと思います。これもゆっくりとでしたが、だいぶ会話のペースにも慣れてきて、自分にとって大切なことを相手に伝えられる人やタイミングが少しずつ増えてきました。言葉が不器用な分、チームとこのスポーツにかける態度や姿勢を通して伝わっていたことはちゃんとあったんだと感じることが何度もありました。「ルナは一番最初にリンクに来て一番最後に帰るよね」と言われた時に、ふと、自分がどれだけこのスポーツに、このチームに、このチームメイトとプレーする試合に懸けているかに気づきました(そうです、私は激長ルーティーンがあるので毎回普通に練習に行こうとするとただ必然的にそうなります。笑)。逆に私はいつも他のチームメイトの姿勢に刺激を受けて、そこから言葉で直接あえては伝えない熱い思い、気持ちを感じ取っていました。パスが繋がってゴールした時のハイタッチや、お互いを労うハグで、言葉じゃない部分でも相手に伝わる情熱や愛や優しさや思いがたくさんあるということを知りました。

私の大学最後の年は、毎日、毎週のようにいろんな出来事が起こり、決して簡単な年ではなかったけれど、その一つ一つを一人ではなくて周りにいるチームメイトと、それも1年生の最初に大きな壁を感じた、別世界から来たように感じたチームメイトと一緒に乗り越えていけたことは本当に特別です。私が4年間を通してチームメイトの前で発してきた言葉はそこまで多くなかったと思います。それでも私を理解して困った時には助けてくれて嬉しさを共通してくれる仲間との関係ができたのは、4年間を通していい時も大変な時も同じ時間を共有してお互いの姿を見てきたからだと思います。そしてそんな私が話そうとする時は、しっかり耳を傾けて話を聞いてくれました。だから、時間はかかっているけれど、言葉では伝えきれない葛藤や苦しみの部分もお互いに見て助け合えるような関係が少しずつ築かれていったのだと思います。日本にいた時はより簡単にできていた、「自分を出す」という単純なことをできるようになるのに何年もかかったけれど、それでも毎日の積み重ねがこんなに大切なものになって与えられることを身をもって実感しました。

長すぎる、本当に終わるのかと想った4年間は本当に終わりました。この人たちともっと一緒にプレーしたい、同じキャンパスでもっと過ごしたいという強い思いと共に。ここでまたアメリカやカナダ中に、世界中にみんなが散っても何度も集まってずっと友達でいれるんだという嬉しさとも共に。地球の正反対にいて、全く違う文化のもと育った私たちが、言葉も見た目も文化も何も違った私たちが、卒業後も互いを気にかけ想い合う存在になれたのは、アイスホッケーというスポーツを通して、心の深いところで繋がり合う瞬間を何度も共有してきたからでした。

私にとって、「スポーツは言葉を超える」は嘘のようで本当でした。とてつもなく時間はかかるし、お互い知らない世界から来たもの同士で先入観もある中だと心が通じ合うのは難しいと思ってしまうかもしれないけれど、それでもそのスポーツと、そのゲームと、そのチームと、そのシーズンと、その毎日に懸ける思いから、そしてそこから生まれる葛藤や成長を共に経験していくことで生まれる繋がりがあると知りました。その繋がりは特別としか言いようがありません。

目標や夢を追う過程で得られるものの大きさを最近よく再認識します。その一つの夢や目標に対して現時点でうまく行っているように見えてもそうではなくても、過程で得られる宝に気づき、享受し、感謝することは誰にでもできるとも、強く感じています。実際に、私が最初にアメリカに行った目的はホッケーだったけれど、そんな中で自分が今この瞬間を生きて行きながら、時には必死になりながら過ごしていて気づかぬうちに得られていたもの、というのはホッケー以上にたくさんあります。それはチームメイトとの繋がりだけではなく、そこで会った人たち、起こった出来事、経験、全てです。

アイスホッケーから、スポーツから、私はたくさん与えてもらっています。追っているのは目標や夢かもしれないけど、その間に数えきれない出会いがあり、優しさをもらい、助けてもらい、私の世界を広げてもらい、気づきをもらい、学びをもらい、今もたくさんのものをもらっています。そしてそれがまた、前に進む力になっているのだな、と感じます。

今日はそんなスポーツに、出会いに、チームメイトに、支えてくれている人たちに、感謝を込めて締めたいと思います。私の競技生活をユニークにしてくれて、楽しくしてくれて、優しさと温かさで埋め尽くしてくれてありがとう。だから今もアイスホッケーが好きで好きでたまりません!

今日も皆さんにとって素敵な1日でありますように!寒くなってきましたが、お体お気をつけてお過ごしください!

twitter: @lunasasano7


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