「桐島部活やめるってよ」や「チア男子」でお馴染みの、朝井リョウさんが各企業からイベントなどで依頼を受けた読み切り短編小説を集めた一冊。
短編小説集は世の中にいくらもあるし、その元々の掲載先が複数にわたるのも短編小説ならありがち。
しかしこの本の面白いところは、どういう依頼を受けてこの短編がでてきたか、企業側のオーダー内容がわかるところ。へー、この依頼からこの小説、と思いながら読むのは初めての経験。小説として楽しみつつ、よくもまあこのオーダーで描き切ったよなあとプロの仕事ぶりに感心しきり。また、まだ柔らかく詰めきれてない企画を委託先に投げて困らせたことはあるので、あー、こうやってあの時の私もあの人を困らせたに違いない、と過去の自分の仕打ちを思い出して冷や汗を流すという稀有な体験もすることができます。さらに言うと小説を描ききった朝井さんの振り返りも感想戦という形で読むこともできます。素人の読者からすると、ぜーんぜん気にならなかったところを、作家さんはあちゃーと思っていたり、制作の裏側を垣間見られるのも面白い。

昔のグリコのキャラメルじゃないけど、一粒で2度3度美味しい一冊です。