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怠惰な性格の持ち主は親失格?|エッセイ

 結婚して1ヶ月後、親になることが判明した。
こんなにすぐ? と有り難くも驚いたのが本心。
根が小心者で心がやわやわな私は、どうかこれがぬか喜びになりませんように、
と祈るように、心が舞い上がらないように抑え込んでいた、
ぬか喜びほど恐ろしいものはない。だって自分の心に裏切られるんだもの。
 
それはそれとして。
 
子どもを持つと、これまでなかった母性が目覚めると聞く。
こんなに自己中心的な私でも、子が第一になるのかしら? できるのかしら?
 
そうしなければ、と思った。
だって親って唯一無二の存在。それになるのだから。
責任を持って、その子がちゃんと育てるように、
将来に影を落とさないように、私がしっかりしなければ。
 
根が小心者で心がやわやわに加えて、ドが付くほど真面目な私は
「ちゃんと」しなきゃと心に決めた。
 
ちゃんとってなんだ。なにをどこまですれば「ちゃんと」になるんだ。
 
そんな疑問はもちろん抱かない。
抱くのはきっと、自分に逃げ道を作ることに繋がるから。
逃げ道なんて作らない。ちゃんと向き合ってちゃんと完遂する。
志高く迎えた産後。
2ヶ月で私は限界を迎えた。
 
根が小心者で心がやわやわでドが付くほど真面目な私は、本質が怠惰なのだ。
怠惰な私が真面目故に「ちゃんと」しなきゃ、と自分を思い詰める。
なんという矛盾。なんという危険。
 
私は母親失格だ。と思った。
親になる資格がないのに産んでしまった。取り返しのつかないことをした。
陣痛中、後戻りできない、と思い知って痛みにぞっとした。
それと同じ感覚だった。
 
離婚して夫に子どもを任せる?
何度か真剣に考えた。だって自分のことを第一にできない母親なんて、いらないじゃない。
 
そんな私が、母親業を続けて9ヶ月になる。
2週間に1度子と夫を残して外出し、ひとり時間を過ごす。
子とふたりの家でお昼を食べながら、子にYouTubeを見せて読書をする。
新発売の欲しいコスメを買うために、子をベビーカーに乗せて出かける。
 
「ちゃんと」できていない。
そう思って血の気が引くときもある。
けれどたぶん、これが私なりの子育てなのだ。
 
子は可愛い。育つほどますます可愛い。
どんどんできることが増えるのは、見ていて幸せだ。
そうやって幸せを感じて、子と笑える。
だからたぶん、これが私なりの正解なのだ。
 
限界を迎えた産後2ヶ月。
まずお母さんが楽しくないと、と言ったのは夫だった。
この子、元気で楽しそうやんか、だから100点満点やんか、
と、そう言って私を外に送り出した。
 
これからも私は、読みたい本があれば子にYouTubeを見せて読んでしまうかもしれない。
欲しいコスメがあれば、そのために外出させてしまうかもしれない。
 
それでも子育ては徐々に、私の生活に溶け込んできている。
最初から「ちゃんと」した母親にならないと、と思っていた。
でもどんな母親も、産んだその瞬間から価値観を入れ替えるのは難しい。
だから子と関わりながら、やってはいけないことだけ守りながら、
ゆっくり、ゆっくりやっていけばいいのではないだろうか。
だってみんな1年生だもん。分からないことを学んで、
新たしい生活にこれから慣れていけばいい。
 
これからもっと、新しいことがある。
子どもと笑顔で過ごせるように、私は私も第一にしていきたい。

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