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梅雨上る

暦は小暑の候となりましたが、今回のお話は
季節を少し前にもどした辺りからはじまります。


  しづかなるパフェの模型や夏至真昼     梨鱗


夏至の日は6月の下旬にあたり、梅雨さなか。
たいていは雨か曇りが多いかと思います。
今年の夏至はよく晴れました。
太陽のちからが最も強い季節、雲の覆いがなければ
こんなにも光が降り注ぐのかというほどに、
日傘にも陽の重みをずしりと感じます。

元気なのは、太陽ばかり。
人々は、自然に負けるのは人間の習いとでも
いわんばかりにちからなく立っています。
欅の大木も、古びたビルディングも
バルターミナルの周囲は、生き物も人工物も区別なく
ひっそりとしています。

その後、数日ほど雨が降りましたが
それが止むと連日の酷暑となりました。
ふだんは水筒を持ち歩いているのですが
それだけでは足りないとペットボトルのドリンクを買いました。
味の素のソルティライチです。
スーパーマーケットでよく冷やされた清涼飲料水、
生き返ります。

夜のニュースでも記録的な暑さを伝えていました。
輝く光の下、キッチンカーで冷たい飲み物を買う人の
さんざめく笑顔。
こんなに過酷な夏は、人の作った便利さが人を救います。

けれど。
人が便利を求めすぎたために、
異常と呼ぶしかない、こんな暑さになったのも
理性的な人なら否定できないはずです。

静まり返った真昼のバスターミナルは、円形の棺です。
この先滅んでいくものを、今から並べているようです。
どういう訳か今年の夏は、パフェが食べたい気分です。
冷たい物が苦手なのに、
細やかなグラスを埋める白やエメラルドグリーンのコントラスト、
大粒の果実のまぶしさが、目に浮かんではなれません。

6月の末だというのに、早くも梅雨が明けてしまいました。
身体のよく干からびた日、よく冷えた水が売っていたら
やっぱり買ってしまうのでしょう、か。

どこかにあるパフェを思う時、一時ばかりこころは閑かです。


  うず高きパフェのクリーム梅雨上る



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2022/10/1
つけたし。
今年、関東甲信地方の梅雨明けは、6/27と発表されたのですが、その後
雨模様の日がもどり、梅雨明けは7/23と修正されました。
9/1に気象庁が、そう発表したそうです。
そうですよね……。いくら異常気象でも、6月下旬に梅雨明けじゃ、困っちゃいますよ……。梅雨、戻って来てくれてありがとう~。
(ということを10月に書いているぼく)



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