りりかる

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花の言葉を識って

 ♡  ピーター・パンクスは銀髪の老河童の様な頭を抱えていた。あの可愛い可愛いタイガーリリーが逢いたい、と文を寄越したのである。  いったい、どうしたものか。こ…

りりかる
2年前
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ノスタルジア・サァカス

 売女め。  心の中、悪態をつく。否頭の中か。ステージの真ん前のシートに座り、ウィスキィのロックを煽る。  只でさえ仄闇い照明がもう一段階、闇くなった。浮かび上…

りりかる
2年前
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透明の穢れ

其の一 紗雪   透明感があるとよく云われます。  きっとそれは私の肌が透ける様に白く全体的に色素が薄く髪の色も薄く瞳がヘーゼル色だからかも知れません。ハーフな…

りりかる
2年前
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My Sweetie π

 何度創っても、途中で失敗する。  本当に難しいわね。  天地創造って。  ♡  天上の世界。  破壊の女神・カーリーが昨日創った星はピンク色で、緑の大地が可愛か…

りりかる
2年前
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幻想浪漫逃避行

「ねえ。私をさらって」  彼女がそう云った時。何云ってるんだろう、この女は。そう思った。僕のことなんて何も知らないくせに。  真沙子は、僕が出会って来た女たちの…

りりかる
3年前
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Tyger Tyger

今日は寅の日なので。 ウィリアム・ブレイクの詩を。 何故、TigerがTygerになっているのでしょう? The Tyger Tyger Tyger,burning bright, In the forest of the night…

りりかる
3年前
50

Butterfly Effect

今は昔。 りりかるが若くてピチピチして、子鹿ちゃんみたいにスレンダーで、生意気で、得体の知れないパワーに満ち溢れていた頃。 「若さ」は「馬鹿さ」。 「若さ」は「傲…

りりかる
3年前
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Time To Heal The Earth

ー知ってる? 海は、空は、本当は虹色なの。 澄んだ水色の空は、黄昏に向けて透明になっていく。 地上に燦々と光を降り注いだ太陽は、1日の終わりに燃え上がり、その美し…

りりかる
4年前
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花の言葉を識って

 ♡  ピーター・パンクスは銀髪の老河童の様な頭を抱えていた。あの可愛い可愛いタイガーリリーが逢いたい、と文を寄越したのである。  いったい、どうしたものか。こんなしょぼくれた老人の姿を見たら、タイガーリリーはショックで倒れてしまうに違いない。  嗚呼せめて。もうちょっとシュッとしていた若き頃に出会えていたのなら!  胸キュンを通り越し、動悸がする。ピーターはナースを呼んで薬を飲ませて貰った。落ち着いてくると、彼は寝台横の棚の引き出しから桜色の封筒を取り出し読み始めた。便箋

ノスタルジア・サァカス

 売女め。  心の中、悪態をつく。否頭の中か。ステージの真ん前のシートに座り、ウィスキィのロックを煽る。  只でさえ仄闇い照明がもう一段階、闇くなった。浮かび上がるテーブルキャンドルは朱く焔は金色で、空間に更なる非日常感を与える。先刻まで流れていた流行りのR&Bが、下手なDJの早過ぎるフェイドアウトで消えた。  ショウが、始まる。  ネイティヴスピーカーではないだろう出稼ぎDJの、巻き舌英語が勿体つけてショウの開始を告げた。  最初に出て来たのはウクライナの美女。Japan

透明の穢れ

其の一 紗雪   透明感があるとよく云われます。  きっとそれは私の肌が透ける様に白く全体的に色素が薄く髪の色も薄く瞳がヘーゼル色だからかも知れません。ハーフなの?なんて訊かれることもあるのですが母も父も北の生まれなので或いは寒い国からの血も流れているのかも知れません。透明感という言葉とともに美しいという言葉を受け取ることも私にとっては日常茶飯事です。私はただ微笑みを返すことしか出来ませんが内心はうんざりしているのです。そんな言葉聞き飽きているのですもの。何かもっと私を悦ば

My Sweetie π

 何度創っても、途中で失敗する。  本当に難しいわね。  天地創造って。  ♡  天上の世界。  破壊の女神・カーリーが昨日創った星はピンク色で、緑の大地が可愛かったのに、ヒトを創って置いたら一晩であっという間に戦争が始まり、激しく転がり回って、眠っているカーリーの髪を戦火が焦がした。只でさえクルンクルンのカーリーヘアの一部が、熱のせいでチリチリになった。しかも幸福な惰眠を貪り、夢の中で素敵な彼と出会った瞬間に起こされた。 ーふざけるんじゃないわよ!  ブチ切れたカー

幻想浪漫逃避行

「ねえ。私をさらって」  彼女がそう云った時。何云ってるんだろう、この女は。そう思った。僕のことなんて何も知らないくせに。  真沙子は、僕が出会って来た女たちの中でも群を抜いて美しかった。 長い髪は腰まであり華奢な体は簡単にポキッと折れそうだ。ぞっとするほどの白く蒼い肌。 「さらって、どうするの?どこに行くの?」 僕はその髪を触れる。薄茶色の絹糸の様だ。 「いいのよ、どこだって。私はあなたが好きなの。あなたに乱暴に愛されたいの。滅茶苦茶にされたいの」 そうか。真沙子は僕の中

Tyger Tyger

今日は寅の日なので。 ウィリアム・ブレイクの詩を。 何故、TigerがTygerになっているのでしょう? The Tyger Tyger Tyger,burning bright, In the forest of the night; What immortal hand or eye, Could frame thy fearful symmetry? In what distant deeps or skies. Burnt the fire of thine

Butterfly Effect

今は昔。 りりかるが若くてピチピチして、子鹿ちゃんみたいにスレンダーで、生意気で、得体の知れないパワーに満ち溢れていた頃。 「若さ」は「馬鹿さ」。 「若さ」は「傲慢さ」。 「若さ」は「怖いもの知らず」だった。 その頃、世界は私のもので、私は私の世界の女王様だった。 「夜の蝶だった私」 罠という名の店。 ピンクの鳥の名前のお店。 流氷の天使の名のお店。 唇という名のお店。 絶頂という名のお店。 縦糸という名のお店。 お店が変わると名前も変わる。 モモ。 レオ。 サラ。

Time To Heal The Earth

ー知ってる? 海は、空は、本当は虹色なの。 澄んだ水色の空は、黄昏に向けて透明になっていく。 地上に燦々と光を降り注いだ太陽は、1日の終わりに燃え上がり、その美しさに拍車をかける。 空も。海の水も。砂も。風と雲も。 その場所にいる生き物や植物も、みんな等しくその色に染まる。 順番に、あるいは混じって、溶け合って、グラデーションになって… レモンイエロー。 金色。 オレンジ。 ピンク… マゼンタ… そして、バイオレット。 ダークブルーの夜が来る前に。 ミカエラは親友である海