マンションの需要と供給。

 2024年1月25日、不動産経済研究所が発表した昨年の東京23区の新築マンション平均価格は1億1483万円となり、初めて1億円の大台を超えた。この大きな理由は港区などの都心部で超高額物件が多く販売されて、平均価格をつり上げた点にある。
 それとともに首都圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉各県)全体の平均価格も8101万円と過去最高を記録した。建設費や人件費の高騰も価格を押し上げ、2年連続で過去最高を更新した。
 需要と供給の関係から考えると、価格が上昇したという意味は需要が拡大した。コロナ禍で在宅勤務やオンライン教育が普及し、住環境の向上や広さの確保を求める層が増え、また低金利や資産運用の動機もあり、購入意欲が高まった。
 供給面では、港区などの都心部で超高額物件が多く売り出されたことが特徴だが、これらの物件は景観や設備などの付加価値が高く、高級志向の顧客層に人気があった。しかし、わが国の商習慣として、需要が減少すれば供給を減らし、産業や業界を縮小する形でバランスを取る。
 昨年発売された戸数はピーク時の04年に比べると、3割程度しかなく、これが高騰の基盤にあった。とくに高級な物件は限られた数しか販売されず、供給不足に陥った。その結果、競争力の高い物件は入札制になり、価格がさらに上昇した。
 1億円マンションは普通のサラリーマンには高根の花だが、一般に高級マンションは投資の目的で売買されることが多い。マンション投資は賃貸収入や資産価値の上昇を期待して行われるが、現在の状況ではこの利点は乏しくなっている。また賃貸収入については、コロナ禍でテレワークや地方移住などのライフスタイル変化が起き、都心部の需要が減少している。
 資産価値についても、今後の人口減少や景気悪化や利子の上昇などを考えると、現在の高値を持続する可能性は低い。したがって、マンション投資に走る人は少なくなっている。
 こうした二極化を見ると。もはや高級マンションを扱うデベロッパーは、一般の国民などを相手にするビジネスはしていない。少数の富裕層と大多数の貧困層に分断されている中、誰を相手に商売をすれば良いのかは彼らにとって明らかである。
 と言っても、関係者の間では今年の見通しは、23区内で新規発売されるマンション戸数が伸びず、東京都下や神奈川県のマンションが大きく増加する予測となっている。首都圏全域の平均を押し上げてきた23区内物件の比率が低下することで、平均価格も下がる予想が強い。今年、日本銀行が利上げに踏み切った場合、住宅ローンの金利は上昇する。そうなると、住宅ローンの新規の借り入れが減少する。
 住宅市場は一気に冷え込む。

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