「ジャケ聴き」のできるたのしみ。

 

学生だったころに通っていたレコードCDショップでよく「ジャケ買い」をしていた。

海外のそれほど有名でもない人たちの輸入盤がたくさん置いてあるお店で、そこでCDを買うことでしかその音楽に触れることができない、というようなこともよくあった。その中から、CDのジャケットとお店の人が用意してくれた説明文を頼りに気になる1枚を探してみる。たしか、お願いすれば試しに聴くこともできた気がするけれど、これは宝探しのゲームなんだから、それはしない。

そうして買ったCDは、予想通りだったこともあれば予想とまったく違ったこともあったけど、失敗だと思ったことは一度もなかった。「出会えるはずのなかったものに、自分の手で探して出会えた」ということじたいがうれしかったからかもしれない。

年をとるにつれて、しだいにCDを買わなくなってしまって、いつの間にか好きな人の新曲か、友人がすすめてくれる音楽しか聴くことがなくなっていた。


Apple MusicやSpotifyなんかの音楽ストリーミングサービスに登録してから、「新着ミュージック」をよく見るようになった。知っている人も知らない人も、毎週たくさんの音楽を作って、発表している。その中から「知らない人だけど、このアルバムのジャケットは好きだな」と思うものをなんとなく聴いていると、少しドキドキしながら最初の1音にどんな音が鳴るのかをたのしみに待っている自分がいた。これは、きっとあの頃の「ジャケ買い」とおんなじ気持ちだ。

ずっと簡単に、ずっとたくさんかけがえのないこの体験ができて、それをシェアでき、友人の今聴いている音楽だって知れる。これだけたくさん「あたらしい音楽との出会いかた」が用意されている時代は、今までなかった。

好奇心さえなくさなければ、きっとなんだってできてしまう時が、きっとやってくる。

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