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7回忌は特別

一般的な、というと語弊があるかもしれないが、いわゆる仏教の数ある宗派の中でも亡くなった方の法要で3回忌と7回忌を行うことが多いのではなかろうか。
調べてみると3と7は仏教で特別な意味を持つ数字らしく、7は「お釈迦様が生まれたときに歩いた歩数が7歩」という説もあるとか。

今年の父の命日は月曜日であった。没後6年の7回目の命日は同じ曜日になる。命日からの1週間、いろいろ思い返すことが多かった。火曜のお通夜、水曜のお葬式…7回忌は確かにいつもとは少し違う、かもしれない。

父は6年前の4月、空が白くなりはじめた頃に亡くなった。病院の窓から見えた春の白い朝日を覚えている。よく晴れた朝であった。

日曜日に病院に顔を出し、夕方帰宅後しばらくして母からの電話が鳴った。一瞬で覚悟めいたものがよぎり、電話に出る。母の涙声ですべてを悟る。父が入院してからわたしは何度も泣いたが、母がわたしの前で泣いたのは初めてだった。

すぐにタクシーを拾い病院へ向かった。いわゆる、今夜が山だ、という状況だ。タクシーの運転手さんに病院名だけを告げ窓の外を見ていたら「親しい方ですか?」と病院名から察して声をかけられた。気遣いもあったのかもしれないが「はぁ」と答えるのが精一杯だった。

そして翌月曜未明、弟夫婦と母、わたしで最期を見届けた。見届けたというほど、何かしたわけではない。何もできずただそこにいたというのが現実だった。正解は今でも分からない。

4月中旬、命日を迎える前に親族が集まり7回忌を行なった。法要の翌日朝、母とお墓参りへ行く途中、桜が咲いていた。今年は早かったから近所のしだれ桜はもう終わっていたけど、山桜はかろうじて咲いていた。
あの春はどうだったかな、桜を見る余裕はなかったかな。

この日も晴れて気持ちのいい朝だった。

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