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WBSC U18 ベースボールワールドカップ in フロリダ 最終日

9/19㈪3位決定戦 対 韓国 in エド・スミス・スタジアム

日本時間午前4:00。
3位決定戦。
ほんの数時間前、決勝が行われた。
今大会の優勝はアメリカ。
圧倒的強さと思われたタイペイを制した。
その試合終了後、日本と韓国の3位決定戦が行われる。
対戦相手は韓国。
前回、完封された相手にどう立ち向かうか。
そしてこの試合をもって日本のU18ワールドカップが終わる。
これを見逃すわけにはいかない。

韓国 2-6 日本

高校から木製バットを使用している韓国。
金属を振り回してきた日本の高校生がどこまで食い下がれるか。
その差は前回試合で歴然だった。
しかし、ここにきてだいぶ慣れてきたのだろうか。
今日の侍ジャパンは前回とは違った。
しかし、試合を経過していくごとに、その理由が判明することになる。

不安定な韓国投手陣

メキシコ戦を制した韓国だが、タイペイとアメリカが決勝進出となり、3位決定戦に廻ることになる。
その投手層の厚さ、打撃力から韓国が有利だと思われた。
しかし、終わってみれば、なんと日本が韓国を制していた。
その要因のひとつは韓国投手陣の不安定さにあった。
前回、日本を完封した投手陣が続々と登板するも安定しない。
疲れが出たのだろうか。
それとも決勝を逃し、やる気を失ったのだろうか。
いずれにしても、前回とは違って強さを全く感じなかった。

先制点からの投手の安定

初回の日本の攻撃。
これまで当たっていなかった二番黒田がヒットを放つ。
立て続けに3番松尾、4番内海が打ち、難なく日本は先制点を取る。
その裏、日本の先発、生盛がマウンドに立つ。
こちらもまた不安定さが目立つ。
フォアボールやワイルドピッチなどでランナーを背負うが、なんとか初回を乗り切る。
これは良く投げても次の回までだろうか。
と思っていたら、その裏、韓国投手陣が自爆し始める。
ピッチャー交代で、なんとか立て直そうとするが、どの投手が出てきても不安定。
あの韓国ドラ1キム・ソフョンさえも。
一体どうなっているのだろう。
前回恐ろしく力の差を感じたが、まるで別のチームのようだ。
あれだけ日本の打者を仕留めてきたピッチャーは一体どこへ?
そして、この回、日本は5点追加し、この時点でほぼ試合を決めた。

日本のエースの貫禄

今大会を見ても日本の力は世界にはまだまだ敵わない。
世界には上がいると言い放った浅野。
これは事実だ。
WBSC U-18の7回制という野球の難しさ、木製バット、マウンドの土、芝の慣れなど、苦労したと思う。
そんな中、大阪桐蔭のエースの川原の順応性と安定感は目を見張るものがあった。
甲子園では少し気になる投球を見せていたが、このU-18においては本来の実力を見せつけた。
ゆっくりとした投球から放たれるコントロールの良い球に韓国打者が苦戦。
バッテリーを組む女房役の松尾との阿吽の呼吸。
そこに不安は全く感じない。
3位決定戦には必ず出てくると思っていたが、やはり監督は出してきた。
そして見事に自軍の持ち点を守り抜いてくれた。
その川原と松尾はベストナインに選ばれた。
守備の固さも光った。
特に光弘と伊藤のプレーはレベルが高かった。
この二人の今後は特に気になるところ。
大学進学後のプロ入りだろうか。

名将馬淵監督の人気

明徳義塾で野球をしてきた人達、その保護者、関係者なら分かると思うが、馬淵監督は人柄がとても良い。
高校では社会を担当しているとか。
生きていく上で大事なことを授業でも教えているようだ。
明徳義塾の試合は何度も見に行ったことがある。
私も監督と数回、話をさせてもらったが、きさくな方で話しやすい。
そんな方だからだろう。
試合後はいつも報道陣、取材陣が立て続けにやってくる。
そして、相手が満足いくまで話をして下さる。
リップサービス、洒落のきいた話を聞くために取材陣に引っ張りだこだ。
サインを求める人もいたりして、時間が許す限りは対応して下さる。
本当に人気のある監督だ。
そんな監督を卒業生もまた慕う。
卒業後も訪ねてきたり、神宮大会などではプロへ行った選手が挨拶にきたり。
毎年、大所帯になるのは、そういった人柄の監督の元で野球をしたいと思う子達が多いということだろう。

馬淵野球と山田主将のキャプテンシー

明徳義塾と言えば、甲子園常連校。
しかし、毎年、特に際立った選手がいるというわけではない。
その明徳義塾が甲子園に出る度、今だに数十年前の松井敬遠についてしつこく言う方もいる。
正直、今の選手達には関係のない話。
昔やっていた野球賭博で負けた人の恨みか。
野球というスポーツを大人の個人的な感情で汚さないでもらいたい。
あの敬遠もそうだが、監督という立場からしてみれば、大切なお子さん達を預かった身として、勝ちに拘るのは当然ではないか。
決してずば抜けているとは言えない子達、普通の高校球児達が、いかに自分たちより強いチームに勝つか。
下剋上。
一丸となって捥ぎ取った勝利の喜び。
その成功体験はこれから生きていく上での糧となる。

今回、U-18において、世界との実力差に愕然とした人も多いだろう。
あんな強豪に勝てるわけがない。
もう日本は終わりだ……などと、諦めた人もいたに違いない。
しかし、これから日本の野球界を背負っていくだろう選び抜かれた選手。
何とか勝たせてやりたい。
どんなに条件が悪くても、不利な状況であろうとも諦めない気持ちを持つことの大切さを持たせてくれたのは、他でもない馬淵監督であろう。

馬淵監督は今回、近江の山田選手を主将に選んだ。
近江と練習試合をした際に山田の人間性に一目惚れしたという。
そのキャプテンシーでU-18選手団を率いてくれる確信をもったとか。
一丸となって、気持ちを同じにして目標に向かっていく姿勢。
そこには馬淵監督がこれまで目指してきたものが照らし出されていたのかもしれない。

日本は銅メダル獲得に至り、有終の美を飾ることができた。
監督、選手ともに得られるものは多かっただろう。
そして見守ってきた人達、応援していた人達も……。

このWBSCは忘れられないものとなった。
そして、更に野球が好きになった。

ありがとう、U-18の関係者全ての皆さま。



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