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半額シールと夫

夫婦だけの食卓。

「たまにはいいでしょ、こんなお肉も。」

週末のちょっとした贅沢…
3人の子育て中は、このランクにはなかなか手が届かなかった。

贅沢な気分とお値段以上のお得感を一緒に味わう。


それ目当てに行ったわけではない。
朝採れ野菜を品定めしている間、夫は精肉コーナーで何やら吟味している。
手にはとうもろこしのパック。
夫の方へ近寄るとハンバーグ目的で合挽肉を選んでいるのかと思いきや、ステーキ用の肉が並べてある一角を見つめアレコレ悩んでいる。

こちらを見るなり

「ほら!これ半額だよ。」

サーロインとイチボと書かれたステーキ肉のパックを得意そうに見せた。
それぞれ半額シールが貼られ、マジックで大きく値段が修正されている。


夫はとにかくこういうのが好きだ。

限定品とか、残りわずか…とか、
特に半額シールには目がない。
そういったお得な商品が積まれたワゴンが目の前にあると100%の確率で立ち止まる。

一緒に買い物に行った時は、まず私の同意を得てカゴに入れるが、夫だけの場合、いる要らないは別にして、必ずシール商品を買ってくる。
目的でないものに手を伸ばし、買ったはいいが、結局、忘れて賞味期限切れ…ということも。

私から見れば、ムダが多い。

でも今回のお肉は地元産。
高級なお肉だけにみんなスルーしていくのだろう。この値段ではなかなか手が出ない。半額シールがちょっと不似合いだけど、見るからに高級な部位でサシもいい感じに入っている。
間違いなさそうだ。
サーロインとイチボ、それぞれ半分ずつ食べても、ちょうど良い量。
朝採れのとうもろこしを横に添えれば、今晩のメインは出来上がり。

もちろん休日は、夫が台所に立つので食材選びにも力が入る。

このところの物価高で輸入肉か、国産でも切り落としのお肉しか選ばない私にとって今回はちょっとした冒険。
暑い夏を乗り切るにはこれぐらいの贅沢はむしろ刺激になっていいかもしれない。

夫のお陰でハンバーグの予定が今晩はステーキになった。
夫が台所に立つ時は絶対干渉しない。
まず、立ち入らない。
その方がお互いのため。
手順から火の加減まで、ついつい口を出したくなるから。
些細なひと言が原因でこれまで何度、ぶつかってきたことか。

最初の頃は、臨機応変に対応することができず、調味料が足りないと言っては途中で買いに走ったり、旬じゃない野菜をわざわざ高い値段で買ってみたり。
時短やコスパなんて夫とは無縁だった。

今では、食材選びから鍋の特徴に至るまで、私にいちいち聞かなくても全てこなせるようになった。オリジナル料理も作れるようになり、随分と腕を上げた。

以前は食べる前から、上手くできなかった言い訳を並べていたけど、最近では「どう?」というドヤ顔までついてくる。

そういう時は、美味しくてもそうでなくても正しくジャッジする。
それが作ってくれた夫への礼儀だ。


今回は文句のつけようがない。
焼き加減といい、盛り付けといい、まず素材の味が活きている。
半額シールが貼ってあったとは思えない。いや、半額だったから…美味しさが際立つのか。
とうもろこしの甘みも含め、全てのチョイスがハナマル💮だ。

横にいる夫も満足そうだ。
サーロインとイチボをシェアしながら一度にふたつの味を楽しんだ。
しかも半額で。

定年した夫の収入も半額とまではいかないが、経済的にも随分スリムになった。

時々、不安な気持ちをのぞかせる夫。
再雇用で働くモチベーションが上がらないのも、身体が言うことをきかないのもそれなりに順調な証拠だよ。
なんて、慰めにも似たような言葉をかけても、今の夫には響かない。


上手く折り合いをつけていくって、なかなか難しいことなんだね。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
暑い日が続きますが、みなさまどうぞご自愛ください。














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