【日記】ひとつまみの日常
最近、寒さもあって朝にかなり弱くなった。
元々宵っぱりな人間ではある。それでも、「朝」には一応目が覚めていたんだけど、ここ一週間ほどはそれが下手くそになっている。
夜中にちょくちょく目を冷ましているから、眠りが浅いせいもあるのだろうけれど、翌朝ふと気がつくと九時をまわっていることもしばしば…。
全身全霊で、冬眠への憧れを抱きながら、怠惰な自分を揺り起こす毎日。
来世はくじらに生まれ変わりたかったけれど、こうなってくると冬眠する変温動物でもいい気がしてきたな。
冬の朝自体は、すごく好きなんだけどね!
買い物に行ったときのこと。
目の前にいたおばあちゃんが、エスカレーターに乗ろうとしてもたもたなってた。
場所の都合で、ビル風みたいになってしまっていて、かなり風も強かった。私でも煽られそうなくらいで、おばあちゃんがふらつくのもやむなし。
そんなわけで、よろめいたおばあちゃんの背を思わず支える。
そしたら、そのおばあちゃん「ごめんねごめんね」って何度も謝るのよ。
その姿がどうしても、一瞬で自分の祖母にリンクしてしまって、思わず「全然ええで、大丈夫?いける?」てゴリゴリの関西弁で話しかけてしまった。
ちょっと泣きそうにもなった。本当にすぐに泣く。
いいよ、そんなこと。怪我なくしっかり歩けるなら、手くらいいくらでも貸すよ。謝らなくていいよ。
その後おばあちゃんは、ちゃんとエスカレーターに乗って降りて、私に会釈をしてにこにこと去っていった。急に馴れなれしく話しかけてごめんなさい。
ああ情けは人の為ならず。
世の中のおばあちゃんを見たら祖母を思うし、高校生を見たらかつての教え子たちを思うし、小さい人たちを見たら、思い当たる限り知り合いの子どもたちを思う。
何かがあるたびに、思い浮かべる人がいることは、幸せなことだと思う。
日々の些細な出来事こそ、なぜかものすごく記憶に残っているんだよなあ。私だけだろうか。
冬。
石油ストーブをつけたときの匂い。
じゃんけんをして、勝った方が奢るココア。
熱々の肉まんを、分けっこして食べる階段。
この時期、必死に書いた最後の成績表の類。
寒い日の電車内で、座席の足元に感じる天国。
窓を開けると教室を吹き抜けていく、冷たい風。
曇った窓ガラスとその向こうに見える曇天。
コーヒーから立ちのぼるいい香りの湯気。
時系列もごちゃ混ぜになるくらい膨大な記憶。
そんな日々の「ひとつまみ」たちを、ぎゅっと寄せ集めた「過去」の上にある「現在」。
私はこれからも、そんな「ひとつまみ」を自分の中に蓄積させて、私として生きていくわけです。
日常というのは、多分そういうもの…。
今日聞いていたのは、少し前に公式でアップされたYouTubeの動画。
KOKIAの「Remember the kiss」
二十年前の映像を、どうしてこのタイミングで上げるに至ったのかまでは追いきれていないけれど、恐らく人生で聴いてきた歌声・上位三名に入るKOKIAの歌。
「Remember the kiss」は特に、好きなのはもちろんのこと、音域的にも歌いやすくてよく鼻歌で歌ってきた。
いつ聴いても、良いものは良い。
二十年前の自分、何してたっけなあと考えかけて「いや何もまだしてなかったな」と気づく。
まだ何もしてなくて、多分、何でもできた時期だ。
二十年後の自分を思うと、くらくらする。生きてるのだろうか、そもそも。そのレベル。
それでも。
Remember the kiss.
この唇は、愛を歌うために。
今宵もゆっくり、音楽に浸りながら夜を漂う。
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