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60年以上の超ロングセラーは文章の書き方指南書「悪文」

本(悪文)

様々なジャンルの悪文(正しくない伝わらない文章)の具体例を挙げて、どこに欠陥があり、どのように正すべきかを解説した本です。筆者の岩淵悦太郎氏は国語学者で、いわば日本語の文章のプロの視点から、的確で鋭い指摘がなされています。

この本を知ったのは新聞の書評欄での売れてる本のコーナーでしたが、この本の初版本はなんと1960年発行ですから、60年以上の超ロングセラーとなります。

私も買おうと本屋に行って検索した所、売れ筋の文庫本は在庫なしで、単行本の在庫があったのでそちらを買った次第です。それほどまでにロングセラーとして売れ続けているということなのでしょう。

新聞の紹介記事で、本書の担当者がいうには「伝わらない文章には普遍性がある」とのことで、まさに悪文は以前から存在し、普遍性を持って現在も使用されているという指摘です。

取り上げられる悪文の種類多種多様で、新聞、雑誌、広告文、広報誌、随筆、小説、さらにはテレビやラジオの放送文までが登場します。新聞などは全国紙でも悪文はたびたび登場しますが、筆者が悪文の最たる例として挙げたのが裁判の判決文です。威厳を保つために敢えてわかりづらい文章にしたのかもしれませんが、とにかく1つの文章が長すぎる!さらに修飾語も長すぎるので、どこにかかるのかわかりにくいというものです。

次に選んだ最たる例は、税務署による様々な税額内容の説明で、これなどは数式化すれば一目瞭然でわかりやすくなると書いています。こうした文章は書き手本人が理解しているためか、読み手のことを考えていないという、文章を書く上での基本的な事項が欠落していると指摘しています。

他にもスポーツ新聞に多い感情的で断片的な文章は、記者が読者への熱意を伝えようと主語と述語の関係など、文章の論理的な構成がなされていないと分析しています。こうした傾向は広告文でも同様であり、さらに薬の処方箋や取扱説明書などにも、論理的に矛盾するものがあるとしています。

悪文にならないために正しい文章を書くことの基本は、先ず文章を書く前に全体の構成を考える。思いつくままに書いてしまうと、全体で辻褄が合わなくなる。次に1つの文章が長くならないこと、読み手が理解しやすいようにわかりやすく書くこと、上手な文章でなくても読み手に伝わることが1番の目的であると説いています。

巻末に悪文をさけるための五十か条<索引にかえて>が書いてありますが、これを読むだけでも十分に役立つ文章の指南書だと思います。

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