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なぜ映画「チャンシルさんは福が多いね」は、 お姉さんに抱きしめられたような気持ち になる映画なのか少しだけ考えてみる

■映画の紹介

韓国では、フェミニズムを中心として女性たちの声や表現作品が熱い渦を巻いて続々と生まれていて、映画「チャンシルさんは福が多いね」もその最前線の作品として名前を連ねています。ただ、「フェミニズム」と聞いて、抑圧や葛藤の苦しさにまみれた映画だと想像するのは違うのです。
誤解さえ生む安易なイメージで伝えてしまうと、「かもめ食堂」みたいな、静かな映画ですと言ったら、「そういうあんまり何も起こらない映画は眠くなるし好きじゃない」という人は見ないのかもしれません。ただ...私はとても好きです。敵やトラウマや葛藤を真ん中に置いて話を動かしていないタイプの、人間の人間らしい人間のための映画。

あらすじと予告動画は公式HPより引用

"仕事だけが生きがいだったアラフォーチャンシルさんの人生に、突然のエンディングロール?!ずっとプロデューサーとして支えてきた映画監督が、打ち上げ宴会中に心臓発作で急死。これを機に失職して、何もかも失ってしまったチャンシルさん。映画だけに捧げてきた人生、気がつけば男も子供も家もなし、もちろん青春なんていまいずこ。そんな八方塞がり、アラフォー女子のチャンシルさんに、ある日突然、思わぬ恋の予感が・・・。"

2019 Copyright © KIM Cho-hee All RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms

■豪華俳優陣で彩る、豪華じゃない日々のはなし

ヒロインのチャンシルさんが仕事を失い同居するようになった大家さんや、何の説明もなく飄々と姿を現すランニング姿の男、韓国映画・ドラマ通なら必ず知っている顔ぶれ(アカデミー賞助演女優賞を獲っている大御所!)が、驚くほど派手さを欠いた日々の営みをそうっと支えながら話が展開していきます。まるで、座りながら眠ってしまったときにそっと肩を貸してくれるような、そんな支え方。どの人も、対人関係で暴力的でなく、引きずり出したり、引きずり込んだり、しようとしない磁力の人たち。ヒロインのチャンシルさんと大家さんとのシーンが、母親でもない他人の上の世代の女性との利他的関係ができていて、ぐっと印象に残ります

■「好きなことを見つけてそれをやっていく」成長と自立ストーリー?

アラフォー女性の自立と成長ストーリー、と言うのは簡単で、でも、それってこんな描き方があるんだとハッとさせられます。
「好きなことをやる」それはSNSや友達にキラキラと輝きながら宣言することでもなく、小さく芽吹いた花をそうっと守るように、そのとき花を見て嬉しくなり、周囲と季節を見渡して静かにほうっと笑顔になるような、そういうことなのかもしれない、そんなことを思いました。そして、春の芽吹きの季節のぬくもりが伝わってくるような、等身大のお姉ちゃんの生きる姿に勇気づけられ抱きしめられたようなそんな余韻が残る映画でした。

■視聴方法

一年前、2021年1月に公開された映画ですが、今回私はAmazon Prime Videoでレンタルして見ました。睡眠不足ではなくて、派手な映画やドラマも気分ではなくて、リアルに人と最近話してないなと思うあなたにおすすめします。


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