見出し画像

三姉妹をつなぐ家族の火鍋|『花椒の味』

11/5公開の香港映画『花椒(ホアジャオ)の味』を観に行きました。劇場で予告編を観てから、公開をずっと楽しみにしていました。個人的に、今年のベストに入れたいなぁと思うほど、心地のよい作品でした!

画像1

主人公ユーシューは、香港で火鍋店を営む父の急死をきっかけに、台北と重慶に2人の異母姉妹がいることを知る。お互いの存在を知らず育った三姉妹は見えない絆に惹かれあいながらも、それぞれ微妙な家族関係の中で生きる自身の葛藤と向き合っていく。一方、火鍋店の経営を契約満期まで全うすることを決めたユーシューもまた、常連客が愛した父の味の再現に苦闘する中で、これまで背を向けてきた父親の素顔を見つめ直す――。

香港のトップスター、サミー・チェンが主演で、アンディ・ラウなど脇を固める俳優陣も豪華な作品です。アジアの女性監督のパイオニアとして知られる香港映画を代表するアン・ホイがプロデューサーを務め、監督は新鋭のヘイワード・マックさんが抜擢されています。

画像9

父の死をきっかけに自分に姉妹がいることを初めて知った三姉妹。最初こそ戸惑う表情を見せるものの、すぐに打ち解けて仲良くなる姿がとても良かったです。
70年代、80年代、90年代生まれの三姉妹。住む場所も仕事も性格も異なる彼女たちだけど、彼女たちは「父親を奪った別の家族」と憎しみ合うのではなく、一緒に思い出を語ることで、それぞれが胸に抱えていた、家族や将来、パートナーとのわだかまりを少しずつ溶かしていきます。


主人公ユーシューは、母と自分を傷つけた父と疎遠になっていました。火鍋店の賃貸契約が残っていることから、お店を続けることを決めます。秘伝のスープを再現する中で、父の素顔を見つめ直していくのです。
演じるサミー・チェンは華やかの塊のような人なので、本作での抑えた演技はもちろん、途中で描かれるコミカルなシーンはさすがだったし、父に向けたラストのセリフは涙なしには観れなかったです。

画像6

次女ルージーは、プロのビリヤードの選手でハンサムな佇まい。黒ジャケットを着こなす服装もかっこいい!彼女は母親と上手くいっておらず、「遊び」と言われてしまうビリヤードを続けていくべきか悩んでいる。
演じるのは台湾のメーガン・ライ。ボーイッシュな雰囲気が本当に素敵で、クールに見えるけど、実は弱さも抱えている一面も愛らしい。特に詳細は語られませんが、女性ファンが多くおり、同性パートナーがいたような描写もあり、とっても好きなキャラクターです。

画像3

三女ルーグオは、オレンジ色の髪が可愛い元気な子。ネットでアパレルショップを運営しており、ファッションもアクセサリーも可愛い!三姉妹が揃ったときもたくさん写真を撮ってて可愛いです!
母親はカナダにおり(親に見捨てられたというセリフもあり)祖母と二人暮らし。自分は充実しているのに、祖母はなんとか孫を結婚させようとして、その度に不穏な空気が漂ってしまいます。

画像4

▼▼『花椒(ホアジャオ)の味』に出てくるごはん▼▼

父の火鍋店「一家火鍋」の麻辣火鍋
火鍋は、モンゴル近くの中国地域で作られた料理が中国全土に広まったと言われています。中国・香港・台湾などの映画を観ていると火鍋はよく出てくる料理。
本作に出てくる火鍋は、赤山椒や青山椒などを使った麻辣火鍋。お客さんの注文の中に「鴨血(アヒルの血を固めたもの)」があった気がして、ぜひ食べてみたいと思いました!

画像9

亡き父の後、店を続ける決断をしたユーシューですが、父は火鍋のスープのレシピを残しておらず、手伝いに来た妹たちと試行錯誤して秘伝のスープを再現しようとします。劇中では大鍋でたくさんの香料を炒めたり、豚骨スープを作るシーンが出てきます。
秘伝のスープが再現できないと困っていたとき、父が一番愛した人を通して、隠し味が何か知ることになります。ぜひ本編でご確認ください!

画像9

パンフレットを読むと、火鍋のスープを撮影するときは全て本物のスープが用意されたそう。現場には火鍋のスープの匂いが充満していたらしいです!

きくらげのスープ
本作の主人公な料理は火鍋ですが、三女ルーグオが祖母にきくらげのスープを作ってあげていたのでメモです。スープを入れるお椀の形が可愛かった記憶があります。もう一回観たい…。

画像9

最後に
本作に出てくる人々は大事なことを話そうとしません。「心で思っていることと違うことを言ってしまう」「言わなくても分かってくれるはず」と、すれ違ってしまう不器用な人たち。でも、ちゃんと話さないと家族でも伝わらないんですよね。
一つの円卓で火鍋を囲む姿は「家庭円満」の象徴とも言われているそう。みんなでわいわい鍋を囲んで会話をすることは、本当に大切な時間なのかもしれません。

「継承」で終わらせない、本作のラストもとても好きでした。彼女たちだけではなく、登場するキャラクターたちみんなが「自分が必要とされる場所ではなく、自分が必要とする」新しい道を進んで行くのです。

画像8


▼あとがき
サミー・チェンとアンディ・ラウが共演している『名探偵ゴッド・アイ』という作品があります。アンディ・ラウがとにかくひたすら何かを食べているかなりのごはん映画なので、ぜひ本作と一緒に鑑賞してみてください!(監督はわたしが大好きなジョニー・トーです)

三姉妹のごはん映画といえば、アン・リー監督の『恋人たちの食卓』も素晴らしい作品!


▼監督インタビュー

(C)2019 Dadi Century (Tianjin) Co., Ltd. Beijing Lajin Film Co., Ltd. Emperor Film Production Company Limited Shanghai Yeah! Media Co., Ltd. All Rights Reserved.

いただいたサポートは、次のごはん映画記事を作成するための映画鑑賞、資料あつめ、ごはん映画リスト作成などの資金にさせていただきます!!