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「英語独習法」に98%共感

岩波新書の「英語独習法」の売れ行きが好調だそうです。著者は認知科学、言語心理学、発達心理学が専門の大学教授ですが、「我が意を得たり」という内容でした。

英語学習(特にヒアリングとスピーキング)を試行錯誤しつつ左右の壁にぶつかりながら、なんとかビジネスで使えるようになりましたが、その独自のアプローチを大学の先生に裏書きしてもらったような気持ちです。

詳細は本書に譲るとして、著者の言う
○多聴では伸びないリスニングの力
○スピーキングとライティングの力をつける
などなど、うんうんと頷きながら読み終えました。

特に共感したのが、「大人になってからでも遅すぎない」という章です。

著者は「読む」「聴く」「話す」「書く」の4技能をバランスよく育てるということが学習指導要領に明記されたことに疑問を呈します。英語力に4つの要素が必要であることには異論はないとしつつも、最初から4つの要素の同じだけ時間を使うというのは、学習の認知過程の観点からはじつは合理的でない、とします。

その通りだと思います。独自流にやってきて道草をくってきた気がします。

たまに「英語を聞いていると突然聞こえるようになる」ということを聞きます。確かにそのような人もいましたが、よほどの語学の達人に起きることであって、英語学習は地道な積み重ねだと思います。
リスニングが一番難渋しましたが、「聞こえる」ためには、「話せる」ことが必要であり、「話せる」ためには「書ける」ことが、「書ける」ためには「読む」ことが必要だと思います。リスニングのためにはシャドウイングが効果的です。ただ、話している内容の背景を知らないと、次に現れてくるフレーズを「予測」できないので、日本のニュースの英語版などが適していると思います。

4つの要素をバランスよく、ではなく、中学からの英語学習で「読み」「書き」が出来ている日本人がヒアリング力を身につける最短ルートはシャドウイングだと思っています。

幼児期に海外で過ごして英語で会話していても、帰国すると忘れてしまうのもその通りです。幼児期の英語はPlay ground English、つまり「学校の校庭の英語」ですから、聞いたり話したりすることは出来ても、語彙や文法を学んだものではないため、英語環境から離れると途端に忘れてしまいます。
幼児期の英語を維持するには、帰国してからも英語の本を読むとか、英語の本のCDブックを聞くとか、何らかのことをしないとヒアリング力は維持できません。
スピーキングを維持するには、話す場面を作るしかありませんが、子女が話す場面はなかなかありません。英会話学校に入れても、先生である米国人や英国人の大人との会話がかみ合わず、無駄だったことがありました。

きっちり日本語を学んだ上で、中学とかから海外に行くと、英語の文法も学び方も分かり、英語力は格段に向上すると思います。

若いころから海外で英語学習する機会に恵まれるならいいのですが、大抵の人はそうではないと思います。でも、著者が言うように大人になってからで大丈夫です。相当苦労し、恥もかきますが、大人の耳でも聞こえるようになりますし、もちろん話せるようになります。

大人になってから英語どっぷりの生活になると、そのうち日本語の語彙力が衰え、日本語の言い回しが出づらくなるようになります。ほら、あれ、日本語でなんて言うんだっけ、とか。使わなくなると英語だけでなく日本語も退化していく、語学とはそのようなものだと思います。

日本に戻り、日本語どっぷりの生活になっても、海外出張して英語を使っていた場面になると、自然に英語モードのスイッチが入ります。レストランとかホテルとか。不思議なものですが、方言のようなものなのでしょう。私は普段は標準語を使っていますが、出身地に戻ると自然と方言になります。それと同じなのでしょう。

著者に100%共感していないのは、下記の箇所です。
「私が知る限りでは、英語を母国語や公用語としない国の中で、世界でもっとも国民の英語能力が高い国はフィンランドである」

私が知り限りでは、スウェーデンだと思います。オランダ人も英語能力が高いです。多言語としてはルクセンブルク人がもっとも能力が高いです。
知人のルクセンブルク人は、ルクセンブルク語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語を自在に使っていました。

彼らはとにかくプラクティス重視でした。実践、実践、実践。文法が無茶苦茶でも、話す、話す、話す。言いたいことは十分に伝わり、コミュニケーションが出来ていました。

著者に2%共感してないのはこの箇所ですが、まあこれは冗談にしても、著者が述べる英語学習法は実体験からしても合理的だと思いました。


「英語独習法 今井むつみ著 岩波新書」から引用しました。



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