「物語の蝶の羽ばたきは向かいの書棚で竜巻を起こすか」

曖昧書房さまの同人誌『扉』に寄稿いたしました作品です。 初出：第三回文学フリマ京都（2019/01/20）

ショート漫画「龍淵に潜む」

「揺蕩う波すら整列する夜に眠れ」

この作品は日本SF作家クラブの小さなマンガコンテストの共通描き出しから創作したものです。

「蝕熱」

木曜荘さまの詞華集『蕾』に寄稿いたしました漫画です

「この世界の私と（略）ぼくが同一であると仮定すること」

この作品は日本SF作家クラブの小さなマンガコンテストの共通描き出しから創作したものです。 　　　＊ FANBOXにおまけ（ちょっとだけ解説）。全体公開記事です。 「日本SF作家クラブの小さなマンガコンテスト」最終選考候補作としてコメントいただきありがとうございました。

「可能性の方舟」

輝井堂さまの同人誌『未昔雑誌2019』に寄稿いたしました作品です。 初出：第二十九回文学フリマ東京（2019/11/24） ↓デジタルで編集前の原画(pixivFANBOX) https://madoimeguru.fanbox.cc/posts/2768848

神への長い道とゼノンのパラドックス

絵を描いていて最近思っていること 小松左京は「神への長い道」という短編が一番好きです。宇宙は神（絵師）の卵。なるほど。

インスタ

始めてみました https://www.instagram.com/madoimeguru/

漫画「図書館の司書と虫」

譜蝶拍

書林に譜蝶舞い簡を編み、森羅に詩を題して紅塵を掃う。 清代の文士彭㝡の語るところでは、大規模な書庫において書物は互いに干渉しあうという。ある棚の一冊での蝶の羽ばたきが、遠く離れた棚の一冊で竜巻を起こすというように。これは彭㝡の遺作『环形书库』に記されたものであるが、現代でも文字情報における非局所性の例としてたびたび言及される。 Cartaphilus, M. (2182). Does the flap of a butterfly’s wings in a storyboo

謄写廻廊

昨年施行された純然子質量保存法ではカウンターパーツの所有は一個人につき100体までと定められている。 純然子(absoluton)は有機体の霊魂を構成する基本粒子であるが、密度効果による相変異を生じることが明らかとなった。2179年の例ではシリンクス社のCP養育施設において約6000立方マイルのシェルターに2213体*を収容していたところ、収容者と職員に生殖機能の低下や人格・嗜好の変化などが表れたという。 *受精卵・胚状態のものは含まず、胎児以降の者のみの収容者数。極めて過

食言樹

賢者の海南西部に自生する食言樹はその名の通り言葉を食う樹である。 言葉を食う──つまり近づいた者の言語中枢を侵食し廃人にする──この樹の生態については未だ研究が進んでおらず解明されていない部分が多い。そばに来た研究者を捕食してしまうためだ。知識という甘い好餌を罠に。 近隣コロニー住民からは不法廃棄された粘菌コンピュータが独自の進化を遂げたものではないかとまことしやかに囁かれている。 Cartaphilus, M. (2184).Verbivorous tree in Mar

格子時空論

古代よりケルト人は宇宙を格子柄と考えてきた。 タータンにおける経糸は時間を、緯糸は空間を表しており、これにより世界面は常に矩形に形成される。中世スコットランドでは氏族の紛争が絶えず、その争点は各々のクラン・タータンで表される宇宙の在り方であったという。 また、ミンコフスキーがキルトの腰から裾へ広がる形状から光円錐を提唱したことは読者諸氏もよく知るところであろう。 Cartaphilus, M. (2183). The theory of plaid spacetime. A

彼女が死んだ話

　彼女は僕の部屋で死んでたんだ。クローゼットのなか僕の洋服たちと一緒に並んでた。首にぐるぐる巻きつけた針金ハンガーで吊られてた。 　一体どういうつもりなんだ？　僕の部屋で勝手に死ぬなんて、非常識にもほどがあるだろう。いつだって君は自分ばかりで人の迷惑なんて考えちゃいないんだ。 　わかってるよ。僕への当てつけなんだろう？　君は僕を困らせることしかしないんだから。最近かまってやれなくて悪かったよ。 　でも、死ぬことなんてないだろ。 　僕は急いで彼女を下ろした。パイプに絡んだ針金

手紙

　　前略失礼いたします 　　貴方とお顔を合わせては　どうしてもうまくお話しできないので 　　お手紙を差し上げました　その後お身体の調子は如何でしょうか 　　近頃はお月様の動きも頓に甚だしくなりまして　 　　貴方の太陰機巧が心配でなりません 　　こちらは大丈夫です　どうかお気になさらず 　　いまの貴方には双星文字を追うことのさぞやお辛いことと存じますので 　　今朝も神酒の海を思い返しては　お庭に水碧砂を引きました 　　夢想を厭うて止まない貴方はきっとお笑いになるでしょうね 　

「ト音記号殺し」

【第一発見者の証言　遺体発見時の状況について】 　……あれはお嬢様が譜面を開かれる五分程前だったでしょうか。僕はいつもの場所で待機してました。ええ、そうです。僕はシューベルトのアヴェ・マリアの最初のヘ音記号ですから、一番上の大譜表の左端の下段に。われわれは人間の前では動けませんから、余裕を持った出勤は当然でしょう？　……一部の例外はいますが。それはさておき、突如、頭に重い衝撃を感じました。僕の額に《何か》が当たったんです。ぼん、と鈍い音がしました。 　最初はト音記号の奴がぶ