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インドネシア関連のおすすめ本

インドネシアにこれから駐在する人、留学する人、あるいはインドネシアに興味がある人向けに、お勧めしたい本を10冊ご紹介します。


第1位:ブル島4部作 プラムディヤ・アナンタ・トゥール著

もうこれは断トツの1位です。6冊ですがセットで1冊にカウントします。
『人間の大地(上・下)』『すべての民族の子(上・下)』『足跡』『ガラスの家』めこん出版

まず人間の大地から読み進めていったのですが、正直圧倒されました。オランダ植民地時代の歴史とシンクロしながら主人公の成長・挫折が描かれており、物語のスケール感が半端ないです。
ロシアの文学作品を読んでいるような感覚に陥り、日本人の作家や作品ではあまり感じないスケールです。
その時インドネシアに住んでいて、インドネシアの歴史もある程度知っていて、各地の風景や空気感が思い浮かぶ状態だったのも大きいかもしれません。

本を読みなれない人だと量に圧倒されるかもしれませんが、ストーリーに引きずり込まれていきます。

作者が政治犯としてブル島に収容されていたときに記憶だけを頼りに書かれた(最少は囚人に対し語られた)というのもすごいです。

最初から順番に読んでいってください。ガラスの家は最後に。

第2位:神鷲(ガルーダ)商人 深田祐介著

インドネシア入門にもってこいの本を2位にしました。
この本は実在のモデルがいて、日本の戦後賠償ビジネスに関与した政商ともいえる人です。
2019年にお亡くなりになられたときのジャカルタ新聞の記事です。

デヴィ夫人をスカルノ大統領に紹介するエピソードも出てきますし、サリナデパートの建設など、ジャカルタに住むと小説の話とリンクするので、さらに楽しみ方が増えます。

これは文庫本になっていて読みやすいので非常にお勧めです。
無茶苦茶おもしろい本です。
深田さんは他にも「炎熱商人」や堀ちえみ主演のドラマ「スチュワーデス物語」も書いている作家です。

第3位:鏡のなかの「豊かさ」―援助する国される国 飯田経夫著

1988年の著作ですでに絶版になっていますが、中古本で手に入るので是非ともお読みいただきたい本です。
1970年代にジャカルタに赴任し、国家開発企画庁(Bappenas)に勤務した経済学者が、援助する側として感じた矛盾について、草の根レベルからリアルに記載した本。

南北問題の解決策として、先進国からの援助が行われていますが、50年たってもいまだに同じ問題を抱えていると感じます。
インドネシアに限らず、途上国=援助される国に行かれる方は、お読みいただけると世の中が違って見えるようになること請け合いです。

先進国の人間は援助する側の視点しか持っていなかったんだなと気づくことはとても重要なことと私は思います。
途上国に関係する少しでも多くの日本人に読んでほしい本です。
非常に読みやすい文体で書かれています。

第4位:オランダ東インド会社 永積昭著

インドネシアの歴史に大きな影響を与えただけでなく、軍事や外交まで備えた特殊な会社形態という点でも興味深いです。
学術文庫といいながら、どちらかといえばコンパクトにまとまった歴史書なので、ざっくりと情報を得るという点で優れた書籍。

お勧めできます。この教授には他にもインドネシアや東南アジアの著作が数多くあります。奥様は東大初の女性教授です。

第5位:インドネシア大虐殺 倉沢愛子著

題名は非常に恐ろしく、また読んでいて気が滅入る箇所もあるが、インドネシアの歴史を知る上で欠くことができない事件を、その前後の歴史的背景、世界情勢も含め丹念に記録した良書。

スカルノからスハルトに権力が移る過程で激しい権力闘争が行われ、200万人を超える人々が殺されたり獄死していると言われています。

あの温厚で優しいインドネシア人がなぜこんなことをするのか不思議でならず、私が駐在していた時もまことしやかに、「アモック現象(おとなしい人が急にプッツンと切れて怒りを制御できなくなるマレー系特有の現象)」がなせるわざで、何十年かに一度暴動が起きると言われていました。

この本を読めば、当時の情勢から決してアモックだけではない背景、またスハルト失脚後まで網羅されており、記録として残したいという著者の執念を感じます。

第6位:インドネシア民族主義の源流 イワ・クスマ・スマントリ自伝 後藤乾一訳

正直これはどうしようか迷いました。専門書ではあるし、他にも専門書のジャンルであればよい本があるし。。
この本にしたのは、自伝を通じてインドネシアの独立運動の歴史を知ることができるからです。
当然個人の見解そのものなのでバイアスは入るけれども、その人が後世に残したいと感じた熱や気持ちがある分、学者が書いた評論や学術書にはない面白さがあります。

私は歴史好きで、かつ歴史をなるべく生の情報として得たいタイプなので、少し好みに偏りがあるかもしれません。歴史書として読んでもらうのがよいと思います。

少し歯ごたえがあるかもしれません。

第7位:アドゥー サバ―ル プルダニア 実録インドネシア日系合弁銀行の50年 NNA取材班著

NNA(ニュースネットアジア)というアジア専門の報道機関が出版している本です。
2008年にプルダニア銀行が創業50周年を迎え、ホテルでパーティーが開催されたときに、私もお呼ばれし、その時にこの書籍をいただきました。

日本人として、一企業人として、このような銀行が存在することに誇りを覚えましたし、心から尊敬できる銀行です。
本に書かれているから美談を集めてきたと思われるかもしれませんが、本当に素晴らしい銀行です。私は駐在時代にこの銀行とはお付き合いがあり、当時の他の日系銀行とは1線を画した現地に根付いた経営スタイルでした。

歴代のバンカーたちの熱、とてつもない壁が現れ必死で乗り越えていったストーリーには手に汗を握ります。
当時いろいろな人に推薦して回った記憶がある本です。

決して見くびっていたわけではないですが、NNAの記者は文章力あるなと思いました。私も「この人と60分」という連載記事で2006年にNNAの取材を受けたことがあります。

第8位:ジャワ人の思考様式 マルバングン・ハルジョウィロゴ著

インドネシア最大の人口を誇るジャワ人の気質について、ジャワ人の筆者が自ら語るという本。
一般的に文化論や民族論は、外部の人間が外部の目やベンチマークを使って比較論的に書くことが多く、実はそっちの方が外国人の頭に入りやすい面を持っていると私は思っています。
我々が理解しやすいフレームワークに無意識にはめ込んでしまいがちです。

その意味では、本書はジャワ人が自らのことを書いているため、日本人には頭に入りにくいところがあったり、そもそもジャワ人が子供のころから常識的に知っているような話や言葉、書物が急に出てくるので、読みにくいところはあるかもしれません。

ただ、ジャワ人はこんな民族だと一般的に言われていることを鵜呑みにするのではなく、別の視点で理解するメリットは少なくないため、リストに入れました。

第9位:コーラン(上・中・下) 井筒俊彦著

自分で挫折した本を入れるのはどうかと思いましたが、入れました。
イスラム教を理解するには避けて通れない本です。
ただ、読み続けるのはつらい。
入門書的な本でごまかしたこともありますが、心のどこかで、正しい理解ができていないという納得のなさがあり、いつかはこの本を最後まで読み切るぞと思っています。

第10位:ニューギニア高地人 本多勝一著

イリアンジャヤ州の話ですが、一応インドネシア領ですので、インドネシア関連本に入れてしまいました。
1971年の本です。私が生まれた年でもあります。

この人は学者ではなくジャーナリストのはずなんですが、本職の文化人類学者かのようなフィールドワークと観察ぶりに驚かされます。
本の内容は最高におもしろいです。

ジャカルタの日本人ご用達の古本屋で偶然見つけて読みました。他にもいい本がたくさん売られていました。
ジャカルタ駐在員の本への造詣や学識の高さには感心した覚えがあります。本当に読んでいる本のセンスがいいんですよね。

レヴィ・ストロースの「悲しき熱帯」ほどの学術的な深さや社会的インパクトはないにせよ、未開社会についての記録は非常に興味深いものがあります。

おわり




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