須田真梅

スダマウメ|主に恋愛小説です。最新作は固定に。

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小説 「再願」

あらすじ 一つだけ願いが叶う世界。発願免許を取ったばかりの私は事故現場に遭遇する。被害者は高校時代に恋焦がれた先生だった。 ご了承のお願い 本文中に性的描写(成人向け)があります。 スパムなど防止のため、大変心苦しいのですがコメントは内容を問わず全て削除させていただきます。 再願 今日は、四月二十二日です。 ついに発願免許を取りました。 もし配信者だったらここでスマホを構えているところだろう。 親指と人差し指で挟み、光溢れる窓に掲げたのは名刺サイズのカード。ツル

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    • 400字ショートショート「月のフルーツパーラー」

      下弦の月は角度によっては器になる。久しぶりの宇宙旅行で降り立った星には、その器を利用したフルーツパーラーがあった。 「一人ですけど入れますか」 シニヨンの店員さんは眉尻を下げる。 「今日は既にお待ちのお客様がいらっしゃいますので」 「相席ならいいですよ」 ソファーを立った彼はスーツの似合う上品な人だった。 「いかがですか」 微笑まれて頷く私。 テーブルにつくと二人で果物盛り合わせを注文した。底が綺麗にカーブした薄い月が運ばれてくる。上には赤や緑、黄色の果実。特にマンゴーはとろ

      • 400字ショートショート「芽吹き弾く人」

        まえがき たらはかに(田原にか)さんが毎週ショートショートの投稿イベントを開催されています。日曜日にお題が発表され、土曜日が締め切りだそうです。 今回は「春ギター」というテーマで募集されています。 なお、「【共同イベント】アコギと歌と詩の祭典『春とギター』」というPJさん、にゃんくしーさん開催のイベントとのコラボだそうです。 素敵なイベントの開催ありがとうございます。ショートショートとして参加させていただきます。4/30追記:作品は以下のマガジンにまとめてあります。

        • 韓国映画で聞く「みんな泥棒です」を穴埋めで説明してみる

          「みんな泥棒です」との出会い 韓国映画で「みんな泥棒です」という日本語を聞くことがあり、ずっと気になっている。吹き替え版に切り替わったと思ったが、字幕でも「みんな泥棒です」と出ており最初は混乱した。 この台詞が登場する映画を二作紹介しよう。 「監視者たち」2013年公開 警察内の監視専門チームと犯罪グループの攻防を描いた良作。香港映画「天使の眼、野獣の街」リメイク作品。 ソル・ギョングが皮肉も言うが頼れるリーダーを演じており渋い。ハン・ヒョジュの新米感、仕事に熱が入ってい

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        小説 「再願」

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        • 400字ショートショート
          10本
        • 小説
          4本
          ¥400

        記事

          画像削除のお詫び

          画像を使ってくださった方へ 「みんなのフォトギャラリー」に上が水面の写真、下が白単色で境目が波状の画像(水面画像とします)を投稿していました。また、白単色背景にCONTENTSと文字入れした画像(コンテンツ画像とします)も投稿していました。画像を使っていただいてありがとうございます。 水面画像はUnsplashの画像を使用して加工したものですが、Unsplash規約上の「大幅な加工」に該当するか、再配布に該当するかの二点を判断しかねたことから安全のために削除いたしました。

          画像削除のお詫び

          400字ショートショート「夕焼け当番」

          前書き 「我ら朝を撃つ」のアナザーストーリーです。この話だけ読んでも大丈夫かと思います。 夕焼け当番 眠るエマ。雪の肌に淡い薔薇の唇。彼女が起きるまで、僕はずっと手を握っている。 僕らは十五で出会った。それ以来ずっと一緒にいる。 ここは、夜を拒む町だ。暗闇を遠ざける方法は沈みゆく夕日にロープを引っ掛けて繋いでおくというもの。それでも太陽が隙を見て逃げることもある。その時は家じゅうの明かりを灯して偽物の昼を作るんだ。 「ねえクラウス、明日私が当番なんだ」 「太陽のロー

          400字ショートショート「夕焼け当番」

          400字ショートショート「金曜夜のオレンジバウム」

          週末に行くカフェがある。きっちりとベストを着込んだ男の人がやっているお店だ。 コーヒーは酸味控えめで接客はあっさり。スマートでとりつくしまがないと思っていた彼はよく見ると潤んでいるような、色っぽい目をしている。 この人は自分の魅力を知っているのだろうか。私はいつも、コーヒーを淹れるその横顔を盗み見ている。 ぽつり、ぽつり、雨粒のように次第に溜まり溢れ出す興味。そしてある日思い立った。たまには金曜の帰りに行ってみよう。 「珍しいですね」 え、と顔を上げた私に彼は笑いかける。

          400字ショートショート「金曜夜のオレンジバウム」

          400字ショートショート「オリオンに恋した乙女」

          宇宙には網が吊るしてあるのをご存知ですか。細い細い銀の糸で編んだものゆえ、そちらからは見えないでしょう。私はその網にもたれかかって、昼夜問わず竪琴を弾いています。 詳しくは思い出せないのですが、前世では不幸せだったらしいのです。それを憐れんだ神様が私のなきがらを掲げて星座に変えてくれたんですって。通りすがりの彗星さんから聞きました。数百年も前にね。 「あの子、やっぱり美人。クレーターの配置がいいわ」 ここは退屈です。楽しませてくれるのは、決まった軌道を回ってくる衛星さんくらい

          400字ショートショート「オリオンに恋した乙女」

          400字ショートショート「我ら朝を撃つ」

          夜通し起きておく。そうして午前七時頃、太陽が細い光を放ったらすかさず撃つんだ。煉瓦の街へ朝が溢れる前に。 ダァン。手首に来る衝撃。 「ほら、今日も一発だった」 太陽を撃てば再び闇が来る。未来永劫夜を保つこと、これが私達の仕事。得られるものは夜明けに配られる悲しいニュースのない、安心の世界だ。 「ミア、この後は帰るの?」 同い年のリュカとはシフトも一緒。愛用のフードを被ると、彼は私を食事に誘った。 「カツレツがおいしい店。どう?」 「行く」 夜営用に買った膝掛けをショール代わ

          400字ショートショート「我ら朝を撃つ」

          400字ショートショート「泡の一生」

          前書き ずっと行きたかった喫茶店で念願のゼリーポンチを食べることができました。 写真をあまり撮っていないことが唯一の心残り。短いお話にして記憶に留めておこうと思います。 泡の一生 ソーダの中に住んでいる。生まれた時に一緒だった友達はもういない。みんなどこかへ旅立ってしまった。 「お待たせしました」 「ありがとうございます」 初めてあなたを見たのは青い照明の下。私は銀のお皿の、そのまた上に置かれたグラスにいた。見回せば赤や緑、黄色や青。私がなるべく消えてしまわないように

          400字ショートショート「泡の一生」

          400字ショートショート「十年後のハマナス」

          noteさん10周年おめでとうございます! 感謝を込めてショートショートを書きました。 noteは私にとっては「いつか物語を書きたい」という夢が叶った有り難い場所です。青緑の綺麗な色のボタンもいいですね(デレデレ) それでは一話どうぞ。 十年後のハマナス ここらの草原は夏でも黄色っぽいのね。普通、夏草は青々してるもんだけど。 いつだったか通りかかった旅団がそう言っていた。 ここは国境近くの高地。厳しい管理も及ばない、銃の代わりに芸術を愛する町だ。 ある年の四月、一人の兵

          400字ショートショート「十年後のハマナス」

          400字ショートショート「天気の目次」

          二階には私専用の本棚がある。リスのブックエンドに挟まれた、大好きな恋愛小説を入れておく場所。そこからシェイクスピアの本を全部取り出すと、とっておきの一冊が現れる。空模様を操れる魔法の本だ。 あまり使う機会がなかったそれを取り出してみる土曜日の朝。きっかけは大切な親友からの電話だった。 「どうしよう。初デートなのに雨みたい……」 彼女の長い片想いを私は知っている。絶対成功してほしくて開いたのは晴れの章。ページをめくった瞬間、雨雲は素早く街を去っていった。 「すごく楽しかった。

          400字ショートショート「天気の目次」

          400字ショートショート「人魚のコレクション」

          いつからかハンカチを集めている。人間が海に落としていったもの。 手に入れても使うことはない。濡れても拭うだけだ、私達は人魚なのだから。 そのハンカチを拾ったのは春待ち時だった。まだ冷たい水を吸って吐いて、水面下を遊泳する私。尾に銀の小魚がまとわりついて、くすぐったい。 ぽちゃんと音がして、見上げたら紺色のハンカチが浮かんでいた。持ち主はどんな人だろう。見えたのは船上の後ろ姿だけ。かっこいい気がする。優しそうな気がする。 私、あの人がいい。 彼を一目見たい私は計画を立てた。

          400字ショートショート「人魚のコレクション」

          謎のサクサクを食べに行く

          私の休みは平日にある。つまり、土日は味わえない平日限定ランチに行くことが可能だ。 今日はタスクを気にしなくていい、そんな開放感に満ち満ちて通りを歩くお昼前。本当は考えなくてはならないことも、タスクをこなすための下準備も溜めた家事もするべきなのだけど、目をそらしたい。 辿り着いたのは繁華街の北端にある落ち着いたテナント群。地中海風の外観が並ぶ中でガラス・木・金属・ゴツゴツ岩と様々な質感をMIXしたのが中華料理店C(仮名)の入っているビルだ。中に入るとグレーがかった味のある木材

          謎のサクサクを食べに行く

          何がなんでも水に濡れたくないから

          家事が嫌いだ。間違えた、家事が大嫌いだ。好きなところは何一つとしてない。好きの反対は無関心と言うが、家事の場合は別。だ・い・き・ら・い・だ。 原因を考えてみよう。水に濡れるのが嫌なのだ、おそらく。料理をするにも手を洗わないといけない。洗いすぎは肌が傷むし、隅々まで拭くのもめんどくさい。そもそも手を拭くタオルを用意するためにも「洗濯して干す」というプロセスが必要になる。 こんな自分なので当然流しには常に食器が溜まっている。洗濯機は回したものの、干さずに放置して寝るなんてことも

          何がなんでも水に濡れたくないから

          雨の日に聴きたい曲

          “Just the Two of Us”との出会いはラジオだった。 グローヴァー・ワシントン・ジュニア & ビル・ウィザースという片仮名で書くとかなり長いクレジットに「クリスタルの恋人たち」という洒落た邦題がついている。 そんな前情報なしにいきなり耳に入ってきたのだ、あの可愛らしいイントロが。 英語が不得意な私でもサビの「二人で空にデカい城築こうぜ!」は分かった。絶望的な状況の恋人達がそれでも明るい未来を夢見ている。切ない設定が脳内でムクムクと膨らんでなんともセンチメンタル

          雨の日に聴きたい曲