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読書感想『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成〈S〉(前編)』※ネタバレ注意

新年あけましておめでとうございます。
一月はアマプラに物語シリーズが入ったということもあり、バルダーズゲートや最近再び熱の入ったモンハンワールドと並行して楽しんでます。

というわけで新年最初の読書は『ぼくの、マシン ゼロ年代日本SFベスト集成〈S〉』の前半五編でした。

序で言われている「2から始まる年号って、数字の並びだけでDFだよね。」という庵野監督の言葉は2000年以降生まれの自分にはわからない感覚でした。自分だと2077とかそんな感じなんですかね???

というわけで一編ずつ少量の感想を書いていきたいと思います。


大風呂敷と蜘蛛の糸 野尻抱助

今作はそらに向かって日夜研究を続けている人々の姿を現実感と共に等身大のまま描いた青春群像劇でした。
果てしない目標に向かっていろいろ知恵を絞りながら考えるというのは楽しいんだろうなぁと憧れます。
今作は実際にモデルがいらっしゃるということで、このような人たちこそが将来人を宇宙に連れて行ってくれるのかもしれないと思うと誰か知らない人でも応援したくなります。

蜘蛛ってのは空を飛ぶんですね。宇宙と蜘蛛というとタイプムーン世界のORTを想像してしまいますが、蜘蛛ってのはエイリアンっぽいですよね。


幸せになる箱庭 小川一水

一本目とは打って変わって未知のものや理解を超えたものへの恐怖を感じ背筋にすっと冷汗がながれるような作品でした。

人間は実際に超科学をもった宇宙人が現れた場合にその事実を正面から受け止めきれるのか、といわれるとやはり難しい気がします。
目の前で未来の技術を見せられたり教えられたりして正気でいられるのか。
これもやっぱりなかなか受け入れられないのではないかと思います。

結局人間が信じられるものは自分たちが歩んできた道だけであり、口伝や記録、伝説として語り継いできたものだけなのかも。

自分の人生というのも自分が生きてきたという自負があるからこそ不幸をのり越え、幸せを感じれるのかもと思ってしまいます。

まぁこの世界すらシュミレートされたものだよと言われたら終わりなのがこの手の話の怖いところ。足場が崩れ去る恐怖は耐え難いですね。


鉄仮面をめぐる議論 上遠野浩平

今作はナイトウォッチ三部作の番外編であり、その三作を読んだ自分にとってはメインディッシュといってもいい作品です。

マイロー・スタースクレイパーは『わたしは虚無に月を聴く』にて英雄として出てきた人であり、彼の人格・伝説がどのようにして形成されたのかという話でした。

チビあとがきで今作は『手に入れられない物を望む』というテーマであるらしい。自分は未来より過去の失われたもののほうが興味をそそられる派ではあるのだが、両者やはりベクトルが違うだけで同じものを求めてるんだなぁと改めて実感。

この分量でここまで美しい話を書けてしまう文才に惚れ惚れするばかりです。


嘔吐した宇宙飛行士 田中啓文

申し訳ないのだが、『何を読まされているんだ…』という感情以外のものは読んでいる最中に感じることはなかった……

でもなんだか勢いのままどんどん読めてしまうテンポの良さがあるのでコメディ感も相まって一瞬で読み終わった気がする。

これはサイエンスフィクションというよりスペースファンタジーなのか…?
なんにせよSFというジャンルの懐の広さ(?)を感じました。はい。


五人姉妹 菅浩江

ゲロの話がスペースファンタジーだとしたら、この話こそサイエンスフィクションだなと思いながら読んでました。
宇宙が微塵も関わらないSFにいまだに違和感を感じるくらいのニワカですが、こういうのもいいなぁと考えさせられる作品でした。

クローンとして産まれた人の気持ちなんてものはわかりませんが、実際誰かの代替パーツとして産まれたら普通は気持ち悪かったり怒ったりするんだろうなぁと。怒る対象が訳ありならこの作中のように同情もしちゃうのかもしれませんが。

ただ、この話の肝は彼女クローン達の思いは母親や環境によって醸造された面が大きいという点は大切ですよね。
今の自分が幸せを受け取ることができ、こういう感情に対して距離を取って見れるのは親や親戚などの大人が良い環境を作ってくれた人々に感謝しないといけませんね。


というわけで新年一発目はSFでした。
まだ残り6編残っているので時間をかけて楽しみたいと思います。


それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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