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15歳の娘が男だと言い出した。(11)

(第一話のスーパーマーケットに戻る。)

娘Sが、S奈ちゃんと真剣交際をしていると打ち明けられた私は、
彼女に「牛乳を取ってきて」と頼み、その短い間に、今までの一連の彼女の変化を思い起こしながら、どう反応したらいいのか、迷っていた。

女子だけに囲まれて育った私は、部活でテニスが一番上手だった先輩に、恋に似た感情を持ち、バレンタインデーには「好きです」と書いたメッセージと一緒にチョコレートを手渡しするといった青春時代を過ごした。
自分が上級生になった時、後輩女子から「好きです」と打ち明けられたこともあった。付き合ったこともある。手を繋いだり、ハグをしたり。
だけど、今振り返ると、恋愛のごっこ遊びの延長にすぎなかったと感じている。
女子と付き合ったからといって、レズビアンかと問われれば、違う。
ただ単に、身近に異性がいなかった、それだけだったと思う。

大学も女子しかいなかった。
入学式当日、大学の正門前には他大学の男子学生が列をなし、サークル勧誘と言う名のナンパを初めて経験した。
高校時代テニス部に所属していたこともあり、他大学のテニスサークルに参加するうちに、初めての彼氏もできた。
半年前まで付き合っていた後輩のことなんて、脳裏をよぎりもしなかった。
その彼女とは、卒業後、一度も連絡を取っていない。

高校時代の、あれは、なんだったんだろうか、と今でも思う。
ただ単に、身近に異性がいない環境だった、それだけなのか。
第二次性徴期に男子と女子を分けると、身近な恋愛対象が同姓になることもある、程度のことなのか。
私のあれは、恋愛というより、憧れに近いものだったのかもしれないけれど、
恋愛の時のようにドキドキしたし、好きな先輩を探しては、目で追ったり、恋愛初期の状態と全く同じだったことだけは、今でもはっきり覚えている。

私の高校時代は、当然、LGBTqの概念はなかった。
ここ10年くらい前から、時々聞かれるようになった「LGBT」ワード
Tの後ろにqがついて、qの後ろに+がついて、どんどんなんか増えている気がするけれど、正直それぞれの差を深く理解していない。
LとGとBの性的嗜好に、なんでTが一緒にカテゴライズされるのかもわかんないし、どれにも当てはまらないとされるqの方々をその枠に一緒にするのかも
個人的には理解ができていない。

だけど、今の子供たちは、学校でLGBTq教育氾濫するSNS情報から、
「ああ、私は、◯◯セクシャルなんだ」と勝手にカテゴライズして、同じ仲間と集い、自分が決めた〇〇セクシャルと、それ以外とを区別していることだけは、認識している。

思春期は、正常な異常期。
(台東区の議員、松村智成さんがおっしゃった言葉)
このフレーズが、母親の自分に、ストンと落ちた。
娘に起きている変化は、特別なことではないはず。
私が思春期時代に、経験した状況とさほど差がないのではないか。

そう思えた瞬間、娘が視界に入る。
とってきてほしいと頼んだ牛乳以外にアーモンドを2袋も抱えて。

続く




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