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地頭のいい人(地頭力を鍛える/細谷功)

ネットで検索すれば一瞬で答えが引き出せるようになって久しい昨今、「考える力」が低下している。ネット検索中毒から脱するべく、自らを羽交い絞めしてでも検索をやめて、立ち止まって考える癖をつけなければならない。この考える力を「地頭力」と定義したとき、地頭力強化のための便利なツールが「フェルミ推定」だ。
※ちなみに地頭の良い人にも、記憶力のいい人(物知り)、コミュ力が高く立ち回りの上手い人(芸人)など種類があるが、ここでは問題解決のためのWhyを考えられる人(数学者や棋士)タイプを指す。

フェルミ推定とは、「日本全国に電柱は何本あるか?」といった、答えを知りえない問いを類推する手法であるが、手始めにと書かれたこの問題で私は即、躓いてしまった。
まず日本の面積が必要なことは分かるが、覚えてない。
では東京→大阪間は500kmという知識を元にざっくり計算すればいい…とまでは考えられるが、どう計算していいか分からない。
完璧主義を捨て、いかに柔軟に、そして大胆に考えられるかが鍵だと感じた。

とはいえ、本書はフェルミ推定の問題集ではなく、「なぜフェルミ推定が地頭力の強化に役立つか」「具体的にどんな場面で生きるか」を解説した作品。フェルミ推定が苦手な人にこそおすすめしたい。
以下、要約メモ。

ベースとなる3つの力

地頭力には3つのベースが必要である。まず知的好奇心、その上に論理思考力と直観力。そしてその上にはさらに3つの思考力
①仮説思考力(結論から考える)
②フレームワーク思考力(全体から考える)
③抽象化思考力(単純に考える)
が必要となる。

①仮説思考力(結論から考える)

「日本全国に電柱は何本あるか?」と聞かれ、私はまず自分の家の周りの電柱の数を思い浮かべてしまったが、これは間違っている。できることではなくやるべきことから、始めからではなく終わりから考えることが、解決への最短ルートだ。
それを応用すれば、コミュニケーションも変わる。自分が何を伝えたかではなく、相手に何が伝わったかが重要なのに、大多数の人はそれを忘れている。
(この延長で、人生設計は理想の葬式から逆算せよという節があり、それは流石においおいと思った)

②フレームワーク思考力(全体から考える)

全ての人には思考の癖がある。人は物事を考える時に無意識のうちに絶対座標(誰にでも誤解のないような物の見方。場所を示す時の「北緯何度〜」とか)と、相対座標(当人のみに通用する物の見方。駅から右に曲がって〜とか)をもっていて、これが思考の癖である。相手と同じ座標に立たないと、コミュニケーションは上手くいかない。
ちなみに、プロとは「その道の絶対座標」を持つ人のこと。
すごい人のすごさがわかり、下手な人の下手さもわかるのが絶対座標を理解した達人だ。下手な人には「上手な人がどのくらい上手か」が理解できない。

③抽象化思考力(単純に考える)

物事を考えに考え抜き、つきつめた結果到達した本質、つまり「要するにそれは何なのか?」という質問に対する答えは30秒で説明できる。どうしても説明が複雑になってしまうなら、まだ思考が浅く本質に迫ってないと考えるべきだ。

抽象化思考力のポイントはアナロジー(類推)で考えること。
一般的に人は「自分は特殊である」と思い込む傾向があるが、客観的に見れば特殊なのはほんの一部で、あとは共通化が可能な部分の組み合わせで成り立っていることが多い。まずはこの思い込みを排除し、共通の考え方を探るべきだ。
抽象化能力の高い人は例えが上手い。また、「なぞかけ」は日本伝統のアナロジー能力開発ツールである。ニュートンは「りんご」とかけて「月」と解いた。その心は「地球と引き合っている」。

一方で、「過度の一般化」にも注意が必要だ。人は自分を特殊視しがちな反面、他者を必要以上に一般化することがある。一部の人の特殊な言動を見て「◯◯人はすぐ〜〜する」「XX業界の人は〜〜だ」といった偏見を持ったりしがちだが、事象の持つ性質を正確に見極めて切り分けた上で、共通の部分は共通として取り扱うとともに、相違する部分も正確に把握していく姿勢が大事である。

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