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経営理論と幸福論(イノベーション・オブ・ライフ/クレイトン・M・クリステン)

ハーバードビジネススクールの看板教授である著者が、優良企業におけるイノベーションの事例と経営理論を交えながら
・良いキャリアを選択する方法
・家族や友人と良い人間関係を築く方法
・誠実な人生を送る方法
について「考え方」を示した本。

一見何の関係もない経営理論を、抽象的になりがちな「幸せな人生」のHow Toに落とし込んだ珍しい作品だった。著者が熱心なクリスチャンなうえ、子育て系のHow Toがわりとよく登場するので、独身無神論者の私には「?」な箇所もいくつかあったが、以下記録メモ。

過去事例・他人の経験よりも理論

過去からはできる限りのことを学ぶべきだが、どの情報や助言を受け入れ、
どれを聞き流すかという根本的な問題の解決にはならない。確かな理論を
使ってこれから起きることを予測できれば、成功するチャンスを高められる。
理論が提供する助言が信頼できるかどうかを判断するには、アノマリー(=理論では説明できない事象。例えば「翼か羽のある生物は飛べる」理論のアノマリーは「ダチョウは飛べない」「ムササビは翼も羽もないが飛べる」等)を探すのが一番
では、「人は金銭的報酬で動く」理論のアノマリーは多々あるが、彼らを真に動機づけているものは何だろうか?ここで登場するのが二要因理論、別名動機づけの理論と呼ばれる考えで、人に本心から何かをしたいと思わせることだ。
幸せなキャリアを築くには、動機づけ要因を最大限に高め、かつ衛生要因も満たせる分野を見つけなければならない。戦略は予期された機会と予期されない機会が組み合わさって生まれる。外へ出ていろんな物事を試すべき。

人生の投資の話

「子供が幼いときは仕事に専念し、少し成長したら家庭に力を入れよう」と考える若きエリートが陥りがちな間違いについて。
子供の知的能力を伸ばすうえで大事なのは生後すぐの過ごし方だ。生後30ヶ月の間、おしゃべりな親に1時間平均2100語を語りかけられた子と、平均600語しか語りかけられなかった子は、成長してからの語彙と読解力の成績に大きな差があった。

一つには、あなたはことあるごとに、ただちに見返りが得られるものに、自分の資源を投資したい誘惑に駆られるだろう。二つには、あなたの家族や友人は、あなたの注目を得ようとして声高に叫ぶことはない。あなたのことを大切に思い、キャリアを応援したいと思っているからだ。こうしたことが積み重なるうちに、結局は世界で一番大切なはずの人たちをおろそか
にしてしまう。


デルとエイスースから学ぶ

顧客が部品を選びカスタマイズしたパソコンを注文すると、48時間以内に組み立てて出荷するビジネスモデルで成功したデル。その裏には台湾の製造メーカー・エイスースの力があった。初めは小型回路だけを納品していたエイスースだが、あの部品もこの部品もうちでやりますと営業をかけ、最終的にデルは、パソコンの中身全てをエイスースに発注するようになった。そして15年後、エイスースは自社ブランドのパソコンを製造すると発表した…という、ギリシャ神話みたいな話がある。
デルは資源にこだわり、重要なプロセスを減らすことに集中するあまり、将来の競争力を自ら削いでいることに気づかなかった。

多くの親がデルと同じ間違いを犯し、子供に知識、スキル、経験といった資源を溢れんばかりに注いでいる。しかしこうした活動は、子供を困難なことに取り組む意欲を掻き立てる経験ではないために、将来の成功に必要なプロセスを養う機会にはならない。


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