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抽象化と転用(メモの魔力/前田裕二)

2019年最も売れたビジネス書らしい。
SHOWROOMの前田社長、そうえいば最近見ないな。SHOWROOMはいまどうなっているのだろう?と思い調べたら、なかなかの赤字決算続きだった。

新しいSNSや配信サービスが増えすぎたいま、ライブ配信ビジネスでどうやって稼いでいくの…?とSHOWROOMの今後が気になりつつも、この本自体はなかなか面白かったのでメモ(紙じゃなくてすみません)。

・メモ魔になれ

具体的なやり方は、ノートの左側に、心に引っかかった「ファクト」を書き、右側を縦半分に区切り、ファクトからの気づきを応用可能な粒度に「抽象化」→自らのアクションに「転用」する、という3段階フォーマットを作るというもの。

社長の例でいうと、幼少期に両親を亡くし、駅前でギター弾き語りをして生計を立てていた時代があった。

【ファクト】
・カバー曲を歌うと、オリジナルよりも立ち止まってくれる人が増える。
・立ち止まってもらった人のリクエストに応えると、ぐっと仲良くなる。

【抽象化】
・仲良くなるには、双方向性が大事。
・人は「うまい歌」ではなく「絆」にお金を払う。

【転用】
双方向性があり、絆が生まれる仕組みをネット上に作る。
→こうしてSHOWROOMは生まれた。

左右にノートを分割するのには意味があり、まんま左脳と右脳の構造に寄せている。また、人は空白を見ると埋めたくなる性質があるので、先に左側を埋めておくことで、右側のクリエイティブ領域を頑張って埋めようとする、という意図もある。タイピングではなく手書きにすることで、意識も定着力も高まる。

抽象化、転用と言葉をつけると難しく見えてしまうが、実際、抽象化は誰もが日常的にやっている。例えば、子どもが気になる異性と遊びに行くとき、親に「友達と遊ぶ」といって誤魔化すのも抽象化だ。

映画を観て「面白かった」で済ませ、深めることをやめていた表層的な意識も、こうしてメモをとることで抽象化能力と言語化能力を引き上げることができる。

・自己分析1000本ノック

巻末に、1000問の質問が列挙されている。
幼少期から学生時代、そして現在を、それぞれ同じ質問で振り返る自己分析用の問いばかりだ。
何に幸せを感じていたか?あぁ、私も就活の時やったな…と思い出したが、これを前述のメモ形式に落とし込み、抽象化する作業には途方もない時間がかかるだろう。
残念ながら私はやる気になれなかったが、学生が本気でこの1000問に取り組んだら、就活においてかなりの強みになると思った。

前田社長、昔のジャニーズみたいな前髪と、石原さとみの元彼という2点で勝手にチャラついた印象をもっていたが、びっくりするほどアツい人で驚いた。おまけに、「書こうか迷ったが書くことにした」と前置きして、エピローグで語られていた告白。

兄や先生を喜ばせるために勉強を頑張り、メモをとるようになったと書いたが、実はそんな崇高で利他的なものではなかった。授業中にメモをたくさんとると、先生や周りの人たちが自分に目を向けてくれることに気づいた。だから、メモを武器に周りを振り向かせようとした。自分が愛されたいがための行動だったのだと思う。(要約)

あぁ、この人はモテるわ…と思った。

鋭いアンテナを張り巡らせながら生活し、引っかかったものを素通りせず分析する。自分のものにする。という生き方には共感した。
この本を読んで「よし!私もメモ魔になろう!」とは思わなかったが、抽象化して転用する(ちゃんと言語化する)意識はもっていたい。

ただ、彼がちょこちょこ引き合いに出す人物が幻冬舎箕輪(本書の編集者)、キンコン西野、ホリエモンなどいけ好かないメンツだったので、そこだけは素直に受け取れなかった。私は手始めにこの「いけ好かないメンツ」という気づきを、抽象化してみます。


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