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ネット上に嘘の知識を流している方々、来る。

ネット上には、不確かなことを平気で書き込んでいる方々がかなりの数いらっしゃいます。

今回もまた、そのような方々に来て頂いたので、一緒にその発言を見ていきたいと思っています。

では、早速始めます!

1.コロナ(病気)を他人に故意でうつす行為は何罪となりうるか?

先ず最初は、「コロナ(病気)を他人にうつしたら暴行罪になる」との前提で話し合っている方たちです。

登場人物は、
①「法律家の端くれ」さん
②「頼れない街の法律家」さん
です。

ではそのツイートをご覧ください。

ということで、「コロナ(病気)を他人にうつしたら暴行罪になる」ということを前提に話し合われていることが見て取れます。

しかし、残念ながら、病気を故意で他人にうつすことは、暴行ではなく『傷害』(刑法204条)にあたります。

★『傷害』とは、人の生理的機能に障害を与えること、広く健康状態を不良に変更することを意味します(最決昭和32.4.23)。

★そして判例でも示されていますが、人を病気にかからせることは傷害にあたります(最判昭和27.6.6)。

「法律家の端くれ」さんも「頼れない街の法律家」さんも、「法律家」とのことなので、ここは頑張って欲しいところです!

2.有期刑の上限が20年を超えるケースについて。

そして次は、これです。

先ず前提として、以下のような状況だったことを確認してください。

★ベビーシッターの男が、4年余りで、22件の強制性交等罪、14件の強制わいせつ罪、20件の児童ポルノ禁止法違反の罪で起訴されていた事件がありました。
★検察官は、懲役25年を求刑していました。
★東京地裁は、懲役20年と判断しました。

このような事実関係です。

では、次にこのツイートを見てください。

確かに、有期懲役は20年以下と規定されています(刑法12条1項)。

しかし、本件は『併合罪』として処理される事例です。

そして、この罪名の中で、最も重い罪となるのは、「5年以上(20年以下)の有期懲役」を定めている強制性交等罪です(刑法177条)。

結論からいえば、このような場合には、最も重い罪となる強制性交等罪の有期刑の上限である「懲役20年」に1.5を掛けるという操作をします。

つまり、
★懲役20年×1.5=【懲役30年】

この【懲役30年】が、当該被告人に適用される処断刑の上限となります。
それ故に検察官も、懲役25年を求刑していたわけです。

以下、刑法の条文に基づいた説明を入れておきます。

★『併合罪』とは、確定判決を経ていない2個以上の罪のことを指します(刑法45条)。

★このような併合罪において、2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする、とされています(刑法47条)。

★ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない(刑法47条ただし書)

3.弁護人はワンパターンに責任能力ばかりで争っているのか?

次はツイートがそのままなので、早速それをご覧ください。

殺人・死体遺棄被告事件で、責任能力を争わず、情状弁護を尽くすことにより、執行猶予を得た事例があります(東京地判令1.10.21)。

この事例の場合、心神耗弱か酌量減軽により刑が減軽されなければ、執行猶予を得ることができないという状況です。

熟慮の結果、弁護人は、責任能力で争うことをせずに、情状弁護を尽くすことによって酌量減軽を得るという方針をとりました。

結果は以下のようになりました。

★検察官の求刑は懲役6年。
★弁護人の科刑意見は懲役3年・執行猶予5年(付保護観察)。
★判決は、弁護人の科刑意見のとおりになりました。

このように、責任能力で争うことをせずに、執行猶予を得ることができた事例も存在します。

4.正当防衛が成立しても、損害賠償責任を負うのか?

ツイートを見ても、何をいっているのか意味不明ですが、恐らくこの方がいう「正統的防衛」とは『正当防衛』のことだと思われます。

つまり、
刑法上の正当防衛が成立しても、正当防衛を行った行為者が侵害者に対して与えた損害については、損害賠償の責任を負うことになる。

という主張なのだと思われます。
しかし本当にこれが正しいのでしょうか?

読みにくいものがありますが(色んな意味で)、とりあえずツイートを見てみましょう。

刑法上の正当防衛が認められるなら、民法上の正当防衛も認められるはずです。

なぜなら、
★刑法上の正当防衛の方が、民法上の正当防衛よりも、成立要件が厳しいので。
★より厳しい要件のものが成立している場合は、より緩やかな要件の方も成立していると考えられるから。

ならば、刑法上の正当防衛が認められた行為は民法上の正当防衛もまた認められるので、損害賠償責任は負わないと考えられます。

下記の条文をご覧ください。

【民法720条1項】正当防衛
 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。~以下略

以上です。


ということで、またやってみたいと思っていますので、その際もどうぞ宜しくお願い致します!


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