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高放銃率低打点VS低放銃率高打点

研究代表者 nisi
研究協力者 とつげき東北、みーにん

1.はじめに

ベタオリで現物が尽きたときの打牌選択について、少しでも「安全そうな牌」を選ぶのが基本戦術になるかと思います。「安全そうな牌」の基準として、
・放銃率が低い牌
・放銃した時の失点が低い牌

の2つの観点があります。今回のテーマは、放銃率が高いけど放銃時失点が低い牌と、放銃率が低いけど放銃時平均失点が高い牌とでは、どちらを優先すべきか、というお題を考えていきます。

2.比較方法論

対リーチのベタオリ時打牌選択をするにあたり、局収支の算出方法(アガリ率×アガリ時平均打点-放銃率×放銃時平均失点-被ツモ率×被ツモ時平均失点-横移動率×横移動時平均失点+流局率×流局時平均得失点)から鑑みて、ある牌の期待損失点という用語を以下に定義します。

期待損失点該当牌を切った時の放銃率×該当牌で放銃した時の放銃時平均失点

局収支のみで考えるならば、期待損失点が最も低い牌から切ることが、ベタオリの最適戦略とおおむね一致します(ただし、安牌水増しなどの要素は考慮していない)。

このときに、期待損失点が同じ牌ABがあったとして、牌Aは放銃率が高いけど放銃時失点が低いが、牌Bは放銃率が低いけど放銃時平均失点が高い、という場合に、牌AかB、どちらを先に切ったほうがよいかが気になるわけです。

(細かい検討の過程は端折りますが、)例えば、生牌モロひっかけのスジ28牌対子生牌の三元牌ドラ対子が手牌にあって、そのどちらかが一番期待損失点が低い、という状況について考えます。既存の牌譜解析結果から放銃率・放銃時平均失点・期待損失点を計算すると、以下の表のようになります。

画像1

基本的にモロヒ28対子のほうが放銃率が高いですが、放銃時平均失点は三元牌ドラ対子のほうが高いです。特に10巡目では、両者の期待損失点がほぼ同等となります(なお、10巡目より早い巡目は三元牌ドラ対子のほうが期待損失点が低い、10巡目より遅い巡目はモロヒ28対子のほうが期待損失点が低い)。

このような期待損失点がほぼ同等の場合に、高放銃率低打点(モロヒ28)VS低放銃率高打点(三元牌ドラ)のどちらを切るべきかの優劣は、試合終了時ポイント期待値(半荘収支or段位pt)によって決めるよりほかありません。先週のラス目国士狙いの記事と似たような方法(疑似麻雀シミュレータ+計算)でいくつかの点棒状況を設定して、調べてみます。

3.計算方法など

〇計算上の分類など
・現局で自分は西家とする
リーチ者は北家
・10巡目・非一発巡
・自分はベタオリ
東家南家も降りている
点棒状況は以下の15パターンを調べる。
トンパツ
南一局西家30000点北家25000点東家25000点南家20000点
南一局西家30000点北家20000点東家25000点南家25000点
南一局西家25000点北家30000点東家25000点南家20000点
南一局西家25000点北家20000点東家25000点南家30000点
南一局西家20000点北家30000点東家25000点南家25000点
南一局西家20000点北家25000点東家25000点南家30000点
南一局西家40000点北家30000点東家20000点南家10000点
南一局西家40000点北家10000点東家20000点南家30000点
南一局西家30000点北家40000点東家20000点南家10000点
南一局西家30000点北家10000点東家20000点南家40000点
南一局西家20000点北家40000点東家30000点南家10000点
南一局西家20000点北家10000点東家30000点南家40000点
南一局西家10000点北家40000点東家30000点南家20000点
南一局西家10000点北家20000点東家30000点南家40000点

〇現局の起こりうる事象
現局の点棒の動きについて、以下の10種類の事象に場合分けする。
初手1300放銃
初手2600放銃
初手5200放銃
初手8000放銃
初手12000放銃
次巡以降放銃
被ツモ
対→下横移動
上→下横移動
下聴牌

〇各事象の発生確率
初手1300放銃~初手12000放銃
初手放銃率(モロヒ28で7.2%、ドラ三元牌で4.2%)×以下の表の初手放銃時打点分布期待損失点が同等かつ先に挙げた放銃時平均失点に近い数字になるように、てきとうに設定)から求められた確率

画像2

・次巡以降放銃…(1-初手放銃率)×0.036
・被ツモ…(1-初手放銃率)×0.38028
・対→下横移動…(1-初手放銃率)×0.020055
・上→下横移動…(1-初手放銃率)×0.020055
・下聴牌…(1-初手放銃率)×0.54361

※各数値は初手完全安牌・初期現物2個のベタオリ時シミュレーションより算出。

〇各事象発生時点棒の移動
初手放銃以外の他家のアガリロンは5200点の移動、ツモは1600・3200の移動の1パターンのみとする。

〇全10パターンの事象それぞれについて、点棒の移動と残り局数・本場の変動と親移動を加味したあとの状況について、疑似麻雀シミュレータを回す
〇各事象の順位分布と試合終了時ポイントの平均値について、初手モロヒ28の場合と初手三元牌ドラの場合それぞれについて、各事象発生確率における加重平均を取る。

具体的には以下のような計算シートを作ります。

画像3

上部黄色マスが残り局数と4者の持ち点、2列目3列目の「モロヒ28」「ドラ三元牌」の列は10種類事象の発生確率(初手放銃率・初手放銃時打点分布に依存)、右から7行が各事象発生時の半荘収支・平均順位・段位pt・順位分布、右下オレンジマス・黄緑マストータルでの半荘収支・段位ptです。

以下、全15パターンの点棒状況についての計算シートとその分析を有料部分でしていきます。

4.高放銃率低打点VS低放銃率高打点のまとめ

15枚の計算シート(計算の過程)を掲載するのは後回しにして、結論から先に述べます。まとめたものが下表です。

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