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M&A「イン・イン型」とM&Aの歴史を知ろう

「イン・イン型」とは、日本企業同士のM&Aのことである。
2023/8/14日経新聞記事によると、日本企業同士のM&Aが増えている。今年上期の買収額は約6兆8000億円で前年同期比8割増えた。

株価の底上げに向けて、より相乗効果が見込みやすい国内での事業再編が活発になってきたためだ。円安で海外企業を買うハードルも上がっており、海外に成長を求めてきたM&Aの潮目が変わる可能性がある。

1ドル=140円台半ばまで進んだ円安がイン・アウト型のM&Aのハードルを高めている面もあるが、国内企業同士のM&Aは今後、一段と活発になる可能性がある。

要因の一つが株式市場からの圧力だ。東京証券取引所が今年3月末、上場企業に資本コストや株価を意識した経営を要請した。1倍割れの低PBR(株価純資産倍率)に沈む企業に対する市場の目は厳しくなっており対応を迫られている。

政策面の追い風も吹く。経済産業省が策定中の「企業買収における行動指針(案)」は企業価値向上につながる真摯な買収提案を、合理的な理由なく拒まないよう求めている。7月にはニデック(旧日本電産)が工作機械メーカーのTAKISAWAへ買収提案し、同意が得られなくてもTOB(株式公開買い付け)を実施すると明らかにした。

日本は主要先進国のなかでも、経済規模に比べてM&Aが少ないとされる。国内再編を軸にM&Aが身近になれば、結果的に国際競争力の強化にもつながりそうだ。

経済産業省が半年間の議論を経てまとめ、M&Aの考え方や手順を分かりやすい言葉で説明している。「何をいまさら」の感もあるだろう。しかし、「今の日本市場にとっては、当たり前の考え方を文字にして明確化したことに意義がある」

ごく最近までの日本株低迷の根底には、企業金融の当たり前のセオリーが通らない日本への不信感も横たわっていたと推察する。とすれば、あえて「いろはのい」を明示的に整理することには意味がある。

縮みゆく日本を母国市場とする企業が長期の視点でグローバル投資家に選ばれたいのであれば、今なすべきは成長志向の資本再配分にほかならない。その財務戦略の延長線上に果敢なM&Aが見えてくる。

M&Aの歴史

これからは企業の多様性が重要になってくる。1980年代は、「M&A」といえば大企業がクロスボーダーで海外の企業を買うことを意味する時代だった。

1991年4月25日、日本M&Aセンターが設立された。当時、M&Aについて世間一般ではほとんど知られていなかった。一方で、中小企業の間では経営権の承継が問題になりはじめていた。なぜなら、1980年代の頃から少子高齢化が急速に進展することは分かっており、事業承継問題が社会問題となることが予測できたためだ。実際に後継者がいないがどうすればいいか、そんな相談を多くの会計事務所などに寄せられるようになった。

しかし会社を譲渡することは、当時メディアでは「〇〇〇社が身売りに」「△△△社を乗っ取った」とネガティブに表現されていた。かつては終身雇用・年功序列が当たり前であり、いわば社員は家族も同然であったため、会社を譲渡することは家族を第三者に売るような感覚があったのかもしれない。M&Aの話が出ても「会社を売るなんてとんでもない」、そのような意見が大多数だった。

2000年代に入るとITバブルで株価は上昇し、M&Aの件数も拡大する。M&Aがニュースでも取り上げられることも増え、一般的にも認知度が高まっていく。有名なところでは、2005年にライブドアのニッポン放送株の買収事件がある。フジテレビの筆頭株主であるニッポン放送株に対し、新興IT企業であるライブドアが敵対的買収を仕掛けるといったものだった。既存メディアvs新興IT勢力という構図、過去にあまり例を見ない買収劇、日々変わる情勢に日本中が釘付けとなった。

敵対的買収(対象企業の同意を得ないままに企業買収を進める方法)自体は、全体から見ればかなり稀なケースだが、「M&A=乗っ取り」「M&Aは怖い」といった印象が強まることとなった。

2006年にこの流れを替える一つの転換点を迎えます。中小企業庁から「事業承継ガイドライン」が策定・公表された。中小企業経営者の高齢化が進んでおり、20年間で経営者年齢が47歳から66歳に移動していく予測がある。次世代への円滑な事業承継の促進と、中小企業の事業活性化を図るため、中小企業庁がそのガイドラインを示した。

そのガイドラインの中では事業承継の方法として、(1)親族内承継、(2)役員・従業員承継、(3)社外への承継(M&A等)の3つに分類されている。

2010年代、中小企業のM&Aは右肩上がりの「急成長フェーズ」に入った。その件数はそれまでの10年と比べ、10倍近くの増加となった。

「後継者不在」を解消するM&Aは当時最も多くあったが、そのほか「業界再編型のM&A」や「成長戦略型のM&A」についても拡大傾向が見られた。

「M&A=乗っ取り」というイメージがあるのはなぜか調べたところ、過去にフジテレビの筆頭株主という、①メディアを相手に②敵対的買収したことが大きな要因だった。現在は業界再編や成長戦略としての手段として周知され始めている。

東芝、TOB 2兆円で非公開化

直近では、東芝が投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)を中心とした国内連合の傘下で再成長を目指すことになった。

ファンドは買収資金の大半を金融機関から借り入れるLBO(レバレッジド・バイアウト)という手法をとることが多い。担保には買収先企業の資産を充てるが、リスクがあるため利率は高く設定されがちだ。そして買収後にファンドと買収先企業が合併することで、買収資金を実質的に買収された企業が負うことが一般的だ。ファンドにとっては自らの資金を抑えつつ巨額のM&A(合併・買収)ができる利点がある。一方で買収される企業にとっては、多額の負債と重い利払い負担を抱えることになる

LBOを駆使するのは海外ファンドだけではない。半導体材料のJSRを約1兆円で買収する政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)も、今回東芝を買収するJIPもLBOで資金を工面する。東芝の島田太郎社長も「株式非公開化後、東芝は大きな負債を抱えることになる」と認める。

再生には負債の返済と成長投資の両立が必要になる。コスト削減や事業売却など即効性のある構造改革が優先されがちななか、研究開発や設備投資、M&Aなど将来の成長への「種まき」の余力がどこまで残るかは未知数だ。

2013年、ルネサスエレクトロニクス買収

東芝の再生に向けて参考になりそうなのが、13年に産業革新機構が買収したルネサスエレクトロニクスだ。日立製作所NEC三菱電機の半導体事業が統合して誕生したが14年3月期まで9期連続で最終赤字が続いた。

ルネサス買収は東芝非公開化と同じく事業会社が参加する「奉加帳方式」だった。革新機構を中心に、トヨタ自動車や日産自動車、キヤノン、安川電機などが企業連合に加わりそれぞれ出資をした。

「半導体を他社より早く融通してほしい」、「株を買い増すから連携を深めないか」。再建中にはルネサスに出資企業から様々な要請があった。ルネサス経営陣は支援の枠組みを監督する経済産業省の幹部と幾度となく協議し、意思決定の自主性を確保した。「船頭多くして船山に上る」状況を避けたことで、米国のアナログ半導体企業の買収などを迅速に判断できた。

成長への種まきが実り、22年12月期の連結決算(国際会計基準)は売上収益が約1兆5000億円、最終損益は約2500億円の黒字に回復。買収前の12年には1000億円を割り込んでいた時価総額は、足元で50倍超の5兆円近くまで拡大し、世界の半導体大手の一角に返り咲いた

リスクを負って買収した投資ファンドや事業会社に「金は出しても、口は出すな」と言うことは難しい。それでも意思決定の流れを一本化できれば成功につながり、混線すればその妨げとなる。

今回は、M&Aについてまとめてみました。
10月に日経テストを受験するので、noteでの記事まとめが良いアウトプットになりそうです。

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