見出し画像

理想を実現させることについて

昨日は上野の国立西洋美術館で松方コレクション展に行ってきました。


松方とは、松方幸四郎さんという人物で、第一次世界大戦時に造船業で巨万の富を得て、自らの趣味である美術品の収集に費やしました。その数なんと約1万点。これを個人で集めたというところに、松方さんのこだわりぶりと権力と富が集中していたことがわかりますね。残念ながら昭和恐慌のあおりをうけ、松方の務めた川崎重工も倒産。その際に作品のほとんどは売られてしまい、ロンドンで保管していた作品は火事にあい、焼失してしまったそうです。

そのうち160点が展示されていました。今回のメインはモネの睡蓮。入り口にクラウドファンディングを行ってその色彩を再現したモネの睡蓮の画像が投影されていました。


私としては展示の中では、ダンケの考える人や地獄の門が見れたことに感動しました。そして展示数の種類の豊富さ、多さに圧倒されました。絵画だけでなく、彫刻、デッサン、ペルシャ絨毯などがあり、美術の醍醐味を味わうことができました。
松方さんは「芸術は人民の魂だ」と評しており、日本に規模の大きく、世界中の作品を展示する美術館がないことを嘆いていたそうです。そのため、自らの所有した作品を「共楽美術館」として開園することを夢にしていました。実際に美術館の完成予想図なども展示されていました。


今回のコレクション展では作品にももちろん感動しましたが、松方さんの背景についても考えました。「ヨーロッパのアトリエが松方さんのせいで空っぽになった」と言われるほどだった当時の状況はどうだったのか。
イェール大学、ソルボンヌ大学を卒業し、ヨーロッパでの人脈があり、なんとモネ本人との交流もあったそう。「美術を知らない若者のために」という熱い思いにこたえて、モネは気に入っていた作品を松方さんに売ったというエピソードは有名です。美術作品の収集に対し、当時の3千万円、現在では900億円にも上る費用をかけていました。もはや個人の趣味の領域ではないですよね。もちろん松方さんの美術に対する思いは素敵です。
ですが、なんだか違和感を感じました。もちろん美しいものはみんなでシェアし、そこから美術が発展したりするきっかけになります。結局「共楽美術館」が実現していないために、日の目を見ず灰になってしまった作品もあります。オタクの収集癖だけではなかったのでしょうが、人々に作品を公開する場を作っていなかったら、結局は集めただけ。だから違和感を感じたのかもしれません。それだけの費用と時間をかけて世界的名画を集めた、という所で運命に翻弄された松方さん。もちろんそのお陰で国立西洋美術館も設立されましたし、大きな影響を与えているのは事実です。

何か目的があり、やりたいことがあるならば、早く実現させるためにも動く必要があることを松方さんから学びました。今は時代の流れが速いから猶更。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?