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英国王のスピーチと、H2の木根竜太郎

人は子どもの頃にかけられた言葉や体験をずーっと覚えている。
その後の言動や欲求に大きく関わってくる。

どんな人間と出会うかはどうしたって俗人的だからこそ、
表現教育がもっと教育システムの中に組み込まれて欲しい。
IMPRO KIDS TOKYOの活動を深めながら広めたい。
子どもたちが素敵な大人と出会う機会を増やしたい。

と、熱意は高まる。
と、ふたつの作品を観返していて思ったので書き留める。

英国王のスピーチの場合

ローグ「お父上は、もうこの世にいない」
アルバート「そうだな。だが、君にやったシリング硬貨にいる」
ローグ「放り投げてしまえばいい。お父上をポケットに入れて歩く必要はない。あなたのお兄様も。5歳の時に恐れていたものを、もう恐れなくてもいいんだ」
Lionel Logue: He's not here anymore.
King George VI: Yes he is: he's on that shilling I gave you.
Lionel Logue: Easy enough to give away. You don't have to carry him around in your pocket. Or your brother. You don't need to be afraid of the things you were afraid of when you were five.

参照:映画スクエア

英国王のスピーチ:
イギリス王 ジョージ6世(ヨーク公アルバート王子)は、幼少期から吃音に悩まされていた。その治療にあたった言語聴覚士であるオーストラリア出身のライオネル・ローグとの物語。

アルバートは亡くなった父と兄という存在の前で、何も言えなくなってしまう。自信が消えてしまう。
それは幼少期から父と兄から受けた叱咤や吃音に対するからかいの体験からくるもの。

子どもの頃に言われた言葉や体験はなかなか消えない。
ダメなやつと言われたら、がっかりされたら、からかわれたら、その自分がずっと記憶されてしまう。

逆もまた然り。

H2の場合

そっかそっか、甲子園行って三振いっぱい奪るのか。
それは楽しみじゃのォ。
そっかそっか。
竜太郎はすごいなァ。天才じゃ。
いっぱい奪れたか?三振。
そっかそっか、楽しみじゃのォ。

いわずと知れたあだち充先生の作品なので、内容は割愛。

木根竜太郎は、自信過剰で嘘つきで、ストーリー的にもたまに「何余計なことやってくれてんだよ!!!!」と読者を苛つかせる。
が、徐々に、彼が見えないところで努力をし続けている描写が出てくる。

その根底にあったのが、亡き祖父からかけ続けてもらった言葉であることが、甲子園の舞台でピッチャーとして投げる木根のシーンで明かされる。

語った夢をどんなに周りから馬鹿にされても、
嘘をついたり逃げたりする人間には無理だと周りが言ってきても、
自分自身が野球じゃないことで遊んでいる時も、
木根のおじいちゃんはずーっと、木根の夢を楽しみにし続ける。

わたしは木根を羨ましく思ったし、自分が言われているわけじゃないのに、自分にまで言われているような気持ちになって泣けてきた。

どんな人間に出会うか。
どんな環境に身を置いているか。
それだけで未来が大きく変わってしまう。

運命を変えることは出来ないので、
「これを知っていたかった」「これと子どもの頃出会っていたかった」と自分が強く感じたことを
今出会えた子どもたちと深め、未来に広げていけるようにしたいと思う。

そして、英国王のスピーチ、アルバートがローグと出会えたことを、観客として心から嬉しく思った。

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