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真帆片帆

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追風で走る真帆、横風を受けての片帆。 他のマガジンとは別テーマを集めました。 p.s. 嘗ての1970年代小田原高校新聞一面のコラムの名から取りました。
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記事一覧

5 旅人は誰もが、文化大使である

5 旅人は誰もが、文化大使である

 黒澤明監督の映画「デルス・ウザーラ」は、ロシア人探検家アルセーニエフのシベリア探検記で、案内役の猟師デルスとの交流を描いている。設定では、デルスは先住民ゴリドであるが、デルスを演じた俳優マクシム・ムンズクは、トゥバ人である。
 そのことを知ったのは、1995年にロシア連邦トゥバ共和国を訪問した時だった。ソ連邦の崩壊から4年。まだ新しいロシア連邦には22の共和国があることすら、ぼくは知らなかった。

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2 海の嘆きを映すランプシェイド

2 海の嘆きを映すランプシェイド

 何年前だったのか、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」展という美術展をみた。そこに知り合いのヨーガン・レールが参加していた。残念ながら展覧会の少し前に急逝してしまい、この展覧会が遺作展のようになった。
 ポーランド生まれのドイツ人ヨーガン・レールは、ナチュラルな素材の着心地のいい服のデザイナーとして知られ、「ヨーガン レール」「ババグーリ」というふたつのブランドを持ち、オーガニックな野

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函館の「詩のボクシング」北海道地区大会の本大会から帰ってきた。

函館の「詩のボクシング」北海道地区大会の本大会から帰ってきた。

詩のボクシング はボクシングに見立てたリングの上で、ふたりの詩人が
交互に自作を朗読し、どちらが観客を惹きつけたかを競い、
それをジャッジが判定するというもの。
1997年に、楠かつのり氏が、日本朗読ボクシング協会を設立。
初代チャンピオンはねじめ正一、二代目は谷川俊太郎。
そして、谷川俊太郎の突然の辞退により、平田俊子が現在のチャンピオン。

函館の大会は、午後6時半、16人の朗読ボクサーたちに

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1 その詩は血と汗と涙でできている

1 その詩は血と汗と涙でできている

 最近、自分のプロフィールに「詩人」を加えた。四十年以上に亘って活動するバンド「ヒカシュー」の歌詞を詩集『至高の妄想』にまとめたのがきっかけだ。ヒカシューでは曲も作り、ベースを弾き、歌をうたい、東芝EMIという大手の会社からデビューした。二十三歳の時だ。翌年のデビューアルバムに収録された「プヨプヨ」という詩をアートディレクターの石岡瑛子が気に入り、パルコの新聞広告用に詩を書いて欲しいという依頼を受

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チュチュランド漫遊記

  新宿二丁目に深夜遅くまでやっている蕎麦屋がある。ロンドンのロイヤ
ル・バレエに在籍し、日本公演にやってきて、すっかり日本が気に入って
しまったイギリス人が目の前にいる。すらっとした美男子だが、せっかち
な様子がその貧乏ゆすりからわかる。そのニコラス・ディクソンという男
と一緒に割り子そばを食べた。

 

 ニコラスは、目白の小林紀子バレエシアターで教えていて、香港で夏に
あるユース・フェステ

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58.内田裕也さんを偲んで

58.内田裕也さんを偲んで

あれは年末のニューイヤーロックフェスティバルにヒカシューが出たばかりの、年明けの1月のある日だった。新橋のニュー新橋ビルの公衆電話を使おうと思ったら、先客がいて後ろに並んだ。髪形からなんとなくロッカーだなと思ったものの気をつけていなかった。
「あ」
と思わず声が出た。先客は、内田裕也さんだった。
電話を終えると、「マキガミかぁ、たまには連絡しろよ」と言い放ち、「年末よろしくね」と言った。12ヶ月後

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充電野郎

充電野郎

チャージする
この期に及んで

靴を集めてみようか。ジョン・テイラー。

靴を集めてみようか。ジョン・テイラー。

靴を集めてみようか。
ジョン・テイラーは、そう言って肩を組み、輪になって足を揃え、みんなの靴を写真に撮った。箱根神社の参道でのことだ。熱海から長野県の茅野に移動中だった。
5人で10足の靴のサークル。どの靴がジョンのだろうか。
赤いカバーのiPhoneで撮るのは、いつもいたずら心に溢れたものだった。人柄というのは滲み出るものだ。いつもきちんとした身なりで、穏やかな表情を忘れることが出来ない。そして

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