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香川照之!!『宮松と山下』

いやぁ香川照之の映画でした。

全編香川照之。
観終わった後も香川照之が夢に出てくるんじゃないかという。
香川照之の気持ち悪さ全開の怪演が見られる映画が『宮松と山下』でした。

劇場公開時から気になっていたんですよね。
どんな映画か全くわからない感じも興味をそそった。

しかも主役が香川照之ですよ、香川照之!
大袈裟なリアクションと表情のコミカルとも言える芝居。

香川照之と言えばドラマ『半沢直樹』での土下座が有名だが、
僕が最初にこれはヤバい役者だと認識したのはNHK大河『龍馬伝』で演じた鳥籠男こと岩崎弥太郎役の香川照之。

薄汚くて狡賢くて卑屈を装って愛想笑いをしているけれど何を考えているか分からない底知れぬ不気味さ。
コイツは大バカ者なのか天才なのか。

この時の強烈な印象が以降もずっと続いた。

映画『クリーピー 偽りの隣人』もヤバかった。
最初から普通じゃない隣人として現れたが、やっぱり見たまんまのサイコ野郎だった。

大体が香川照之がキャスティングされて普通な役な訳がない。

映画前半は香川照之扮する宮松という男の日常が淡々と描かれる。
どうやら、売れない役者でエキストラ仕事だけでは食えないのでアルバイトをしているらしい。

時代劇のエキストラとしての裏側が描かれていて大変興味深い。
なるほど、エキストラは衣装を変えて何度も斬られるんだ、とか。

ある日、仕事帰りに夕食を済ませようと居酒屋に立ち寄りカウンターでビールを頼む。
疲れ切った身体にビールが美味い。ごくごくと飲み干す、
と思ったら突然の銃撃戦で撃たれて死んじゃう。

え?何?

ビアホールでおっさんと相席で気まずそうな弾まぬ会話。
これもアルバイトの帰りなのかな?
と思ったらまたも突然の銃撃戦で撃たれて死んじゃう。

あぁ、これもエキストラ仕事のワンシーンだったか。

仕事が終わりアパートに帰ってくると、入れ替わりで仕事に出掛ける美人の奥さん?
なんだ独り者じゃないのか。
こんなエキストラはないよな。
と思ったら、これもやっともらえた端役のワンシーンだったり。

こんな風に、どこまでが宮松の現実でフィクションなのか曖昧に描かれていく。
そもそも、宮松はどういう男なのかもよく分からない。
アルバイトとエキストラ仕事以外は人との交流となさそうな孤独な生活だというのはわかる。
何か訳ありそうだ。

後半、実は宮松は山下という名前で、元はタクシーの運転手をしていたが、ある出来事から記憶喪失になって行方不明になっていた事がわかる。

そんな記憶を失っている、しかも役者未経験だった人間が、エキストラの仕事なんか出来るのか?

そんな疑問は大いにあるんだが、まあ設定上そういう事はすっ飛ばしているのが若干気にはなったが、
そんな細かいことはいいんだよ!と香川照之の怪演が帳消しにしてくれる。
すごい最終兵器だ。

記憶喪失になった原因(本当に記憶を失っていたのか?)と、
彼が行方をくらました理由がだんだんと観ている方にもわかってくるのだけど、それもまた気持ち悪い。
本当であれば主人公の宮松もとい山下に同情するような話に行くんだろうが、そんなことにはならない。

「あぁ、コイツならやりそうだな。ヤバいよな」

そんな感想になるのは当然だ。
香川照之だもん!

山下の唯一の肉親で妹役の中越典子(久しぶりだ!)の心情が最後まで理解できなかったけど。

87分というサクッと観れてしまう長さの映画なので、香川照之を見たければ是非この映画も観て欲しい。

もう出てこないのかなあ。少し残念だな。

〈了〉

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