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『市子』

映画『市子』、観てきました。

上映館がミニシアター系でしかやってなかったので、珍しく平日の夜相方を誘って日比谷のTOHOシネマズシャンテまで出掛けました。

TOHOシネマズシャンテははじめて行きました。4階のスクリーン1でしたが(何故か公式サイトの案内では2階と表示されている)、ミニシアター系にしては観やすいスクリーンでした。
大体、ミニシアター系の小さめのところは座席がフラットなところが多いのですが、ここは全ての列に段差がついているので、前の人が座高の高い人でも気になりません。

映画の方は、まだ上映開始して1週間経っていないので詳細は省いて簡単に感想をnoteしておきます。
ですが、どうしても後半ネタバレではないですが、際どいかも?という感じもあるので未見の人はご注意下さい。

まず主役の市子を演じた杉咲花さん、予告編を観た時も一瞬誰だか分からないくらい、いつもの知っている感じとはかなり違っていました。
大人になったからかな。
幼少期に子供らしい育ち方をしていなかったため、純粋なところも残しつつある部分がぶっ壊れてしまっている市子という女性がそこに存在しているかのようでした。
やっぱりすごい役者さんです。
まさに杉咲花を観る映画かもしれません。

若葉竜也さんもいつものナチュラルな演技が特に今作の長谷川にはハマっていたと思います。
市子の母親役の中村ゆりさんも、友人役の中田青渚さんも、刑事役の宇野祥平さんも、みんな良かったです。(オイ!表現力!)
ワンポイントでしたが市子の小学生時代の同級生を演じた大浦千佳さん!印象強い!
NHK朝ドラ『舞い上がれ!』ではツンデレ事務員を演じてましたが、今作ではどヤンキーママがまたピッタリで!
自分のことを棚に上げて子供に「口の利き方!」と説教するシーンでは
「お前が言うな」と思わず心の中でツッコミましたよ。

物語としては、
まぁそんなこともあるんだなぁというテーマで、やはり身近にはあまりそういう人がいないような話なので(もちろん本人が隠しているから表に出てこないんだろうが)、少し遠い話というか我が身に引き寄せにくかったです。

とはいうものの、時制を行ったり来たりすることで、市子の生きてきた人生が少しづつ明らかになっていく編集(またはシナリオ?)は、ミステリー要素もあって観客を物語世界にグイグイと引きずり込んでいく効果があったと思います。

若葉竜也さん役の長谷川の立場になると、それは複雑だし辛いだろうな。
今は、若い時は助けたい気持ちが強いんだろうが、果たしてそれが一生一緒に抱えていくのはどうなのだろうか?という。

それにしても、救いのない物語に、決してハッピーエンドではない救いのない結末でした。
冒頭にも書きましたが、やはり市子はどこかぶっ壊れてしまっているので、高校時代の北くん、彼がまた思い込み強めのイケテナイ童貞野郎丸出しなんですが、彼を最後は丸め込んで、次に成り代わる自殺志願者の女性と一緒に〇〇〇しちゃうとこなんかは、市子はいずれ法の裁きを受けることになるだろうと予想せずにいられません。
決して市子が悪いわけではなく、全ては母親が悪いわけですが。
それでも、市子の行方を追って自分のところまで訪ねてきた長谷川を、波止場まで見送りに来て頭を下げ続ける姿に、悲しいけれどこれでも人の親なんだと思います。
この話のどこに救いがあるんだろうと考えると絶望的になる。
実際、こんな境遇の人はたくさんいるんだろうか。
何か法的な救済策はないのだろうか。
この日本のことだからきっと無いんだろうな、と思うとそこにも絶望する。

この映画は監督の戸田彬弘が劇団チーズtheaterの旗揚げ公演「川辺市子のために」を自ら映画化した作品だということです。
戯曲でもこの物語を観たい。
もっとストレートに物語の骨格が浮かび上がってくるだろうから、もっと市子の気持ちに寄り添えるのではないだろうか。


<了>







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