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大学の頃友人から可愛い妹を紹介してもらったけど手が出せなかった話

鍋の季節になりました。


長い夏から秋を飛び越えて冬の足音が聞こえてきましたが、皆様体調を崩していないでしょうか?

私はといえば出版に伴い色々やっていたら肩回りが岩石と化していまして、常に疲れが抜けないことが引き金となり体調不良の一歩手前をさまよい続けているという有様です。

さて。
鍋ですよ、鍋。

皆さんにとって鍋の思い出ってありますか?

まぁなんでこんなことを話すか?って言ったら単にVoicyのテーマだったというつまらない話なんですけど、同じ話をVoicy側で明日やろうと思っています。

私の場合、あれは大学を卒業する直前の冬のことでした。

確かクリスマスの少し前だったと記憶していますが、当時私は村落開発と英語という2つのゼミを掛け持ちしていまして、どちらかと言うと仲が良かったのが英語の方だったんです。

ゼミの後で大体食事に行ったりとか、後輩の作品を観にデザインフェスタに行ったりとか、夜中にドライブ行ったりとか(これは別の友人も加わるのですが)、ゆるく学生が楽しんでいるという感じでして。

で。
その中に群馬から出てきている友人が居まして、彼が中央林間にいわゆる安アパートに住んでいたんです。

オードリー春日の「むつみ荘」みたいなところで、家賃は安い、トイレ・風呂が共同という2002年当時に既に絶滅危惧種の居住環境だったのですが、彼の不思議な人徳がこの家をゼミのたまり場化させたんです。

このボロアパート(失礼)に女性が何人も余裕で入ってくるんですよ。平気で宿泊しますし、それは私達の学科が昔の名前で言うところの「拓殖学科」という、発展途上国支援を専門としていたところも作用しているのだと思います。

その群馬の友人と私と、女性のメンバー2人がとても仲が良くて、何故かこの家で彼が好きなヘビーメタル(北欧デスメタル:アーチエネミーやチルドレンオブボドム辺り)を聴くような謎の会合があったりしましてね。

そのタイミングでまた彼の家で泊まろうぜという話になったのですが、女性メンバーが1人バイトか何かで参加できないとなってしまったんです。

まぁ3人でも良かったのですが、ここで彼がふとこんなことを言いまして。

「妹、連れてきますよ」

い、妹??

確かに4人目が居た方がバランス的にはいいんですけど、そして東京近郊の大学に通っているとは聞いていましたが、このタイミングで妹さんとは。。

性格が抜群に良い彼(ちなみに私の例の父とも面識があり、大層その人間性を絶賛していた)の妹なんで、誰がなんと言おうといい子なのは確定しています。確かに興味はあるんです。

ただ。
一気に風向きが変わったのはこの一言でした。

「西尾さん(私は彼にこう呼ばれていた)、妹と付き合っちゃってくださいよ」


!?
そう来ますか!

確かに彼は常々私のことを褒めていたんですよ。

彼の誉め芸的なところはあるんですけど、にしてもいきなりの提案ですからね。さすがにこのようなことを冗談で言うようなタイプではないので、本気で勧めているのは間違いない。

いきなりとんでもないことになってしまいましたが、どんな妹か気にもなりますし、あわよくばという気持ちもあり、彼の提案に乗りました。

さぁ、何を食べるか。
学生ですから、そんなにお金はありません。

女性二人はともかく、彼は安アパートに住んでいるので、外でいいものを食べようというのも違いますし、そもそもこのアパートのある中央林間に気の利いた店があるかどうか金の無い私たちは知りませんでした。

では、家で食べよう。
ということで考えたのが、実家で食べていた鍋のことでした。

私は当時、実家の登戸に住んでいましたが、西尾家でよくやる鍋がありました。

それは、鶏鍋です。

食べ方が少し特殊なのかもしれないのですが、大根おろしを気が狂うくらい作り、ポン酢と出汁を掛けて食べるのです。

これが実に美味くて。

我が家のド定番だったのですが、こういう機会ですし、それほどお金もかからない。ちょうどいいじゃないかと思ったのです。

しかし、この中央林間の家には4人がつつけるような鍋がありません。そして、コンロもありません。確か、おろし金も無かった筈です。

なので、全て登戸から持参しました。

かなりの荷物だったことは鮮明に覚えています。鍋とカセットコンロを担いで電車に乗ったのは後にも先にもあの時だけです。

まぁ中学校の頃に剣道部で、防具を担いで数十分歩いていた私でしたから、このくらいの荷物はそこまで大変ではありませんでした。

そして彼の家に行くと、妹さんが居ました。

いや。
あのね。

可愛いんですよ。
素朴な感じで、肩に力なんてどこにも入っていなくて。

ああ、彼の妹だ。
って感じ。

非常に良い感じの子だったことと、何しろ彼の妹ですから打ち解けるのは相当早かった覚えがあります。

そういう自然な子なのでこっちも構えずに居られて、じゃあ鍋作ろうか、となりました。

荷物を担いでいくのは大変だったんですけど、モノが鍋ですから基本的には切って、入れて、煮る。これだけです。

面倒なのは大根おろしで、これだけは私がかなり頑張りました。

この鍋、自分が中心で作るとこんなに大変なんだ。私が作る前提なので、表情は変えずに初めてそのことを知りました。相当大根おろしを作ったので、その苦労は周りにも見て取れたと思います。

で。
完成です。

いつもと同じ味でしたが、好評でした。まぁ私が美味しいと思うものですから、そこまで変なモノじゃなかったってことですよね。

みんなで一緒に鍋作って、温まって、他愛のない話をして。
とても楽しい時間でした。
彼の妹が居るという異物感は無くて。

あー楽しかった。

大学卒業前の期待と不安を抱き、友人とこういう時を過ごせる時間が残りわずかなんだと思いながら、楽しくも寂しくもありました。

帰りの電車は道が一緒だったので、登戸まで彼の妹と一緒になりました。二人でしたが本当に自然で、連絡先も交換して。

さぁこの後、どうなったと思いますか?



結局ね、そんなに行けなかったんですよ。


これは、複数の理由がありまして、彼の妹がとてもいい子なのは分かるんですけど、やっぱりお兄ちゃんのことがチラついちゃうんですよね。

そうすると恋愛という方向では考えづらくなりまして、なんか遠慮しちゃうんですよ。そういうものなんすかね。これ。

私も友達の妹を紹介されるという経験は多分これっきりだったと思うんですけど、照れが出ます。

あと、もう一つ大事なのが、彼の妹があまりにいい子だったんですよ。

別に自分が薄汚れているとか、むしろ身も心も清いと自覚しているんですけど、映画のヒロインみたいな感じの清潔さがある子に対しては周りからああ、いい子だなぁって観ているくらいの距離感が丁度良かったんです。

だから、ああ、惜しいことをしたとも思わなくて、後で考えても必然だったのかなって思いました。


妻と一緒に住むようになってから、不思議とあの鍋は作っていないんですよね。なんでだろう。

別にこの楽しくも甘くも、でも自分を知ったこの日の出来事を思い出すからという訳ではないんです。勿論大根おろしが結構面倒だということも一つの理由なんですけど、なんか他の鍋にしちゃうんですよね。

あ。
でも。

あの鍋美味いんだよなぁ。

今度作るかな。

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