見出し画像

カカオ豆の産地とチョコレートのおいしさの関係


こんにちは!ママノインターンの野澤です。久しぶりにnoteを書かせていただきます。よろしくお願いします!

Bean to Barが広まり、シングルビーンのチョコレートも多くみられるようになりました。みなさんも、産地ごとのチョコレートの味や香りの違い、その特徴を比べながら楽しんでらっしゃると思います。私もその違いに魅せられた一人です。そこで今回は、カカオ豆の産地により、風味はどのように異なるのか、どのような成分が影響しているのかということに着目した論文を紹介します。


「カカオ豆の産地とチョコレートのおいしさの関係」
葛西真知子、石川由花、酒巻旦子、奥山知子、芦谷浩明、上脇達也、飯野文子 日本食品科学工学会誌(2007)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/54/7/54_7_332/_article/-char/ja/


カカオ豆試料

カカオ産地及び品種として世界的に広く知られているものの中から、風味が特徴的であるこの7種が選定された。なお、特に安定した品質を持ち世界的に多く使用されているアクラを評価する際の基準とし、残り6種を比較サンプルとしている。
・アクラ(ガーナ)
・スラヴェシ(インドネシア)
・サンチェス(ドミニカ共和国)
・カレネロ(ベネズエラ)
・アリバ(エクアドル)
・グレナダ(グレナダ)
・ジャワファンシー(インドネシア)


実験方法


Ⅰ.官能評価
 ⑴訓練パネル
  評価訓練を行った21-46歳の女性12名
  「色調」「かたさ」「口どけ」「スパイシーな香り」「華やかな香り」「スモーキーな香り」「甘味」「酸味」「苦味」「渋み」「こく」の11項目を7段階で評価
 ⑵嗜好パネル
  19-21歳の女子大生100名
  ⑴で差がみられなかった「甘味」を除き、「味のバランス」「後味」「総合評価」を加えた13項目を7段階で評価

Ⅱ.機器分析
 ⑴pH測定
  チョコレートを水に分散させてろ過し、pHメーターで測定
 ⑵カフェイン・テオブロミンの定量
  チョコレートに水を加えて加熱抽出し、うわずみをろ過して高速液体クロマトグラフィーを用いて定量
 ⑶ポリフェノールの定量
  チョコレートを脱脂後、50%に薄めたメタノールで抽出し、遠心分離。その後、Folin-Ciocalteu法により定量


※高速液体クロマトグラフィー
 試料が溶けた液体を高圧をかけて流すことにより、物質を分離させる方法
※定量
 各成分が、どれくらいの量(濃度)なのか
※Folin-Ciocalteu(フォリン・チオカルト)法
 フォリン反応という反応により生じた青藍色を比べて定量する方法



結果


Ⅰ.官能評価
嗜好パネル
全ての項目において、アリバとカレネロは、サンチェスとスラヴェシに比べて有意に高い
→アリバ・カレネロは嗜好性が高く、サンチェス・スラヴェシは嗜好性が低い

訓練パネルの結果と掛け合わせると、
嗜好性の高いチョコレートは「華やかな香り」があり、「スパイシーな香り」「スモーキーな香り」「酸味」「苦味」「渋味」が強くない

Ⅱ.機器分析
pHは酸味と苦味、ポリフェノールは酸味・苦味・渋味との関連性がみられた。
ポリフェノールと同様に、カフェイン・テオブロミンも苦味を呈することが知られているが、この実験では関連性がみられなかった。



以上より、産地により風味の感じられ方が大きく異なり、嗜好性の高いチョコレートは、「華やかな香り」をもち、「スパイシーな香り」「スモーキーな香り」「酸味」「苦味」「渋味」が強いものは好まれにくいということ。また、「酸味」「苦味」「渋味」には、pHやポリフェノール量が関係しているということがわかりました。

産地ごとのチョコレートの風味、数字にしてみると大きく異なりとても興味深いです。しかし、今回嗜好性が低いと評価された産地のカカオ豆が美味しくないということはないと思います。産地の他にも、カカオ豆の種類、発酵時間や製造プロセスなども風味に影響を及ぼすと考えられます。チョコレートの世界は本当に奥が深いですね…!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?