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粋が生み出すラブドール

「ところで、”ブス”と”無粋(ぶすい)”は語源が違うらしいよ。だけど同じだよな」

「粋」という言葉をイメージするのは難しいけれど、その反対である「無粋」はイメージしやすいのは僕だけだろうか。

思いついたことから話し、自分のことばかりで、周囲に気が利かず、空気が読めない感じ・・・。僕だって無粋な時はあるし、それを思い出しただけで、もう本当に死にたくなるくらいの気持ちになる。

ネットで調べたところによると粋とは「さっぱりした気立てで、あかぬけがし、色気もただようこと」だそうだ。

なるべくなら、無粋とは程遠い「粋な生き方」をしていきたい。どうしたらできるだろう。

『ロマンスドール』

「粋」という言葉で思いついた映画だ。なぜこの映画が浮かんだのかは分からなかったが、映画のあらすじを思い出してみると「粋な生き方」のヒントがあるように思う。

哲雄(高橋一生)はラブドール職人をしていた。ラブドールの乳を本物に近づけるために、本物で型を取りたいと考えたが、ラブドールのためにモデルが集まるはずもなく。
「人工乳房を作る研究」と嘘をついて美術モデルを募集したところ園子(蒼井優)がやってきた。哲雄は園子に一目惚れをし、そのまま結婚した。
哲雄は幸せな日常を送っているのだが、園子にはラブドール職人であることを隠し続けていた。仕事にのめり込むうちに家庭を顧みなくなった哲雄は、恋焦がれて夫婦になったはずの園子と次第にセックスレスになっていく。いよいよ夫婦の危機が訪れそうになった時、園子は胸の中に抱えていた秘密を打ち明ける……。

---ココからネタバレあります---

物語について、ここではあまり重要ではないのでざっくりいうと、互いのギクシャクがピークに達したところで、お互いが秘密にしていたことを言い合うことになる。哲雄が、本当はラブドール職人であること、1回だけ浮気をしてしまったことがあること。それを聞いた園子も、自分は進行性の癌であることを伝える。そこから二人は本当の夫婦になっていく。しかし虚しくも園子の病状は良くならず、限られた時間を有意義に過ごすしかなかった。


園子に本当のことを打ち上げてから哲雄の仕事も順調だったが、以前からの念願であった”つなぎめのない一体型ラブドール”を作ろうと悪戦苦闘していた。それを見た園子は「自分の身体をモデルにしてほしい」と哲雄に言うのだった。

哲雄は園子の身体を何度も確認しながらラブドールを作っていく。ラブドールが完成していくにつれて、園子の身体は衰弱していき、最後にはベッドの上で息絶えるのだった。

この展開に不快感を感じる人もきっといるだろう。だけど「モデルにしてほしい」と宣言をし、哲雄に抱かれる園子は美しく、さっぱりした気立てで、あかぬけがし、色気にあふれていて、まぎれもなく「粋な生き方」をしていた。(そう思わせる蒼井優さんの演技もすごい……)

執着が一切なく、自分の身体さえも捧げられる状態。粋な生き方には、「生」とは程遠い、「恥」と「死」の二つを受け入れ、すべてを手放した状態になる必要があるのかもしれない。

そう考えると粋な生き方はとても難儀に感じる。だけど、園子ほどすべてを手放さないまでも、名誉や我欲、お金など、少しでも手放すことで、粋になっていくだろう。
そのことは頭の片隅には置いておきたい。

そして部屋の片隅には、ラブドールを置いておこうと思う。(無粋)

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