20210227 ラテンの宴(エン) レコード紹介テーマ「橫濱」

横浜元町の"Gallery + Sushi あまね"で毎月開催している音楽ラウンジ「ラテンの宴(エン)」そこではDJの時間とは別に、テーマを決めて音楽紹介も実施。
今回のレコード紹介のテーマは「橫濱」です




アン・ルイス /「ハッピーヨコハマ」 (1972 Japan)

      (08. 22:46 - アン・ルイス(Ann Lewis)/ハッピー・ヨコハマ)

一般的には80年代以降のロックねーちゃんのイメージが強いかとおもいます。
日米のハーフで出生地は神戸だがその後横浜本牧に引っ越しをしてきたとの事(親御さんが米海軍の関係だったようです)
14歳のとき横浜外国人墓地を散歩中に作詞家のなかにし礼にスカウトされ「なかにし礼商会」第一号タレントになったと。

紹介曲の「ハッピーヨコハマ」はヘルタ・キースリンク作曲とのことですが、他のこの手音源では聞いた事ない人です。
曲調自体はこの時代の空気感をタップリ含んだポップな佳曲ですね。
うわさではデビュー前のキャンディースがバックコーラスをやっているらしいです。

この12年後に「六本木心中」(1984)で一般的な大ヒット曲を引っさげて「アン・ルイス」を世間にしらしめたわけですがその遥かまえの初々しい記録。
ま。言いたい事はただ一つ
「六本木は心中する街だが、横浜はハッピーな街さ」という事!



加島みさ /「ヨコハマの女」 (1970 Japan)



さてところで横浜の女はどんな感じなのさ?という問いに対する答えになぅているのか?そのタイトルもずばり「横浜の女」

なんといっても
「イゼザキ ザキザキ 恋の風」とか
「モトマチ マチマチ 恋いモード」とか
「朝から朝まで二十四時」とか
冴えまくりの歌詞に卒倒すること請け合いです。
今のヤングのサイファーに加わっても決して負けない強い力を一つだけもっていそうです。

なんか「お色気歌謡」なるジャンルの人気盤みたいですね。
(そんなジャンル知らんかった…)


中川浩夫とアンジェラス「さよならリオ」 197? Japan


        ※※※ 動画はなさそうです… ※※※


ヨコハマのナイトクラブ「ナイトプラザ」の箱バンとのこと。
元々は自主制作でプレスされ後にVictorから再発されたようです。(再発といっても70年代)

ネットに何でも大抵の情報がのってる現代では「ラテングルーヴ歌謡名盤!」なんて言葉と共に出てきますね。
フーン。いいんだかわるいんだか…
A面の全くバタ臭さがなく「ヨコハマ~」とねっとり演歌調で歌われる「ヨコハマ物語」はともかくとしてB面の「さよならリオ」はなかなかに快速調なラテン歌謡で現在の「和ものDJシーン」では通用するんじゃないでしょうか?

こうゆうのを田舎のプレバブでやっている「古道具」(とは名ばかりのガラクタ)の中から拾ってくるようになるとレコードコレクターとしては「終わりの始まり」です(汗)


大石晴子「食卓」2020 Japan


キリンジの「癇癪と色気」という”迷”と”名”が50%MIXされた曲がある。意味不明な日本語迷子な歌詞を携えて快速調に飛ばすボッサAOR調の曲。キリンジあたりは完全に作り手側が「おまいら、ここくらいまでこられるやろ?」と演者が舞台裏で意地悪な笑みをこぼしているような感じはする。
この曲はそんなキリンジほどの意地悪さを持ち合わせているわけではないし、つかっているパーツ(言葉)も日常の視界の端に引っかかってくるようなものばかり。
万人にわかりえるような、でもやはり突き放されたような感覚も受けるような不思議な歌詞。

シティー・ポップやそのルーツの音を好きな人にも訴求できる成分を多く持ちつつもそれらの単純コピーとは切ってすてられない何かを持っていそうな感じもする。

オフィシャルの紹介文。
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「大阪生まれ神奈川育ち。生活の機微を、美しくも不思議な響きのメロディで歌うシンガーソングライター。
早稲田大学のソウルミュージックサークルで出会ったR&Bフィーリング、お笑いラジオ番組のヘヴィーリスニングで体得した鋭利な言語感覚、愛犬家。」
とのこと。

オフィシャルのプロモビデオ、これ場所は横浜の中華街だよね?


Akiko「Simply blue」2005 Japan

2005年、ヨコハマは赤レンガにあるMotion Blueでのライブ録音。
リアルタイムの発売時にはDJ系レコード屋でよく見かけた記憶がある。
その印象でいわゆる「ジャジー(?)な雰囲気のクラブトラックに女性Voが乗る」よくあるものかとおもっていた。
最近フトみかけ視聴したら想像とは違い、完全なる生音の、大変に素晴らしいジャス。

日本人女性ヴォーカリストとして初めて、ヴァーヴ・レコードと契約したというAkikoの歌ももちろん素晴らしいがバックの演奏も相当に良い。
メンバーを確認してみるとピアニストに「海野雅威(うんの ただたか)」という名前が。
2020年に「日本人ピアニストがニューヨークで暴漢におそわれ大怪我」というニュースになったその人だった。
確かに本当に素晴らしいピアニストだ。
一日も早い回復と演奏活動の復活をお祈りします。


浜田真理子「Lounge Rose」(2018 Japan)


とにかく「歌がすさまじく上手い」というのが浜田真理子の印象。
声量があるとか、技巧が凄いとかそうゆうことではない。柔らかいけれど絶対にまがらない芯のようものを歌に込めている人という、そうゆう種類の上手さ。
お父さんが島根でスナックやナイトクラブを経営し、そのような場所で歌っていたこともあるそうで、いわば「ルーツとなっている昭和歌謡についての音源を残そう」とつくられた一枚とのこと。

「ヨコハマ・ホンキー・トンク・ブルース」は元々映画のためにつくられた曲で、その映画の主人公である松田優作のバージョン(クソほどカッコイイ!)をオリジナルとして多数のカバーがありますね。作曲はザ・ゴールデン・カップスのエディ藩。

男声で歌うとトム・ウェイツとかバーボンとかの歌詞と相まって"男臭さ"、"ブルース"なんてのが際立ってくるけど、浜田真理子が歌うとさすが通り一遍のブルースでも昭和歌謡でもなくなりますね。
「Lounge Rose」名盤です。


浜田真理子「mariko」(1998 Japan)

「のこされし者のうた」
浜田真理子という歌い手が認知された伝説の1st。「mariko」
これだけは今回のテーマ(橫濱)と関係ない。でも浜田真理子を紹介するなら「のこされし者のうた」を紹介しないと片手落ちだと思いねじ込んだ。

1998に島根の自主レーベルから500枚だけプレスされたCD。そのCDの幾つかは東京のショップに流れひっそりと耳聡い人達の間で口コミのレベルで噂されていたという。
20年後の2018にまさかのアナログリリース。
このレコードだけは「新品をネット注文で」と普段やらない事をしても入手した。

なんといっても「のこされし者のうた」だ。
外国人の恋人がビザの関係で国に帰ることになったことがきっかけで出来た歌のようだが直接的な情景ではないらしい。
感情を出すことが苦手だったと本人がいっているところから、歌にのせる事で心情を吐露した、自分自身への癒しのためのアウトプットだったのかもと。

幼稚園の先生がグズッてる子供の気持ちを代わりに口にしてあげることを「代弁」というらしい。
人は自分の気持ちを適切に言葉に出来ない場合イラついたりストレスを多く感じるようである。
そんなときに自分の気持ちを適切に言い表してくれる何かに出会った時にはホントに嬉しくなってしまうと思う。

いろんな所でDJをやっていて最近思っていることは「世の中には自分が思っているより音楽を必要としている人は
少ないのだな」という事。大人になると「会話作り」「ファッション」の要素で音楽を聴くということがなくなってくる。
つまり本音がでたところでは「音楽が好きな人間が考えるより音楽を欲している人はズットズットすくない」のではないかと思っている。

そんな事を思いつつも、浜田真理子の「のこされし者のうた」は日本語を母語としてきた人間なら10人中8人の背筋を"ゾワッ"とさせるのではなかろうか?過去の失恋の記憶の付近を的確に突き刺し「代弁」してくれているような歌。





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