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2023春アニメ感想まとめ

2023春アニメの感想をランキング形式でまとめています。


<30位> 久保さんはモブを許さない

評価:B-

お気に入りキャラ:たいら玉緒

存在感ゼロの”モブ”男子であったはずの主人公が、クラスのヒロインの久保さんになぜか気に入られてベタベタと構われるという思春期男子の妄想炸裂のような作品。席が隣同士というお約束展開含め、『からかい上手の高木さん』を彷彿させるものは大いにあるのだが、いかんせん主人公が(自分の存在感の無さにあきらめの境地に至っているとはいえ)常に受け身で全く能動的に動かないので、”なぜこいつが”感がハンパない。久保さんが主人公を好きになるきっかけは一応描かれはしたが、それだけでこんなにも好かれてしまうなんて、普通に頑張ってる他の男子があまりにも報われないと思ってしまうのは自分だけだろうか。野暮な意見と思われるかもしれないが、主人公の魅力の描写はやはり少なすぎたと言わざるを得ない。その点、西片は友人に誘われても約束通り高木さんと一緒に帰るような漢気はあったし、こいつなら納得感がやっぱあったんだよなぁ…。


<29位> トニカクカワイイ

評価:B

お気に入りキャラ:有栖川要

アニメ業界におけるGOサインの基準に謎は深まるばかりであるが、トニカク2期である。個人的には主人公の嫁候補が複数いるのに序盤に誰か一人と結ばれてしまう系の作品は大の否定派なのだが(『SA〇』はそういう意味で名作になり切れなかったと思っている)、本作品のように実質的な1択ならそれも容認派。というわけで、そのコンセプト自体を否定する気はないのだが、さしたるギャグ要素もなくひたすらにイチャコラを見せつけられるだけではやはり限界はある。というか、司の過去にまつわるなんとなくシリアスムードな終盤に発表された「女子高生編」が、女子校の先生とかいうラブコメのど真ん中王道を突き進んでてすんごく面白そうなのどういうことなの?これもう完全に順番間違えてませんかね…。むしろこれを2期として放送してくれたらよかったのに。とはいえ、OPとEDは両方ともお気に入りだった件。特にEDは司の歌声がトニカクカワイイのが良かった。


<28位> 私の百合はお仕事です!

評価:B

お気に入りキャラ:西園寺寧々

百合系作品は、メイン2人の排他的な世界観に完全に振り切るか、多人数でのギャグも交えたワチャワチャ感を楽しむのが鉄板であるが、本作品はキャラ数も中途半端でカップリングの組み合わせの焦点も一つに定まらず、ストーリーがどこに向かおうとしているのかが分かりづらかった。さらに、悪い意味でキャラが視聴者に媚を売っておらず、例えばヤンデレキャラとしてネタ化したら映えそうな果乃子も、百合を燻らせためんどくさい女の子としてむしろストレスのたまる場面が多かった。反面、演技ソトヅラを磨いて上手く立ち回ろうとする陽芽ひめは、一見ヘイトを買いそうな設定でありながらその潔さがかえって分かりやすくて清々しく、本作品の清涼剤のようにすら感じられてしまった。総じて、「リーベ女学園」という設定やリアルかつシリアス寄りなめんどくさい感情描写の多さ然り、女性が首肯するための百合系作品という趣が強く感じられ、自分の肌には合わなかった印象である。


<27位> 異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~

評価:B

お気に入りキャラ:キルマリア

ほぼタイトルで出オチ系作品。「俺tueee!!」ではなく「姉tueee!!」というコンセプト自体は正直悪くない。視聴継続のボーダーラインを常に漂っていたはずなのだが、なんだかんだ完走できてしまったのは真夜姉を筆頭にしたヒロインズによるハーレム&ギャグ描写が存外魅力的であったからに他ならない。特に魔王六将のキルマリアのダイナマイトボディと町娘形態がお気に入りで、登場する度に「善哉善哉」と目を細めていた。世間の記憶には新しくないかもしれないが、メインヒロインが肉親の作品といえば『俺妹』というのが自分の中の絶対的事項であり、本作品も最終的に真夜姉を朝陽あさひに選ばせるなら戦争は不可避だろう。血の繋がった姉をメインヒロインに据えるならその覚悟は当然あって然るべきだし、ましてや「作者としては、これが俺の作品だから諦めてくれよ」などという軽はずみな言葉も聞こえてこないことを切に願って止まない(未だ燻り続けるかつての怒り)。


<26位> 王様ランキング 勇気の宝箱

評価:B+

お気に入りキャラ:ヒリング

本編では描写がなされていなかった前日譚や後日譚の詰め合わせ。本編放送時からそうだったのだが、絵柄も特に好みではなく、いわゆる「良い話」の押しつけっぽく感じるところも好きではなかったのだが、いざストーリーが始まると毎回なんやかんやほっこりとした気分にさせられてしまう憎めない作品。であるからして、今期も視聴しないという選択肢は無かったのであるが、特に続きを所望していたわけでもなかったのでこれきりになってしまっても全然構わない。いわば『聲の形』のように、「聞こえない」「喋れない」に真正面から向き合うというよりは、物語の情感のアクセントとして使用しているに過ぎないように感じるのは本作品の小さくない不安要素であるが、カゲや周りの人物たちに容易くボッジの言葉を翻訳させてしまうのは今更ながら最善の手段ではなかったのでは。総じて、本作品は万人受けはしないだろうし、するべきでもないと思えてならなかった。


<25位> マッシュル-MASHLE-

評価:B+

お気に入りキャラ:レモン・アーヴィン

魔法を全く使えない代わりに筋トレだけは毎日欠かさなかった鋼の肉体を持つ主人公が、なぜか魔法学校に入学することになりその身体能力だけで様々な魔法にまつわる試練を乗り越えていくというコンセプトがウリの作品。初期にヒロインも投入したのは英断であり、これが編集者のアドバイスによるものならガッチリと握手を交わしたい。いわゆる”脳筋”ではなく”筋肉一筋”というのがポイントであり、いかにその筋力パワー&スピードで精鋭の魔法使いたちに対抗していくのかという展開の工夫にはなるほどなと感心してしまった場面も多かった(なお、「そうはならんやろ笑→なっとるやろがい!」が大半を占めていた模様)。ただ、初撃のインパクトは強かったのだが、徐々にバトルシーンの連続に食傷気味になってしまい、ヒロインのレモンもおまけ程度の要素で賑やかし要員にもなっていなかったのは残念だった。いっそ、『ニセコイ』の万里花ぐらい暴走してくれたらよかったのになぁ…。


<24位> この素晴らしい世界に爆焔を!

評価:B+

お気に入りキャラ:こめっこ

『このすば』のめぐみんが紅魔の里を出て本家パーティーに加入するまでのあれやこれやの前日譚。安定感は抜群だしむしろ安定感しかないが、スピンオフ作品でありがちなキャラデザの大幅変更(これに関してはむしろ本家より優れたものになることも珍しくないが…)もなく、本当に本家あのままの感覚で視聴できる。欲を言えば、やはりツッコミ役としてカズマ成分が欲しくなる場面も多いのだが、それは制作が決定している3期まで首を長くして待つことにしたい。本作品で改めて思い知らされたのは、めぐみんの妹のこめっこの愛らしさ。自分に真性のロリ属性はなかったはずだがとは思いつつ(のじゃロリは割と好き)、上位悪魔・ホーストよろしくこの子なら眷属になってもいいかもみたいな謎の忠誠心と庇護欲を煽られるのは、彼女の将来は大物になるかもしれないオーラのなせる業か。ちなみに、タイトルの「爆焔」は「爆焔エクスプロージョン」とふりがなを振ってもよかったのかしら…?


<23位> ワールドダイスター

評価:A-

お気に入りキャラ:柳場ぱんだ

タカヒロ味はあまり感じないタカヒロ原案の作品。作品のテーマが演劇であるだけのことはあり、声優陣の”役者”としての本領発揮とたまにヌルヌルになる作画が見所。ただ、個人的には本作品に限らずいわゆるヌルヌル作画はあんまり好きじゃない。これって1周回ってカクカクしていないか?といつも思うのは自分だけだろうか。今後リリースするスマホゲームの宣伝的要素も大きいのだろうが、シナリオ自体はアニメ作品として完結しており、最終話のほぼ全編に渡る「オペラ座の怪人」の上演シーンは特に見応えがあった。それらに大きく寄与したのはやはり声優陣の”舞台女優”としての緊張感に溢れた演技であり、普段聞きなれている声色とは全く異なる迫力、特にぱんだ役の大空直美さんの演技が日常シーンとのギャップも合わさって最も印象的だった。それらも含めて、声優陣が互いの演技で刺激し合っていたであろうことがヒシヒシと伝わってきたのはとても良かった。


<22位> マイホームヒーロー

評価:A-

お気に入りキャラ:鳥栖零花

娘を利用し危害を加えていた娘の彼氏を殺してしまったごく普通のサラリーマンが、裏社会の魔の手から娘を守るために夫婦で戦うサスペンス作品。作風的には小説っぽいと感じたのだが、原作からして漫画だったのには少々驚いた。だが、おそらく漫画だったからこそこうして注目が集まりアニメ化にも至ったのであろうから、図らずも2次元というメディアの偉大さを再認識した次第。哲雄は一般人にしては立ち回りが豪胆すぎるきらいはあるが、それを演劇サークルで培った脚本力と推理小説の知識で強引に納得させようとしてくるのはある意味見事。しかし、つくづく実感するのはこうしたストーリーに全振りしている作品であるなら最後の結末まで見せてくれないと駄目だろうということ。おそらく、どんな事情があろうとも「殺人」という業を犯した哲雄がこのまま逃げ切るという未来は訪れないのだろうが、この続きは原作でというのは納得しづらい部分がある。


<21位> 魔法使いの嫁 SEASON2

評価:A-

お気に入りキャラ:フィロメラ・サージェント

そこかしこに質の高さが見られ、とにかく丁寧に作られているなという印象。「制作会社ガチャ」という言葉は好きではないのだが、本作品についてはそれに恵まれたと感じてしまうのは実に申し訳ない。作画も相変わらず美麗であるし、分割2クールにてじっくりと映像化してくれるというのは、原作ファンにとっては最大級のご褒美だろう。その反面、起伏の少ないストーリー(本人たちにとっては十分ドラマチックなのだろうが…)を淡々と描いているだけという印象は拭えず、アニメ勢としては退屈に思えてしまう場面も多かった。そしてなにより、ハリーポッターの入寮シーンのような導入で始まったチセの学院カレッジ生活には一瞬胸が高鳴ったのだが、そこにエリアスがノコノコとくっ付いてきたのにはかなり萎えた。なんとなくまだ”嫁”というよりは”弟子”の趣が強いので、チセには保護者の目の届かない場所での教師や学友たちへの自然体な振舞いを望んでいたのだが…。


<20位> 地獄楽

評価:A-

お気に入りキャラ:ゆずりは

MAPPAらしいキビキビとしたアクションが映える作風であるが、自分がより強く魅力を感じたのはその設定やストーリー面。なろう系厨二病バトル作品ではけして見られない(←偏見あり)真剣かつ残酷な命のやり取りを、萌え要素を排除しすぎたり、ヒロインを不在にしたりなど極端なこともせず、硬派になりすぎない絶妙な塩梅でエンタメに落とし込んでいたバランス感覚は評価に値し、非常に見やすい仕上りになっていた。さらに、”花”というストーリー全体に渡る小道具要素があり、”人間の花化”という不気味で恐ろしい描写もどこか華やかで芸術的な視点も持てなくはなかったのも作品の雰囲気作りに一役買っており、ことアニメにおけるカラー表現との相性が非常に良かったのは作者も狙ってのことだったのだろうか。人間ドラマとバトルものとしての比重もバランス良好であり、他の例に漏れず1クールという尺が一番の泣きどころになってしまった作品といえるだろう。


<19位> 機動戦士ガンダム 水星の魔女

評価:A-

お気に入りキャラ:スレッタ・マーキュリー

前半戦衝撃のラストからどうやって盛り上げていくのかと期待していたが、その時を待っているうちにいつの間にか1クールが過ぎていたという感じ。とにかく見ていて気持ちいいと思える場面が記憶にほとんどなく、正直視聴がしんどいなと思った時も度々あった。スレッタを筆頭にそれぞれのキャラは立っているので、その掛け合いを見ているだけでもそれなりに見られはしたが、まるで学園もののようなある意味”ガンダムらしくない”雰囲気だった頃が最盛期だったなと思えるのはなんとも皮肉な結果である。脚本がかの『甲鉄城のカバネリ』の大河内一楼氏であることに掛けて、「ガバる」もとい「カバる」ことを冗談交じりに憂慮していた過去が懐かしくもあるが、残念ながらそれは現実のものとなってしまったようだ。かの『リコリコ』のように、百合系作品としてキャラにもっと寄る展開だったならまた違ったのだろうが、「ガンダム」でそれは難しかったんだろうな…。


<18位> Dr.STONE NEW WORLD

評価:A-

お気に入りキャラ:コハク

第3期分割2クールの前半戦。遂に千空たち科学王国が人類石化の謎に迫ろうとしており、物語も終盤戦に突入した気配をヒシヒシと感じる。個人的な本作品の一番の見所は、百夜の世代から千空の世代へと数千年の時を越えて託された壮大なバトンタッチのドラマであるが、今期もやはりその辺りの描写が出てくると強いな、と。反面、敵陣営のど真ん中に強引に乗り込むという展開は、一度選択肢を間違えるとバッドエンドまっしぐらであるが、物語の都合上”そうはならない”のが分かってしまっているのは緊張感の面からは物足りなく感じてしまった(特に「ネズミニ四駆」の活躍は少々都合が良すぎた)。そうした面も含め、壮大な伏線回収というよりは、フィナーレに向けての壮大な辻褄合わせが始まってしまうのではという懸念を払拭してくれる展開を強く望んでいる。あと、コハクはどう見てもいつものビジュアルの方が魅力的なのはやっぱ立ち振る舞いのせいかねぇ…(笑)


<17位> 江戸前エルフ

評価:A-

お気に入りキャラ:桜庭高麗さくらばこま

久々に小清水亜美さんの(文字通り)神懸った演技を堪能できたのは僥倖に尽きる。高耳神社のご神体であるエルダが昼夜逆転の引きこもり気質のオタクかつ怠惰なコミュ障というのは社会不適合者まっしぐらだが、小糸に事あるごとにお説教をもらいながらもその立場と美貌で全て許されて甘やかされてしまうのはなんとも羨ましい限りである。当初はエルダのボソボソとした喋りとやる気のなさに若干退屈も感じていたが、徐々にそのオタク気質もはっちゃけ始め、自分の欲望に任せて控えめながらも数々の暴走をかますようになってからはストーリーとして面白くなり、いつのまにかこちらもクセになってしまった。エルダの語る昔話が「家康くん」の健在だった江戸時代初期に偏っているのはちと気になるのだが、エルダを召喚したのは他でもない彼だったのだし、きっとその時代に思い入れが強いのだろう。まあ、戦時中の話とかになるとハードになるだろうしなぁ…。


<16位> ゴールデンカムイ

評価:A

お気に入りキャラ:杉元佐一 アシリパ

杉元とアシリパの相棒の契約が更新され、二人が再び共に行動するようになるとやはり何がどうなっても面白いという安定感がある。時に残酷に命が奪われてしまう場面も多けれど、アシリパ監督による活動写真の撮影→恩人である谷垣と別れエノノカの元に残るチカパシ→インカラマッの出産という流れは素晴らしかった。特に活動写真の脚本を模するように谷垣がチカパシを見下ろしながら大粒の涙を零す場面は涙抜きには語れず、これほど”勃起”という下ネタを誇らしく思える日が来るとは思わなかった。そんな美しいドラマへの祈りが作者にも通じたのか、大いにヒヤヒヤさせられながらもチカパシに託された願いどおり谷垣が命懸けでインカラマッを守り無事子供が生まれた瞬間には心底安堵した。改めて思うのは、本作品は1話1話が重厚な人間ドラマの巣窟であるということであり、時に暴走はあれどそれを最後まで見届けたいと心から思った次第である。


<15位> 青のオーケストラ

評価:A

お気に入りキャラ:小桜ハル

「吹奏楽」ではなく「オーケストラ」。これだけでも差別点としては十分であり、さらに、その明確な相違点である「弦楽器」をキーアイテムに選んでいる時点で、マーケティング戦略としては御の字である。しかし、巧みなヴァイオリンの演奏シーンやオーディションの場面といったいわゆる「見せ場」にグッと惹き込まれるのは事実であるが、数多のスポーツ作品が内包する課題である「でもそれって競技としての魅力であって作品としての魅力ではないよね?」との同義から抜け出せてはおらず、作品自体の人間ドラマの観点からは大きく惹かれるものには今のところ乏しく感じた。さらに、演奏シーンの大半を担う3DCGモデリングの出来映えがかなり粗く、視聴していてその度に萎えてしまう。主要キャラに専任の演奏者をつけるなど音作りへの拘りで素晴らしい面もあるのだが、アニメ作品としてはあらゆる要素が物足りないのは事実であり、大きな話題を生むのは難しいだろう。


<14位> 六道の悪女おんなたち

評価:A

お気に入りキャラ:姫野莇美あざみ

気弱な主人公が「“悪女”にだけ無条件でモテる能力」を得て、不良ばかりの高校で様々な騒動に巻き込まれていくという異次元のアイデアがウリの作品。キービジュアルからもどことなくネタっぽさと安っぽさが伝わり視聴継続は怪しいと思っていたが、“自分にだけは好意的”を地で行く展開はなかなか男心の的を射ており、蓋を空けてみれば主人公の前だけで見せる悪女たちのしおらしくて可愛い普段とのギャップにすっかりハマってしまった。放送中に本屋に原作がズラッと並べられているのを見かけその巻数に驚いたのだが、なんと全26巻とのこと。自分と同じくそうしたギャップにハマった読者がそれだけ多かったということだろうか…。主人公が能力を悪用して調子に乗らないのも好感が持て、『東リベ』の武道のように喧嘩が弱いながらも勇気と漢気で強い者に立ち向かうという構図はやはり不良漫画の王道であるし、惚れる女性がいるのも納得できるものはある。


<13位> 山田くんとLv999の恋をする

評価:A

お気に入りキャラ:木之下茜

まず目を惹かれたのは清楚な色気に溢れた秀逸なキャラデザであるが、『ちはやふる』シリーズの濱田邦彦氏の仕事だと知り大納得(なお、監督も同じ)。逆に、女の子全員が魅力的すぎて作中での美人度が図りづらくて困ったぐらい。本作品は、女性→男性の目線では一目惚れに近い描写がなされ、男性→女性の目線では丁寧に惹かれていく過程を描写しているのできっと女性向けという比重が強めなのだろうが、男性目線からもヒロインがきちんと可愛く描けているのは高評価点。みっともなく酔いつぶれたりメンタルやられて泣いたりするマイナス描写が多くてもきちんとほっとけないという感情が揺さぶられるネトゲ初心者も自分の可愛さを自覚した我儘お姫様も大学生にもなって一人称が自分の名前のイタい婚活女子も眼鏡を外して髪を解いた時の破壊力がえげつない根暗委員長も皆魅力的であった。まあ、「ただしイケメンに限る」が常に脳裏をよぎるのは玉に瑕だったけど…(白目


<12位> 事情を知らない転校生がグイグイくる。

評価:A

お気に入りキャラ:西村茜

コンセプトの中核を成す転校生の高田くんが頭おかしいレベルで周りの空気を読めてないけど、その存在が西村さんにとっては救いであり、彼女にとっての”ヒーロー”そのものになるという展開には大いに心が温かくなった。昨今は「高木さん系」と呼ばれる作品のようにヒロインが主人公を振り回す作風が主流となっているが、本作品のように逆にちょっと変わった主人公がヒロインを振り回す作風は意外と珍しい。そういう意味でも新鮮な気持ちで視聴をすることができ、やはりいたかというべき美味しいポジションで存在する高田くんの姉やシングルファザーとして内気な娘を大切に育てる西村パパなど、設定のアクセントもよく練られていた。特に”味玉”のくだりなどは、「父と娘」という「母と娘」とはまた違うニュアンスの妙に深く首肯し感涙不可避だった。改めてお互いを意識し出した後の二人も気になって仕方がないが、きっと温かい未来が待っているに違いない。


<11位> MIX MEISEI STORY 2ND SEASON ~二度目の夏、空の向こうへ~

評価:A+

お気に入りキャラ:西村勇&西村拓味(西村親子)

古稀を越えてなお衰えないあだち充先生には、そろそろ真剣に国民栄誉賞を検討してもいいのでは。冗談抜きでそう思ってしまうほど不変のあだちイズム満載の本作品には、常に尊敬の念に堪えない。浅倉南役の日髙のり子さんがナレーターを務めていたり、お気に入りキャラにも挙げた西村親子が登場したりと、数々の”前作”の要素であの時代というノスタルジーに存分に浸らせてくれるばかりか、「明青」という物語を受け継いだ投馬たち現役世代の物語もそれ抜きでも十分主題を張れるクオリティであり、あだち充先生の集大成としては文句の付けようがない。原作勢としては、これから訪れるとある展開が常に胸の奥底に漂いふと心に影が差す瞬間もあるのだが、きっとこのアニメを楽しんでいるのはそんな原作勢が大半であろうと想像している。”二度目の夏”という今しかない瞬間を見届けることのできる貴重な時間を、引き続き後半戦でも楽しみにしていきたい。


<10位> 鬼滅の刃 刀鍛冶の里編

評価:A+

お気に入りキャラ:栗花落つゆりカナヲ

「あらゆる変化はほとんどの場合劣化だ。衰えなのだ」という鬼舞辻󠄀無惨の台詞はあながち否定できないと思ってしまった件。それはさておき、ufotableによる超絶作画の戦闘シーンや大体滑っているギャグ描写など、良くも悪くもいつもの鬼滅といった趣であり、大きな不満点は特にあらず。原作ファンからはテンポの悪さを指摘する声もあったようだが、アニメ勢としてはそこまで気にはならず、相変わらず十二鬼月の鬼は中々首が胴から離れないなとしみじみと感じたぐらいだろうか。炭治郎の刀が「三百年以上前の刀」という男の浪漫をくすぐる代物になったのは一大イベントだと思うのだが、そこを割と淡々と描写してしまうあたり吾峠呼世晴ごとうげこよはる先生はやはり女性なのかしら…?なお、花澤香菜さんによる甘露寺さんの演技は近年でも有数のハマリ役だった気がする。自分だけかもしれないが、聴いてて花澤さんじゃなくて甘露寺さんってちゃんと思えたのは良かった。


<9位> 天国大魔境

評価:A+

お気に入りキャラ:キルコ アンズ

『それ町』の石黒正数先生の最新作。序盤はとにもかくにも“おねえちゃん”ことキルコの魅力に全振りしている印象だったのだが、「壁」という要素の登場後は話のスケールも大きくなり、”世界の謎”という魅力が新たに付加されることとなった。しかし、やはり自分はマルとキルコの淡い恋心を踏まえた微妙な距離感でのバディ的な関係性を描いてくれさえすれば割と満足であり、少なくともここまでの展開では中と外の関係性も不明だったので、あまり「壁」という描写の必要性を感じなかった。そういう意味では、”ここからどうなるんだろう”という期待感はすごかったのだが1クールアニメの尺においては中途半端な描写に留まった印象が強く、絶賛するとまでには至らなかった次第。なお、ED映像の最後の方でアンズが水泳帽を脱ぐ動きがめちゃくちゃツボであり、その1点をもって一気にお気に入りキャラになってしまった。こういうフェチズムを刺激する描写っていいよね。


<8位> 僕の心のヤバイやつ

評価:A+

お気に入りキャラ:山田杏奈

序盤は市川のヤバさ、キモさ、イタさが満遍なく許容範囲外だったのだが、そこは徐々にマイルドになっていったので後は山田の自由奔放な言動を愛でるだけの簡単なお仕事だった。ていうか、市川が猟奇本を愛読していた理由の説明が最終話なのが遅すぎだったのでは。もっと早ければここまでドン引いてなかったのに…と思いつつ、大きな山場であるのを考慮すれば致し方なしか。山田はコミュ障というわけではないので、声が上ずりアワアワな態度になるのは相手が市川だからなんだよな…というのは実に愛らしいと思う反面、OP曲の「斜陽」という言葉選びがどこか物語に暗い影を落としているように思えるのもまた事実。今後の展開では「そこは察しろ」といういけずなことは言わずに、山田が市川に惹かれた理由をハッキリと描写してほしい。「karte〇(話数)」の演出は実に秀逸であり、各話の盛り上がりのピークにそれを持ってくるのはセンスしか感じなかった。


<7位> おとなりに銀河

評価:A+

お気に入りキャラ:五色しおり

『甘々と稲妻』の雨隠ギド先生の最新作かつ今期の個人的贔屓枠。古い木造のソーシャルアパートの一つ屋根の下で美貌のヒロインと生活するという『めぞん一刻』を彷彿とさせる夢のような設定は、同作品をこよなく愛する自分に刺さらないはずもなく、漫画家とアシスタント、大家と住居人、そして不慮の事故による婚約など、オタク心の琴線に触れるあらゆる要素のデンプシーロールを見事にもらってしまった。普段ならお気に入りキャラになりそうな従妹のちひろが良い意味で出張ってくるのを密かに期待していたのだが、思いの外分をわきまえてしまったのはちと残念。その分、かなり若干世間離れした五色さんの妄想と憧れに溢れた恋の描写がひたすらに愛おしかったのでよしとする。小学3年生の妹のまちもいい子すぎて最近そういうのがすごく心に刺さる件。なお、最終話後のCMで原作最終巻のネタバレを盛大にかましたのは販促戦略としては大いにアリだったかと。


<6位> アイドルマスター シンデレラガールズ U149

評価:S-

お気に入りキャラ:佐々木千枝

「U149」=“149センチ以下”。12歳以下の小学生のみで構成されたメンバーはニッチな需要を狙ってのものかと思いきや、その内容は王道路線一直線、いやこれは原点回帰というべきか。とにもかくにも、小さなアイドルたちの思春期と呼ぶにはまだ早いあどけなさと背伸びをしたい心を的確にシナリオに落とし込み、毎回のように「いい話だったなぁ…」と感動すら与えてくれたのは良い意味で想定外だった。実際、シリーズ構成としては各キャラ回を順番に回していき、最後は集大成のライブ(手描き!)で締め括るという「いつもの」であったが、作画面の安定感はもちろん、キャラの魅力の掘り下げや大人の立場からの彼女たちとの関係性などを非常に丁寧かつ愛に溢れる描き方で描いており、目尻に光るものが浮かんだのは一度や二度ではない。総じて、温故知新と評するに相応しい、「アイマス」というコンテンツの歴史と底力を改めて見せつけられた良シリーズであった。

【U149総評】

橘ありす
知名度的にもメインポジションに据えられたのは順当な判断。いわゆる「千早枠」のキャラであり、「アイドル」以上に「ヒロイン」としての性質が強かった。あんな風に親子の話をされるとどうしても涙腺が緩んでしまう。

櫻井桃華
世間では「桃華ママ」として全国各地にダメ人間を量産しているらしい。でも、たしかに包容力のある小学生っていうのもいいもんやね。原作では、「プロデューサーちゃま」と呼んでくれるらしい。何それ、最高かよ…。

赤城みりあ
きっと、この子の心臓には毛が生えているに違いない度胸と愛嬌を兼ね備えた性格は、切り込み隊長の素質に溢れすぎている。黒沢ともよさんの演技も、この路線の方が向いてるのではと思えるぐらいハマっていた。

的場梨沙
なるほどこれが噂の「メスガキ」なんですね。「早く大人になりたい子供」という本作品の主要テーマにもなり得る要素を持っているエース枠。重度のファザコンなのは微笑ましいが、パパのプレッシャーもすごそう(笑)

結城はる
スポーツが得意で男の子っぽいいわゆる「まこと枠」。こういうポジションの子を安易にショートカットにしなかったのは好判断。思春期を迎えるとキャラがガラッと変わりそうなので、ある意味貴重なひと時なんだろうな…。

佐々木千枝
カリスマJKアイドル社長・桐生つかさがベタ褒めして執拗に引抜きを狙っていたが、こんな健気で有能な子ならむしろ自分が欲しい。手をそっと握るボディタッチが絶妙であり、何気に甘え上手の素質があるのも侮れない。

龍崎薫
活発な性格ながら料理も上手な一言で言ったら「娘になって欲しいアイドル」。なんとなく「お兄ちゃん」がいそうな雰囲気もあったが、妹でもいいな…(重症)。Pのことを「せんせぇ」と呼ぶのは、これはズルイやろ…(汗)

市原仁奈
CV久野美咲さんの「ごぜーます」口調が反則的に耳に残る認知度の猛者。キャラ回の一番手だったのでその後の扱いは控えめだった気もするが、その口調で常に存在感はバツグンでありキャラ付けの大勝利を深く実感。

古賀小春
お姫様に憧れるいわゆる「不思議ちゃん」。こういう声質の子は、中の人の実力が映えるわね。ミュージカル調のキャラソンはトップクラスにお気に入り。このまま大きくなっても、もうそれはそれでいいのではなかろうか。


<5位> スキップとローファー

評価:S-

お気に入りキャラ:江頭ミカ

地方から上京してきたちょっぴりズレてる女の子が主人公のスクールライフ・コメディ。自分は原作所持勢なのだが、今回のアニメ化で気になった点が2点ほど…。1点目は、黒沢ともよさんによる美津未の演技が最後までイマイチしっくりこなかった点。黒沢ともよさんの演技は神懸っている時と若干大根気味な時のギャップがけっこうあり、気だるげな雰囲気の表現とか逆に感情が高ぶった時の演技なんかはすごく上手いんだけど、美津未のキャラではそれを活かしづらかったのが原因かしら…?2点目は、原作漫画からの伸びしろがあまり感じられなかった点。元々キャラ萌えというよりはストーリー重視の作風なのもあって、本当にキャラと背景に色が着いて動いて喋っているというだけの違いしか感じられなかった。元々すごく好きな作品だったのでP.A.WORKSによる原作に忠実で丁寧な作りには大いに感謝しているのだが、他の原作ファンの意見も是非聞いてみたい所存。


<4位> BIRDIE WING -Golf Girls’ Story- Season2

評価:S-

お気に入りキャラ:イヴ

常に予想の斜め上を行くトンデモゴルフストーリーと見せかけて、序盤から終盤にかけて緻密に伏線の設置とその回収を遂行する完成度の高いシナリオには正直驚かされた。イヴの波乱万丈な半生そのものがストーリーとしての魅力だけでなく親世代からの秘密と仕掛けを内包しており、それを徐々に明らかにしながら連動するようにショットも進化させ、最後には彼女にゴルフを教えた人全ての技術と想いを融合させた究極のショットに収束させるという離れ業は見事。ゴルフの競技描写も連戦連勝というわけではなく、時折訪れるアクシデントや決め時を絞ったメリハリの効いた展開で視聴者を飽きさせず、スポーツ作品でありがちな「先の展開が読めてしまう」という状況にほとんどならなかったのもこれまた素晴らしい。世間的にはネタ作品として扱われがちな本作品であるが、その実荒唐無稽さと緻密さを奇跡的に融合させた魅力的な作品として最大級の賛辞を贈りたい。


<3位> 女神のカフェテラス

評価:S

お気に入りキャラ:鶴河秋水つるがあみ

ラブコメ界の伝道師、瀬尾公治先生の最新作。導入部のワチャワチャ感に安心していると唐突なシリアス展開が訪れるのではとビクビク警戒してしまうのは瀬尾作品あるあるよね(笑) 5人全員「正ヒロイン」という作品紹介どおり、順番に見せ場を作りながらストーリーが進んでいくのは『五等分の花嫁』の如き正妻戦争を彷彿とさせるが、「5」というヒロイン数には販促戦術的な観点から何か理由があるのかしら…?時折、各ヒロインのちょっぴりシリアスなキャラの深掘りも挟みながらワチャワチャ感を失うことなく放送が終了したのは一安心であり、正にこういうのでいいんだよこういうのでそのものである。何より、最終話における未来の1シーンが語るように、5人のうち誰か一人をきちんと主人公に選ばせる気概がありそうなのが素晴らしい。2期の制作が早くも発表されたのも大納得なので、続きを楽しみに待ちたい(そして結末フィナーレは劇場版でというのが黄金パターンか)。

【ヒロインズ総評】

小野白菊【ランキング3位】
いわゆる家庭的な子。公式HPでは最初に名前があるのは、昔からの「Familia」との関係性ゆえか。脱ぎ魔で酒乱の気があるのはプラスにもマイナスにもなり得るが、清楚感MAXな黒髪ロング時代のビジュアルは実に魅力的であった。家庭的かつ巨乳という分かりやすい強みの分、意図的に戦闘力を調整された感も?

月島流星りほ【ランキング2位】
いわゆる世話焼き気質な子。OP映像ではセンターポジションにいたり、主人公ラブ勢になる時期も早かったりと、主人公の嫁候補としては暫定でトップを走っているのでは(世間的なキャラ人気も高そう)。自分に厳しくてなんだかんだ主人公を甘やかしてしまう優しい性格なのは、『Fate』の凛を彷彿させるかな。

鶴河秋水【ランキング1位】
いわゆるアホの子。でもそこが可愛い。彼女にだけキャラ回がなかった気がするし、今のところ不遇な感は否めないが、ここからの大逆転という大穴に個人的には賭けたい。回を追うごとに胸が大きくなっていた気がするが、きっとまだまだ成長期なんだろうなぁ…。主人公に胸を揉まれるシーンは非常に良かった。

鳳凰寺紅葉あかね【ランキング5位】
いわゆるクールでロックな子。こういうキャラが他のキャラに先んじて主人公ラブ勢になるのはかなり意外だったが、さすが勝負所を弁えている感じである。個人的なフェチズムへの訴求力には欠けるので残念ながらこの位置にいるが、世間的には人気があってもおかしくはないと思う。セカンドアタックに期待。

幕澤桜花【ランキング4位】
いわゆるツンデレな子。放送前はビジュアルの雰囲気からメインヒロインだと思っていたが、意外と前に出てこなかったのは意外だった。このままだと『五等分の花嫁』の五月的なミスリード役にもなれないし、2期では露骨なテコ入れ展開が始まるか?唐突な双子設定も考えようによっては使い道はありそうかも。


<2位> 君は放課後インソムニア

評価:S

お気に入りキャラ:曲伊咲まがりいさき

”二人だけの時間と空間”が心地よい作品はやっぱり強いわね。中見と曲の両方とも社会不適合者というわけではないし、”二人ぼっち感”はそうでもないのだが、中見と一緒に曲に恋をしてしまいそうになる感覚はなんとも胸の辺りがムズムズしてこそばゆい。であるので、主人公に憑依する見方が得意な人ほどハマれる作品だったのでは。「カメラ」という小道具も終始効果的に働いており、ファインダー越しに覗くヒロインの”輝き”へのフォーカスであったり、作業時の台詞がないからこその静謐とした空気感であったり、主人公の背中を見つめるヒロインという構図であったりと、演出家なら涎を垂らしそうな見せ所の目白押しであった。総じて、回によってはほとんど中見と曲しか登場しないこともあるなど、”引き算の美学”を心得た完成度の高い作品であり、良い写真と同様に伝えたいものだけを丁寧かつ鮮明に抽出した非常に心が惹き込まれる作品だったといえよう。


<1位> 【推しの子】

評価:S+

お気に入りキャラ:有馬かな

初回の90分放送は大英断であり、劇場で先行上映されたのも大納得。もうこの導入部だけでも十分に一つの作品として成り立っており、一気に心を掴まれた。赤坂アカ先生が脚本に全振りしたらこうなるのかと唸らされるストーリーとキャラ設定の仕掛けが随所に散りばめれられており、「ファイヤー→アイスストーム→」と引きが新たな引きを呼ぶ目の離せない展開の波状攻撃は見事の一言。このまま、大連鎖の末の「ばよえ~ん」まで突っ走って欲しい。アニメ化の企画自体は随分前から発表されていた気がするが、こうして十分な準備期間を経て満を持して覇権を狙いに行ける作品が果たしてどれだけあるのか。原作者の両先生や制作会社の動画工房にはもちろん、その期待に見事に応えてくれた全ての関係者の方に賛辞と感謝の言葉を贈りたい。当然のように2期制作も決定して何よりだが、今期の放送が終わったら原作を購入しようと思ってたのはどうしようかな…(汗)

【ヒロインズ総評】

アイ
アイドルとしての最盛期に舞台から姿を消した絶対的なメインヒロイン。他のヒロインがのびのびとサブヒロイン化できるのは彼女の存在のおかげであり、その輝きは色褪せることなく神格化は加速する。本作品における仕掛けの中核を担っており、他の全てのヒロインをアクアにとってのサブヒロインにさせた価値は計り知れない。

ルビー
アイの面影を受け継いだ容姿端麗なヒロインであるが、少なくとも現実の立場的にはアクアの実妹であることがヒロインレースにおいてはかなりの弱み。もちろん、これは一般的な常識ではという限りなので、赤坂先生の手腕次第では前世の記憶も含めて掟破りの豪快な巻き返しもあるか。口元の表現の作画が可愛くて良き。

有馬かな
もはや存在そのものがサブヒロインになるべくして生まれてきた絶対的な裏メインヒロイン。その健気さもその卑屈さも全てが表にひっくり返った時のための種蒔きに過ぎない。裏ではアイ、表ではあかねにと二重に先を越された立場である以上、もうここからは何がどうなっても魅力的な展開にしかならないのが末恐ろしい。

黒川あかね
とにもかくにも、7話の引きの演出が最の高すぎて1期の瞬間最大風速だったまである。本作品におけるEDのイントロを各話の引きに重ねる演出は毎度素晴らしいが、この時のそれは別格であった。今期は『ワールドダイスター』と合わせ、石見舞菜香さんの演技の引き出しには驚かされた。アクアの「彼女」としてのムーブに期待大。

MEMちょ
この子がこんなに前に出てくる存在になるなんて完全に予想外だった件。年齢的なアレもあり他のヒロインより人生経験が豊富なので一歩引いた立場としての言動が多いが、単騎でも戦えるポテンシャルは十二分に秘めている。ユーチューバーという現代風の要素を違和感なく縁の無い層にも馴染ませた功績はとても大きい。


<劇場版3位> ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY

評価:A-

お気に入りキャラ:三船栞子

わずか30分のOVAをわざわざ劇場で上映というのはちとどうかと思うところもあるのだが、せっかくだからと観に行ってしまったチョロい客の一人である以上、何も言えまい。短尺ではありながら、個人的にお気に入りキャラの一人である栞子にスポットが当たっており、いつものちょっとお堅い可愛さとそこから少しだけ脱却して新たなステージへと進んだ彼女を描いたシナリオには、存外満足度は高かった(真面目系キャラ+八重歯のギャップはやはり推せる)。ただ、『NEXT SKY』と銘打った以上は何かもっと革新的な風を期待してしまったのだが、それはこれからの展開に期待か。「スクスタ」もサービスを終了し、今後の活躍の場が憂慮されたニジガクであるが、引き続き新作アニメが制作されるなら追ってはいきたい。そして、新たにせつ菜のCVを担当している林鼓子さんの演技は、楠木ともりさんの時と聞き分けが困難なほどで驚いた。これには素直に敬意を表したい。


<劇場版2位> 青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない

評価:A

お気に入りキャラ:双葉理央

「かえで」から「花楓」へと託された想いに向き合い、今ここにいる「花楓」が”今の自分”というアイデンティティを取り戻すまでの物語。とにもかくにも、久保ユリカさんによる演じ分けの妙が本編の見所の大半を担っているのは間違いなく、こちらとしてはその熱演に込められた愛と解釈を粛々と受け止めればいいだけであったのには、感謝と労いの言葉を贈りたい。兄妹の絆や麻衣を筆頭とした周りの人々との関係性から描かれるのは、かつての「花楓」でも「かえで」でもなく、今の「花楓」という第三の存在である。「思春期症候群」という不可思議な現象抜きで語られるその物語は普遍的でありながらも、これまでのストーリーの積み重ねを存分に感じることのできる後日譚として最適解を見せてくれたといえるだろう。ただ、昨今のCloverWorksの活躍ぶりと比すると、作画・演出のクオリティには若干物足りなさを感じてしまったのだが、これは贅沢な悩みなのだろうか…。


<劇場版1位> プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第3章

評価:A+

お気に入りキャラ:ベアトリス

『ガルパン』だから許されたであろう劇場版での全6話構成の第3章。今年のエイプリルフールネタでは双方で相手のキャラを模してのキービジュアルが公開されたように、互いに意識し合うところはあるのかもしれないが、もうここまで来たら最後まで付き合うしかないと思わされている時点で既に敗北なのである。1章と2章の間が約7か月だったのに対して、今回は約1年6か月ぶりの公開と鑑賞中もストーリーを思い出すのに大分苦労したのはお察しだが、思いの外楽しめてしまったのがなんだか悔しかった。最近は自分もゆるい作品に慣れ過ぎてしまっているというか、こうしてキャラ設定の魅力にフォーカスしながらも陰謀渦巻くロンドンの最前線でのスパイ活動というシリアスを真っ当に描く作風には改めてハッと目を覚まされる思いであり、かえってじっくりとその醍醐味を味わえるのは良いことなのかもしれない。ただし、他の作品はけっして真似をしないように…‼


<2023春アニメ総評>


今期は全体的にレベルの高い作品が多く、ランキング的には下位の作品もほとんどの場合で作品としての芯は通っており、アニメ作品全体のクオリティの底上げが強く実感できたクールであった。その中でもやはり、特筆すべきは『【推しの子】』の抜きん出た存在感であり、これだけ毎週の放送が待ち遠しく感じられた作品は久方ぶりだった気がする。

1クールを通じて、序盤から終盤にかけての評価の上げ幅が大きかった作品の代表格は、『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』『僕の心のヤバイやつ』。逆に下げ幅が大きかった作品の代表格は、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『青のオーケストラ』。

『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』は、当初こそ「ああ、またアイマスやるんだ」ぐらいの認識だったのだが、回を追うごとに単なるロリっ子アイドルとは侮れない、むしろそれを活かしたこの年代の子だからこそ描ける王道展開の連続に夢中になり、改めて「アイマス」というコンテンツとしての底力は元より、まだまだ盛り上げてやるぞというスタッフのやる気が伝わってきたのが非常に良かった。最近は3DCGの技術もどんどん上がってきているとはいえ、やはり丁寧に作画された手描きのライブシーンを見られる喜びは何物にも代え難いものがある。

『僕の心のヤバイやつ』は、最初は主人公の性格が残念すぎて評価は低かったのだが、序盤を過ぎればその描写も控えめになり「山田」というヒロインの魅力が際立つこととなり、そこからは毎週の放送が楽しみな作品に完全にメタモルフォーゼした印象。今期のお気に入りヒロインとしては、有力候補として『おとなりに銀河』の五色しおりと『君は放課後インソムニア』の曲伊咲まがりいさきがおり、ちょくちょくサムネ候補の画像を収集していたのだが、そこに最初から山田を加えておかなかったことを後悔する結果に。とはいえ、最終的にはあの子が全部持っていったのは本記事のサムネからもお察しのとおりである。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の後半戦が大きく期待外れだったのは作品の感想でも述べたとおり。『青のオーケストラ』についても、『響け!ユーフォニアム』と比較するまでもなくアニメ作品としての実力は小さくまとまってしまい、NHK交響楽団に演奏やインタビューを依頼する予算があるのなら、アニメ本体のクオリティの底上げに全力で注力して欲しかった(ただし、ストーリー自体は割と面白い)。

今期の楽曲面でも、先頭で牽引したのはやはり『【推しの子】』。OPの「アイドル」は世間的にも大ヒットを記録し、特にその歌詞が素晴らしかった。

「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」
嘘か本当か知り得ない
そんな言葉にまた一人堕ちる
また好きにさせる

【YOASOBI「アイドル」】

アイの人生における価値観そのものをダイレクトに落とし込んだその歌詞は、是非フルで聴くことをオススメしたい。

EDの「メフィスト」はイントロが全て。返す返す、各話恒例の引きに重ねる演出は大変素晴らしかった。むしろ、曲の本体部分はそこまでお気に入りではなかったのは内緒(笑)

そして、なんといっても今期の楽曲といえば、この「Full moon…!」。有馬ちゃんの透き通った歌声が心に染み渡る。ところでこれは、作中の何年ぐらい前の設定のPVなんだろうか。少なくとも中学生以上には見えるので、持ち歌としては最新の部類に入るのかな?個人的にはぶっちぎりで今期で一番のお気に入りの楽曲であり、キャラソンCDの発売日が待ち遠しい。最終話のライブシーンでももっと有馬ちゃんの歌声が聞きたかったなぁ…。実は、歌詞の「白く眩しく」の部分を「しろくまぼしっく」とずっと聞き間違えていて、不思議な言葉選びだけど可愛らしい歌詞だなぁと感心していたのがちょっと恥ずかしい(汗) 
そういえば、有馬ちゃんがアイドルとしてのイメージカラーで「白」を希望した理由って、この曲のサビの「白く眩しく貴方の心を奪う光になりたい」という部分に由来するのかも。そう考えると、最終話のライブシーンで「アンタのサイリウムを真っ白に染め上げてやる」とアクアに向けて心の中で力強く宣言したシーンもより感慨深くなって、一段と名シーンに感じられるなぁと。

『スキップとローファー』のOP「メロウ」は楽曲の良さもさることながら、サビ部分の二人が跳ねて踊るシーンの作画がめちゃくちゃ良かった。この辺りは、さすがのP.A.WORKSやね。これに関してはきっと他のところでも絶賛されているだろうから、このぐらいにしておきます(笑)

『MIX 2ND SEASON』のOP「Starting Over」もお気に入り。歌詞の「明青」と「名声」を掛けているところとかベタだけどいいなぁ…。本作品は、野球としての動きがきちんとそれらしく作画できているのが高評価点。そんなの当たり前って思うかもしれないけど、競技としての動きが残念作画になってしまうスポーツ作品って意外と多いのよ。OP映像の西村のピッチングフォームなどは、特に力の流れが伝わりやすくてとても良い。

『トニカクカワイイ』のED「夜のかたすみ」は、文字通りトニカクカワイイ(笑) キャラソンとしては満点と言って良いのではないでしょうか。何気に再生数が凄いんだけど、やっぱ本作品ってけっこう人気あるのかな?まあ、じゃなきゃ2期なんかやらないだろうけど…。

さて、相変わらずのクソ長記事になってしまいましたが、ここまで読んでくれた方はありがとうございました。そして、お疲れ様でございました。
もしよろしければ、コメントなどいただけると大変嬉しいです。
引き続き、よろしくお願いいたします。



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