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もしかして: 愛してる

私は落ちこぼれだ。
どこへ行っても役立たず。

きっと陰口言われてるだろう
あいつマジ、ダメダメだわって。

だからかな、ゲーム・ネット依存症だ。
機械にお世話になりっぱなし。

現実逃避先が私の現実。

まだ夢を見ている。
永遠に好きな世界で生きていけたらなって。

機械は私が落ちこぼれだからといって態度を変えない。
仮に私がすごい人になったとしても、態度を変えない。
その淡々とした対応に癒される。




この間、電話保留音のグリーンスリーブスに惚れた。

一見機械的で、感情がないような、ちょっと怖い単調さ。

けれど思い返すと

「私だって、何も感じていないわけじゃないのよ?」
とでも言うような、物悲しく不安げなメロディ。

どこか疲れたような静けさが、優しかった。




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3DSLLを愛用してきた。
思い出がたくさんある。

買ってすぐに
ディズニーシー旅行に連れて行ったら、壊れたこと。
その後も数年に一度くらい、故障で修理に出したこと。

他にも色々あった。
すれ違い通信、インターネット、お絵描き。

3DSの前に使っていたゲーム機は
ゲームボーイアドバンスだったから、
通信に、ケーブルやワイヤレスアダプタが必要だった。

3DSには必要ない。
他の3DSとすれ違っただけでできる通信もある。

ウェブを見られる。
写真も撮れる、絵も描ける。
画面が発光していていつも明るい。

ゲームボーイアドバンスしか知らなかった私には
十分すぎるハイテクさだった。

なので最初はよく分からなかった。
購入からだいぶ経ってからインターネット機能に驚き、
少しずつ機能を知っていった。

DSソフトも遊べるし、
ダウンロードでもソフトを買えるから
遊べるゲームは幅広かった。

ゲームの思い出は、
ファミコン→ゲームボーイアドバンス→3DS
と、続いている……。

そのうち3DSの修理サポートが終わるだろうな……
と思っていたら、もう終わっていた。

……早いなぁ。

壊れたらもう、修理に出せないのか……。



パソコンの思い出……


初めて小学校にパソコンが現れたときには、
パソコンは人気者で、いつも人に囲まれていた。

ゲームができるように設定されて
教室に置いてあった、はず。

私はパソコンに興味があったけど
パソコンは大人気だから、近づけるはずがなかった。

その後、たしか中学校でパソコンを習った。
一人一台とはいかず、交代制だっけ?
一人が操作し、もう一人が見守るような。
あんまり自由には触れなかった。

だから両親にパソコンをねだって、
ノートパソコンを買ってもらった。

初めてのパソコン。

でも設定が難しくて投げ出してしまった。
私はパソコンを放置した。

パソコンどうするの、
あなたが買うって言ったんでしょって
母に言われつつ興味が薄れていた。

そのあと
父が設定してくれたので使えるようになった……。

パソコンで、音楽を聴いた。
動画を見た。
笑って、感動して。
でも傷つく現実もたくさん知って。

ある出来事がきっかけだったか、そうでもなかったか。
私は喧嘩師になり、多くの人と言い合いした。

他にも、色々なことがあった。
ネットに心を折られたと同時に、心の拠り所であった。


それから時は流れ、
ずっと使っていたパソコンも、古くなった。

ファンがずっと回っていた。
使うと熱くなる。
読み込みはゆっくり。
同じ画面のまま何分もカリカリと音を立てている。

でも電源を入れると画面が明るくなる。
「まだ生きてるよ」って言うように。

音がする。

死んではいなかった。
点かなくはなかった。

そのパソコンを、
私は電器屋に持って行って引き取ってもらった。

抱きかかえていった。

こうやって抱っこして行くのは最初で最後……
なんだか生き物みたいだ、と。

電源を入れたら点くんだ。
まだ動く。
動かなくなったとしても、
修理したら永遠に生き続けるかもしれない。

引き取りのカウンターには
粉砕処分する旨が書いてあった。
データが残らず安心ということだろう……

データが残らない

何だか、生き物を殺すような気持ちになった


感動と喜びばかりではなかったインターネット
動物の殺処分の現状や屠殺のこと、
テレビで流れない現実も見せてくれるインターネット

悪意ある言葉も飛び交っていた
怖いことや不安もあった

孤独なような……
でも居場所だった
その初めての入り口であるノートパソコン

人には言えないようなことも検索した
ドキドキしながら履歴を消した
私の汚い部分も、
別に誰も知りたくないようなことも
何もかも知っているのは機械たちだけかもしれない


パソコンを処分に出した

パソコンを持って行って、
パソコンを持たずに帰った

少しすっきりした部屋

あの子が動いていたときの写真は撮ってある

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今もまだ、部屋を探せば見つかりそう
「ここに置いていたんだね」って

手触りも覚えてる
でももういないんだよな

最後あたりに、この子を使って行った作業はたしか
イラストデータの移し替え

サービス終了してしまうSNSから、
自分の投稿したイラストを
パソコンでダウンロードしていって
アメブロの方に投稿した

SNSに投稿したイラストの元データは
3DS内から削除していたので
手元に残っていなかったのだ


ノートパソコンを捨てる前、
取り扱い説明書を開いた

「はじめまして」な言葉たちが胸に突き刺さる
新しい道具を手に入れたときのワクワク感、か……

新品だったとき
出会ったとき
私は心から、この子が欲しかったはず

「心の中で生きている」とか
「懐かしい思い出」などと言うにはどうも
殺してしまった感が強すぎる

もっと上手に使う人なら、ずっと使い続けて
未来の博物館あたりで展示されていたかな

この子にはもっと色んな機能があったんだろうな
もっとこの画面に、様々な景色を映せたんだろうな


物に命ってあるんだろうか
きっとあるよね
ガサツな機械オンチの元で使われて幸せだったのか……

この子にとっては、私が操作する世界がすべて

インターネットの世界はもっとずっと広くても
私の概念が届くところまでが、
この子が映し出せる世界だった

私が使うことだけがこの子の一生だった……




物についての思いを語っていると
共感してくれる人がいた

それだけで何か、救われるような気持ちだった

なんでもないことのように流れてゆく日常の中で
時折、捨てた物、なくなった物のことを思い出す

小さい頃遊んだおもちゃ、
小さなコップ
可愛いお菓子の包み紙、スポンジ……


夢の中に、ずっと前に捨てた物が出てきた
「あれがないと……あれがないと……」
私は夢中で探していた




あの子もこの子も写真に撮っておこうか
写真自体が消えるかもしれないデータだけどね

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タブレットたちの静かさと
板っぽさにはビックリだ
タブレットを描こうにも、
四角い板そのもので

ブラウン管テレビやノートパソコンの音が懐かしい

ブラウン管テレビを付けたときの、
超音波のような高周波のような
「キーン」って音……

ノートパソコンのファンが回る音、
カリカリ音




思いを込めて創作でもしよう……

「対物性愛」や「無機物萌え」のタグは付けなかった


今までにたくさんの物を捨てた

3DS、いつまで使えるだろう

グリーンスリーブス聴きたい……


廃墟は美しいなぁ、ある日突然放置されて
それまでお世話してもらっていただろうに
割れたガラス、朽ちてゆく建物
時間の迷子のよう

今ある物も建物も、やがて終わるかもしれない
消える時間、消える肉体と共に私は存在する



ノートパソコン……

いつかまたどこかで、
何らかの形で出会うんだろうか

もう一度あの時代で?
それとも形を変えて別の時代で?

時代って短いね

今買った機械の時代はいつまで続くんだろう

ノートパソコン……捨てたんだから
再会しても喜んでもらえるとは思えないなぁ

けれど何だろう
どこかで幸せでいてほしい、この気持ちは


……

もしかして: 愛してる



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