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どこかの戦争

青年がその弾丸を胸に受ける時
彼は愛を感じたであろうか
その弾は敵の故郷の人々の 愛であふれていた

収集された鉄くずに込められた 愛
ゴム製品に込められた 愛
ベーコンの油に込められた 愛
国の為に戦う愛しい人々へ 向けて込められた
ただ単に 純粋な 愛
それらを使って造られた
愛にあふれた弾丸は
同じように人を愛する青年を貫いた
その愛は戦争という名の殺人行為により
脆く 滅びた
それを愛と呼ぶには わたしたちは
只、ただ 愚かであった

それが戦争
繰り返される 意味のない 憐れな行為
それはおびただしい人々の命を奪い去った
自然の摂理に逆らった 無用な死

只の数字の一部となった 考える脳は
生み出す美しい手は
夢を追った逞しい脚は
愛す人をそっと見つめたその瞳は
名前を失い 夜つゆのように消えいった

なみだと 悲しみと
怒りと 震え

わすれたわたしたちは
つかの間の休息を笑い
いつしか履き違えた勇ましさを胸に
ふたたび命を奪っていくのであろう
あの 愛のように
残酷に

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