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愛みたいなもの

合成香料の安っぽい風にのって
彼女はやってきた
3つだけ数えるから消えないで待っていて
寂しかったあの日 昨日の夢の中の曖昧さで
二度と触れられる事の無い 痛みを知った
想像だけで悲しみは表現できると思っていた
でも本当の悲しみは容赦なく 私を打ちのめす
あなたがいない
あなたは もういない
それがどんなに永遠に感じられるか あなたは知らない
あなたは 私の事さえ知らないのに
あなたがいない
愛みたいなものは 本物じゃなくて
アーティフィシャル
すべての物質が化学変化の合成品なら
あなたの脳みそだって再現可能なの?
私は偽物なんて いらない
出来損ないの あなたでいい
きっとあなたは笑ってこう言うの
脳みそは再現可能だけど 心は造れないんですよ、奥さん
そして うつむいて笑う
笑ったその顔を そのまま焼き菓子にして食べてしまいたい
ねえ 抽出された臨時のその場つなぎのその香りは
本当にあなたのものだった?
あれは違う香りだった
肉体から醸し出されるあなたの体温に乗ったその香りは
確かにあなただけのものだった はず
その日の気温だとか 風の傾き加減だとか
生活の匂いとかが重なり合って
その日だけの特別な香りだった
幻のようなその香りは再現不可能
でもね あなたがいない
いてもいなくても どうしようもないの
きっと これから何年経っても
あなたはいなくて
私もそこにはいないの
それが愛だったって事
きっと誰も知らないけれど
言ってしまうのは簡単
それが 愛みたいなもの
縛られていたい

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