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『紺瑠璃色の月』~朱華の事件簿(1)~

※こちらの文章は、私の実体験をベースに書いた小説です。

実は、普通に事実として、あの時の体験を忘れない為に書こうと思った内容でした。しかし、ストレートに書くとセンシティブな内容の為、何とかならないかな~と思っていたところ、「いっちょ、小説っぽく書くか!」という結論に至りました。

完全なる素人小説のため、お手柔らかにお願い致します。

~この物語は、事実を元に書いたフィクションです。
(2)以降は、状況をみて、有料記事に変更していこうと思います~


■東京の夏は、蝉の声が聞こえない。

「……なーんて、誰が言ったんだよ。」

とある都心の夏。
地元じゃ、この時期は蝉の声が煩い。
緑が少ない東京は、虫がいないんだと思っていた。
そんな中でも、ミンミンと蝉が鳴き、毎日がうるさい。

「これじゃ、田舎と変わらんな。」
そんな独り言をつぶやき、冷凍庫にいれていたアイスを取り出した。
「……あ!朱華(しゅか)!!アイス、食べるの!?私も食べる!!」

……「独り言」じゃなかった。
ルームメイトの天音(あまね)が、あたしの独り言を察して、部屋から出てきた。

「天音、いたんだ?仕事に行っているのかと思った。」
「今日は休みだよ!朱華も出かけているのかと思った!」

あたしたち2人は、イトコ同士でルームシェアをしている。
社会人3年目になるが、この東京という大都会に、のまれそうになりつつも、お互い大きなケンカもなく、比較的に仲良くやっている。

「いや、午後から友達と映画に行く予定だったんだけど、暑くてね。夜にしてもらった。」

雪見だいふくを半分こにしながら、キッチンで2人で話す。
天音はニコニコと嬉しそうに、アイスを頬張る。こういっちゃなんだけど、犬みたいだな。
天音は昔から、天真爛漫で、色々な人に好かれるタイプだった。今も、カフェの社員として働いている中で、アルバイトや、社員からも慕われているようだ。

「そういえばさ!!いつものグループで、今年は海に行こうって!」

“いつものグループ“とは、社会人になって仲良くなった飲み仲間たちだ。
海か~…。沖縄に旅行に行った時以来、海は見てないな。

「へ~!いいね。……今日、一緒に映画行くの柳(やなぎ)だよ。あいつも海行くよね。聞いてみるわ。」

柳は、あたしと天音がよく飲みにいく飲み屋のスタッフの1人。
週1で飲みに行っていたら、いつの間にか仲良くなった。

年も近く、お互い地方出身ということもあり、よく遊びに行く。あたし達がよく飲む仲間内は、いつも柳のお店に集まって飲むのが決まりになっている。

「柳君、久しぶりだね!海で会えるの楽しみだなぁ。」
「いや、多分アイツが運転要員でしょ。」

運転免許はあるが、都心就職になり、ほぼ使うことが無くなったあたし達は、最早ペーパードライバーなのである。そこで、運転をよくしていた柳が運転を買ってでてくれる。
「当日は、食べ専でいいよ。」と言ってくれ、意外と優しいのだ。

(、、、、まぁ、女子ばっかりだからそうなるのもしゃーないか。)

7月の暑い日。
8月の数日の夏休みが、今から楽しみだ。

そう思いながら、食べ終わった雪見だいふくの器を洗って、ごみ箱に捨てた。

■天の声が聞こえた気がした。~天音の思いつき~

「夏はやっぱり海だよ!!!!めんそーーーれ!!!!!」

時は遡り、数日前の出来事。
お店のアイドルタイムに、店長と私が2人っきりでピークの準備をしている中、私が叫んだ。

「天音……お前、暑さでやられてアホになったか?」
ハードな飲食業界で、女性店長となった、このオトコマエな方は、菫(すみれ)さん。

いつもは店長と呼んでいるけれど、2人の時や、プライベートで遊ぶときは、菫さんと呼んでいる。
東京に来て、カフェ業界で働いている中で、長く頑張れているのは、少なくてもこの店長のお陰だと思っている。
(異動とかあったら辞めちゃうかもなぁ。なんて……)

「いや、今、天の声が舞い降りてきたというか!!!今年の夏は、海にいきたいな~と!!!!」
「なんだ。いつもの言い出しっぺか。……休み希望あるなら早めに言えよ。」

そう、いつも突然に、これやりたい!と言い出すのが、私の特技らしく、それに朱華や、柳くんもよく巻き込まれているのだ。

「菫さんも行こうよ!!!」
「アホか!お前が休んだときに、私が休んだら、誰が店回すんだよ!」
「……あ、そうか。」
「私とは、夜、ドライブでも行った時にすればいいだろ。」
地元が東京である菫さんは、郊外に住んでいる。車も実家に置いてあるらしく、たまにドライブと称して、遠出に付き合ってくれる素敵な方だ。

ちょっとタバコ吸ってくると言って裏に行く菫さんを横目に、私は考えた。どうやったら海にいけるだろう?ただ行くだけじゃつまらないしなー。

「そうだ、天音。……これ。」
タバコを吸い途中の菫さんが、思い出したように1枚のカードを渡してきた。

「ショップカード??」
千葉の住所が書かれているお店が記載されているショップカード。
うちの系列店は、千葉にはないけれど。ヘルプに行けっていう指示かな?と思い、菫さんを見る。

「私の知り合いが千葉の海沿いで店をやっている。
目の前が海のレストランらしくて、いいらしいぞ。本当は、別で天音を誘おうかと思っていたんだが、休みも合わせにくいし、せっかくだから行ってきたらどうだ?話はつけといてやるぞ。」

菫さんの話を聞いて、これは、皆を海に誘う口実ができた!!と察した。
そう、菫さんは、私が皆を海に誘う口実をくれたのだ。

「菫さーーーーーん!!!!一生ついてく!!!!!」
「一生はいいわ。せめて定年までで。」

それって、ずっと一緒に働きたいってことじゃん!菫さん、ツンデレ!!

そんなことを思いながら、早速、休み時間に“いつメン”にラインをする。
きっと今年は去年よりも素敵な夏になる。そう思ってラインを打った。


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