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「幸せとは魂の次元で到達するもの」(バート・ヘリンガー著、谷口起代訳『いのちの営み、ありのままに認めて』を読んで)

訳者が述べているように、ここでの<いのち>とは、いわゆる個人としての「自己」のことではない。「自己」の背後にある、「私たちが抗うことのできない大きな力」、「すべての固有の生命の源」、それを<いのち>と呼んでいる。

本書で語られるのは、その<いのち>の営み、つまり「魂の秩序」についてである。それはふだん、常識や道徳といった「社会の秩序」に覆い隠されているが、にもかかわらず、私たちの人生に決定的な影響を及ぼしている。

「社会の秩序」の中では理不尽としか思えない出来事も、「魂の秩序」から見れば、それは起こるべくして起こったものかもしれない。いくら自分が正当だと考えたところで、「問題は、魂がそのように見るだろうかということです」。このような別次元の視点は、自分の生き方を変える力をも与えてくれるだろう。

「私は個人のみに焦点を合わせず、関係性の中に織り込まれている個人を見ます」

と著者であるヘリンガーは言う。しかもその関係性の中には、この世を去った死者も含まれている。彼の視点には、単なるセラピーに留まることのない、「人間存在の本質」への洞察が含まれている。

人生や人間関係に行き詰まりを感じている人、現代社会のあり方に疑問を抱いている人、そして「幸せとは魂の次元で到達するものです」という彼の言葉に関心を持つ人には、特にオススメしたい。

この本を読み終わったとき、おそらく多くの人は、同じ世界の中に、全く新しい景色を発見することになるだろう。私もその一人である。

永久保存版としたい一冊。


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