見出し画像

「仕事中に死んだら困りますやろ?」

僕の親父は70歳を過ぎた今も、某自動車メーカーの販売店で、車の洗車などのアルバイトをしている。会社で若い連中にかまってもらえるのが楽しくて仕方ないらしい。

しかもアルバイトのわりに、社員さんはおろか、店長さんにまで遠慮なく意見を述べまくっているという。

そんな親父の面倒を懲りずに見てくれている会社の方々には、感謝してもしきれない。おそらく介護のつもりでやってくれているのだろう

その店は、洗車の無料サービスがウリで、ひっきりなしにお客さんがやってくるらしい。

ある年末のこと。帰省した僕と、さっそくその会社の話になった。

「まいどー。いつまで仕事やったん?」

「28日までやな。お客さんはいくらでも来るんやけど、もう年末やから、ワシは休むことにしてん」

「そんな忙しい時に、よく休み取れたなぁ」

「会社は出てほしい言いよるんやけどな、『こんなじじいが仕事中に死んだら困りますやろ? ワシが勝手に家で死んでもアンタら関係ないけど、会社で死んでもーたら大変でっせ』ゆーたってな。そしたら『それもそうでんな』ゆーて。それで休むことにしたんや」

「さすがやな……」

「ワシはそういうふうに会社のことまで考えて働いてまんねん」

……健在である。

いつも応援ありがとうございます。いただいたサポートは、書籍の購入費に充てさせていただきます!!