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「履いてませんよ!」

ある大晦日。

親父が「そやそや、絵馬を返しとかんとあかんな」と言って、棚に飾られている絵馬を取ってきた。

「ちなみに願い事は何て書いてんの?」と絵馬の裏面を見せてもらうと、これ以上ないお約束通りの願いが記入されていた。

「宝くじが当たりますように」

この点うちの家族は絶対に期待を裏切らない。

年も明けて、元日の夜。

僕が風呂から上がってパンツ一丁でリビングに現れると、「あんた、お腹えらいことになってるで!」とオカンから的確な指摘をされた。もうこの件については一切弁解の余地がない。よって開き直るしかない。僕は一芸を披露することにした。

「おかげで『とにかく元気な安村』のネタできるようになったで。安心してください。……履いてますよ!」

オカンと弟から「ほんまにできてるなー!」と賞賛の声があがった。

それを見た親父が何を思ったか、「ちゃうちゃう。ワシがやったるわ」と言って立ち上がってきたので、僕は場所をゆずった。しかし親父は普通にパジャマを着たまま。その格好で一体なにする気なんや? と思って見ていると、さっそくネタを開始した。

「安心してください」

言うやいなや、親父はパジャマのズボンを一気に下ろした。

「履いてませんよ!」

本当に履いていなかった。

誰も見たくない「イ○モツ」が、ズボンを下ろした勢いのままプラプラと上下に揺れていた。

「何でほんまに履いてないねん!」

ウチの杉原家が、杉原千畝の子孫ではないことが改めて明らかになった瞬間だった。

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