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2024.1 / いじめの傍観者は中立ではないし、Xの匿名ユーザーも中立ではない

2024年1月は痛ましい災害や事故が多い始まりとなりました。
今も不安や苦しみの中にいる方が、一日でも早く平穏な日々を迎えられることをお祈りしております。

そんな混乱の中で際立ったのは、旧Twitter、現Xでの言論でした。
自分自身、二つのXのアカウントを運用しているのですが、今回のような緊急時には特に、同じアプリなのかと思うくらいXのタイムライン上の様子が違っていました。


noteと連動して運用しているManamiアカウント。(@manamiedu)
アメリカ大学院の情報収集、そしてTHE COACHでのコーチングの学びを発信するために2021年5月にアカウント設立。
自分のコーチングのクライアント募集や、イベントの告知をメインに運用。
フォローするアカウントもコーチング・教育・留学に関係する方のみ。
オススメのタブにはコーチング・教育・留学情報が主に表示されますが、この1月はインプレッション数が多い投稿が表示されることも増えた印象。
フォローしている方でも、この年始はXをお休みした方が目立ちました。


地図子ブログと連動している地図子アカウント。(@mapchizuko)
元々あまりTwitterをやりたくなかったのですが、Instagramだけでは地図子ブログの宣伝に限界があり、2019年2月にアカウント設立。
毎週更新しているブログの宣伝、個展やイベントがあるときの宣伝、暗渠仲間がXに多いため情報交換をメインに運用。
フォローするアカウントも、街歩きや地形好きの方のみ。
オススメタブとフォロータブの様子があまり変わらず、どちらにもフォローしている方が行った場所の情報や、地図上の情報が表示されます。
おそらくフォローしている方も、街歩きや地形好きの方のみフォローしているので、他の界隈の情報はほぼ入ってきません。
プロアマ問わず平時から場所や地図について発信している方の情報だけ入ってくるので、災害のときに最強なアカウント。


今回二つのアカウントを運用することでよく見えたのが、どんな目的を持ってXを運用するかで、タイムラインに流れてくる情報が別アプリかのように変わってくるということです。
自分がどういう目的を持って誰をフォローするか、どういう言葉をポストするかで、タイムラインに流れてくる情報が変わってくるということ。
また、今のXの仕様では、フォロータブではなく、オススメタブがデフォルトとして表示されてしまいます。
そのため、オススメタブに現れる投稿にいいね、リポスト、返信をするだけでなく、そこに現れる投稿を閲覧するだけでも、Xがその傾向に沿ってさらに偏った投稿を勧めてくるような設計になっています。


そういうわけで自分は普段どちらのアカウントも人格を持った形で、同じく人格を持ったアカウントを目的に合わせてフォローして、双方向のやり取りを行っているのですが、年末年始に驚いたのが、自分の周りでXをやっていないと思っていた人も結構Xのアカウントを運用しているということです。
匿名アカウントで。

匿名アカウントにしている理由は、人それぞれだと思います。
公式アカウントから最新の情報を得るために作ったアカウントだから匿名にしているとか、趣味の対象を追いかけるために作ったアカウントだから自分個人とは紐づけたくないとか、ネットに個人情報を晒すことが心配だから自分の考えは発信したくないとか。
学校教育の中でも、色々な危険が伴うから自分の個人情報を載せるような形でインターネットを使うなということは学ぶのではないでしょうか。


自分のプライバシーを守るために運用している匿名アカウント。
でも実は匿名アカウントを運用することにはとても高い倫理観が求められるということは、意外と学ぶ機会がないということに気がつきました。


今、Xで匿名アカウントを作ってみたと仮定してみましょう。
匿名アカウントは最初は誰もフォローしていないし、誰からもフォローされていません。
名前やIDをランダムにしておけば、ぱっと見誰がどういう目的で運用しているのかは他者には分からない状態です。

誰もフォローしていないため、このときタイムラインにデフォルトで表示されるのは、Xが「オススメ」してくる投稿、つまりはインプレッション数が高い投稿です。
単純に面白くて役に立つ投稿もあれば、過激な投稿もあります。
あなたの目に留まらない投稿もあれば、留まる投稿もあります。
あなたが一度もいいね、リポスト、返信をしなかったとしても、「この投稿はXXさんの目に留まった」というだけで、オススメのループが強化されていくのです。

その中で、あなたはオススメタブに表示される投稿を見続けます。
表示される投稿はあなたの考えによって偏ってくるので、いつか「これは本当に自分の考えそのままだ!」と思うような投稿が表示されます。
自分が普段考えていることを代弁していて感動して、あなたは迷います。
フォローしている人もいないし、少しくらいいいねを押しても、素性はバレないだろうと。
あなたは静かに最初のいいねを押しました。
「この投稿はXXさんにいいねを押された」という事実で、オススメのループはさらに強化されます。

あなたは少しずついいねを押すようになります。
自分と似たような考えを持っている人が、思っているよりもっといることに気づきました。
自分と考えていることが似ている人をそのまま自分の言葉として使おう。
こうしてあなたは他者の考えをリポストします。
「この投稿はXXさんがリポストした」という事実で、オススメのループはさらに強化されます。

他の人の投稿は自分と似ている、でもなにか少し違和感がある。
いつも自分の似たような考えを書いている人が、今日は自分が思っていることと全く違うことを書いている。
そう思ったあなたは、ある日ついに、そのインフルエンサーに対して返信を飛ばし始めます。
「あなたの言っていること、違うんじゃないの?」と。

あなたの返信は、相手から無視されるかもしれません。
一方で、似たようなことを思っている人から猛烈にいいねやリポストをもらうこともあるでしょう。
周りの人からいいねやリポストをもらって、あなたの発言は増えます。
こうして匿名アカウントの人格が出来上がっていきます。


ここに匿名アカウントの罠があります。
あなたがこのアカウントを実名で運用していたとしたら、あなたはその言葉を相手にかけていたでしょうか?
さらにいうと、道端でX上の匿名の人・インフルエンサー・政治家・芸能人に会ったとしたら、まったく同じ言葉をかけていたでしょうか?
もしあなたがX上でかけている言葉を直接相手に伝えたときに、あなた自身が不利益を被るような言葉だった場合、X上で伝えたとして本質的にはあなたの役に立つことはあるのでしょうか?


最初は情報収集やプライバシー保護のために軽い気持ちで匿名アカウントを開設したのに、最終的にはXの使い方が全然変わってしまうことが簡単にありえます。
「自分はこんなふうになるわけない!」と思っていたとしても、Xをプログラミングしている人たちは、自分たちのプロダクトを広めようと頭をフル回転している人たちです。
その知能に立ち向かって自分の頭でXを活用するためには、Xのアカウント運用に目的を持つ投稿するときは面と向かって同じことを言えるのか考える、など自分なりのポリシーを持つ必要があるのではないでしょうか。
その仕組みを使っている以上、読んでいるだけだからその仕組みに対して中立だ、ただ情報をテイクしているだけだということはありえないのです。


アメリカに留学していたときも、海外でXを使っている人は少なく、FacebookやLinkedInなど実名のSNSで自分の考えを発信していました。
周りの同級生も、他社のサービスから不利益を被ったときや、政治的な主張をするときも、誹謗中傷やバッシングという形ではなく、実名を使って周りを巻き込み、正当なクレームという形で自分の意見を伝えていました。
自分はどんな社会をつくっていきたいか、その一歩として自分はどういうポリシーでXやその他SNSを運用するのかしないのか、学び合いながら判断していける世の中になるといいなと思います。

自分が発した言葉は、自分に巡り巡ってくるような気がします。
自分も、みなさんも、幸せな言葉に包まれますように。


インターネット上だけでなく、人と人でお互い目を見ながら、自分と社会にとって何が必要なのか話すことができる機会も増えればいいなと思っています。
1/27(土)と1/28(日)に「少子化」をテーマに多様な人と考えて話す、オンラインイベントTAKIBIを開催します。
特に1/27(土)にもう少し参加者が増えるといいなと思っているので、興味がある方はぜひご参加ください。



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