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プレミアリーグ第17節 マンチェスター・ユナイテッドVS.ノッティンガム・フォレスト 書きたいことを書く

 両チームのスタメン。

①スタメン[Sofascoreより]

Ⅰ.フォレストの守備ブロックとそれに対するユナイテッドのボール保持

1⃣フォレストの4-3-3ミドルブロック

②フォレストの4-3-3守備ブロック

 フォレストのボール非保持時の配置は4-3-3。押し込まれ具合によって4-1-4-1のようにもなる。1トップのリンガードは中盤のパスコースを抑えながら、相手CBに制限を行うタスク。だが、ユナイテッドの選手のポジショニングに苦悩し、結果的に相手2CBに有効なプレッシャーを掛けることはほとんどできていなかった。両WGも1トップのリンガードとの間をなるべく広げすぎない立ち位置を取り、相手の攻撃をサイドor中央に誘導(ここはアドリブ気味)。相手CBからボールがライン間中央に入れば、3センターが対応しボールを奪うorサイドに誘導、サイドに誘導すれば同サイドに選手が密集してそこでボールを奪い取る狙いである。また、②の赤点線で示したように特徴として中央に入ってくる相手選手を捕まえるという(ゾーンではなく)「人」への守備の意識が高い。
 ユナイテッドの選手のポジショニングの妙も影響しているだろうが、②の図や上記の説明でもわかるように、守備の判断におけるアドリブの要素も大きいように見えた。基本的な設定は悪くないと思うけれど。

2⃣ユナイテッドのボール保持攻撃での攻略[中央] 

③中央での5対4による数的優位の形成

 ユナイテッドのボール保持攻撃での狙いは主に2つ。まずは、中央での数的優位の創出。フォレストの守備はユナイテッドの2CBが比較的自由にボールを持てるかたち。ボールの起点となる2CBが顔を上げられる長めの「時間」の中で、相手守備ブロックの間にフリーを作りだせばよいことになる。ユナイテッドはアンカー+2IH+(下りる動きを行う)CFの定番の4枚に加えて、両SB&WGの4枚のうちの誰かが状況に応じて中央に入り込むことで5枚以上の選手がフォレストの守備ブロック内で中間ポジションを取ることで、相手のマークの乱れを突く狙いを持っていた。③では表せていない右サイドの攻めでも、普段は試合を通じてサイドに張っていることが多いアントニーもこの日は頻繁に中に入ってワン=ビサカに幅を取らせたり、その逆のパターンもあったりした。
 余談になるが、ワン=ビサカはまだ「中央で仕事をできる選手」ではないが、この試合の彼は頻繁に首を振って相手の選手と味方の選手を立ち位置をしっかりと確認したうえでポジショニングをとっており、有効なオンボールプレーはできていなくても「有効な空間に立つ」重要性を理解して動いているようにみえた。
 さて、ユナイテッドのボール保持攻撃のもう1つの狙いは縦・横の頻繁なポジションチェンジである。1⃣でフォレストの守備ブロック(特に3枚の中盤)は「人」への意識が強い、つまりマンマーク気味であると言及した。マンマーク守備への有効な策として、マーカーからどこまでも離れるという手段がある。ユナイテッドの選手はまさにそれを実践していた。この試合ではマルシャルや(テンハグ体制では下りる動きを減らしていた)ブルーノが2CBやアンカーの脇まで下りてきて、その空いたスペースに両SBやカゼミロなど後方の選手が飛び出していくかたちが何度も見られた。フォレストの守備陣はその縦のポジションチェンジに加え、上記した両WG&SBの入れ替わり立ち代わりで中央に入る動き(横のポジションチェンジ)に手を焼き、高めに設定されていたDFラインをずるずると下げて自陣ゴール前で対応せざる得なくなっていた。結果として、1トップのリンガードは孤立し、カウンターの起点も失っていた(31分のロングカウンターからの右IHイェーツのミドルシュートがこの試合の初シュート)。

3⃣ユナイテッドのボール保持攻撃[サイド]

 押し込んでいたといっても、ユナイテッドの前半のxG(ゴール期待値)は0.62。つまり、無得点でHTを迎える可能性も十分にあった。その中で奪ったのはCKによる先制点と自陣からのロングカウンターでの2点目。一見再三のボール保持攻撃に意味がないようにも見えるが、1点目のCKを奪ったプレーにもユナイテッドのボール保持攻撃の狙いが表れているので紹介したい。

④18:07~ ユナイテッドの右サイド攻略1
⑤18:10~ ユナイテッドの右サイド攻略2
⑥18:13~ ユナイテッドの右サイド攻略3

 ④~⑥がユナイテッドがヴァランを起点とした右サイドの崩しから、得点につながるCKを奪ったシーンの局面である。

 サイドチェンジでボールをもらったワン=ビサカは出しどころがなく、ヴァランにボールを下げる。相手左WGアウォニイがワン=ビサカへのパスコースを切りながらヴァランに制限を掛けてきたので、中央のカゼミロを経由してもう一度大外のワン=ビサカへ。

 ワン=ビサカがボールを受けると同時に、内側にポジショニングしていたアントニーはサイドに流れる動き。ワン=ビサカにプレッシャーを掛ける相手左SBロディの背後のスペースを狙うアントニーの動きで生まれた相手FWとMFの間のスペースにカゼミロが再びポジショニングし、縦のパスコースをロディに塞がれたワン=ビサカからボールを引き取る。カゼミロはそのままワンタッチでサイドに流れたアントニーにボールを供給。

 アントニーが前を向いたタイミングで、今度はパスを出したカゼミロがサイドに流れる動き。アントニーをマークする相手左CBボリの背後を狙う。そのカゼミロを目掛けたパスはボリにディフレクションして、ボールに追いつきそうだったカゼミロはCKを選択。ちなみに、⑤でカゼミロにパスを出したワン=ビサカもアントニーとカゼミロの動き出しに合わせて中央にポジショニングを取り直しており、(④では大外でボールを持つワン=ビサカに対してできていた三角形を)今度は大外でボールを持ったアントニーに対して三角形を再構築している。

 ここで獲得したCKからのラッシュフォードの技あり弾。バーンリー戦でも見せていたセットプレーでの手ほどきを結実させたともいえそう。
 何はともあれ、相手のゴール期待値を0.08に抑え、ボール保持率69%2-0で折り返した前半のユナイテッド。「ボール保持」に観点を絞ると、今シーズンのベストに近いパフォーマンスだった。特に、「中央で数的優位を創出」→「相手が(WGも中央に絞らせて)中央封鎖」→「スライドが遅れた相手のサイドをサイドに流れる動きを軸に攻略」という一連の流れは圧巻であった。

Ⅱ.さいごに

 今回はこんなもんで。サイドに流れる動きの連鎖による崩しはアヤックスの王道パターンだったので、テンハグイズムが着実に浸透していることを示した一戦だったと思います。何より見ていて楽しかったです( ´∀` )。
 あとリンガードとウキウキでユニフォーム交換するラッシュが可愛かったです笑。
 今夜のロペテギウルヴスの一戦も、両者の掛け合い含めて楽しみですね!!では。

タイトル画像の出典
https://www.sofascore.com/manchester-united-nottingham-forest/osK

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