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箱根山へ行くはずが

早稲田に箱根山という山があって、30秒で登れると聞いたので、去年の夏に一人で行ったことがある。でもその箱根山よりも、向かう途中の神社の方が気になって、そちらに方向転換した。

屋台の灯りが良い気配で、これは懐かしい写真になりそうだと思って撮影してみた。これを撮ったあと、上から人が降りてきて、すごくびっくりした。向こうもびっくりしたと思う。

屋台を見てると、『三丁目の夕日選集 夏編』って感じだなあ、って思っている。親が西岸良平さんの漫画が好きで、鎌倉物語も押入れにどっさりあった。「あの頃ってこういう家の子、いたよねぇ」と母はよく話す。

子供の頃は、近所でお祭りがあると友人と一緒に行って、屋台で買ったりした。一度、私以外の友人が全員浴衣を着ていたことがあって、それがなぜかすごく悔しくて、次の年から絶対に浴衣を着た。屋台は落書きせんべいが好きで、いまでもタイミングが合えば、子供に混じって買っている。一回、父親とお祭りに行ったときは、りんご飴を買ってもらったけれど、手と顔がベタベタになり、食べ方が下手すぎる、と突っ込まれたことを今でも覚えている。手水舍でお参りもしていないのに、べたべたになった手と顔を、清めてしまった。

無礼なことをしてしまったな、と思いつつも、心のなかで「許してください」と唱えながら、ジャブジャブ手を洗った。都合のいい解釈だが、神様に大笑いされてるに違いない。笑ってくれたなら、いいだろう。うんうん、寛大な人だ。

神社の優しい灯りに包まれて満足し、箱根山を背にして帰ったのであった。別の日に行ったけどな。

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