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ある街の夜の風景の記録

この街のちょっとした商店街は、バーや食堂が軒を連ねる。そして、とびとびに美容室や○○商事が並ぶので、20時現在のこの商店街は、シャッター、店の灯り、シャッター、店の灯り…といった繰り返しが無限に続く。

平日の夜に一人でイタリアンレストラン。賑わう店内、カウンターの席に着く、女ひとり。アルコールは避けた。愛想のいい夫婦が好きで最近よく通っている。

最近の趣味は、家族とのLINE。注文してから社会情勢について、赤の他人には言えないドスの効いた辛辣な会話を楽しむ。インターネットだろうがテーブルを囲ったリビングだろうが、中澤家のそれは変わらない。なんなら、口調の分からないLINEでのやりとりの方が、より酷である。

ピザを黙々と食べる。コカコーラ、チーズたっぷりのピザ、それにタバスコを少々。お腹いっぱいなのに、手も口も止まらない。16時ごろにお昼を食べたのに、20時半にはこの有様。エネルギーの消耗が激しいのだ。

私の後ろの席には、かもめ食堂に出てくるような女性4人組。アハハケラケラと楽しそう。隣は60代の男女、入り口すぐは30代の男女、奥のテーブル席に20代から30代の仕事終わりの男性4人。どうして、人の配置は図ったようにバランスが良いのだろう。そしてカウンターに女ひとり、私が脚本を書くなら、この女ひとりはワケありの設定にする。わけない、腹が減っただけだが。

小さい頃夢見た世界に、私はちゃんと存在している。オレンジ色の店内、グツグツ煮える鍋の湯気、人々の熱気でさらに温まる空間。

私はぐんぐん満たされて行く。今年の冬はいくら寒くても、きっと暖かく過ごせることを予感した。帰ったらもうひと頑張り。

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