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夜の考えごと、朝の私

最近部屋がやたらと寒く、顔を出していると顔も寒いので、顔まで布団を被って丸まって寝ている。さながら飼われている猫のようであるが、誰にも飼われていない時点で、私はもしかしたら、猫よりも自由を手にしている。そこから、夜の考えごとが始まる。

こんな風に寝ていると、海の底に沈んでいく気分になる。静かで暗く、深い海の底に、ゆっくりゆっくり落ちていく感じがするのだ。途中、見たこともない生き物とすれ違いながら、一人静かに沈んでいく。怖い気もするが、不思議な安心感もあり、心の落ち着きを取り戻していく。

思えば一人でいるときは、深く自分に向き合うことができるが、誰かといるとき、ここまで深い仲になった人が自分以外にあるだろうか。友人に、「誰かと仲良くしたいときは自己開示が大切だ」と、能弁垂れたことがあるが、私はほとんどの人に対して自分の心を開いたことがない。別に他人様に嘘をついて接しているわけではないが、家族といても一人になりたがり、友人と居ても早く帰りたがり、彼と抱き合っていた時もどこか上の空だった。けれどこれは私だけではなく、結局みんなそうなのかもしれない。

そんな風に考えながら、眠りの中に入り込むと、過去出会ってきた今はもう会っていない人たちに偶然会う。思った通りに話が進むときもあれば、思ってもみないことを突然言われたりする。こんな時、夢と現実なんてほとんど変わらないんだ、と分かってしまう。だんだん話が複雑になってくると、もう嫌だな、面倒くさい、と感じて、パッと目が覚める。

昨日の続きを生きている私がいるけど、人生をリセットしている気にもなる。ああ、良かった、と安心する。そして、昨日の夜とは別人の私がいる。こんな調子で日々が続いていく。夜から朝、夜から朝、これがずっと続いていく。当たり前みたいに、毎日新しい人生を迎えている。

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